(21 / 21) 頂上戦争 (21)

葬儀はシャンクスが取りまとめてくれた。
ミコトはシャンクスの船から白ひげの海賊達に気付かれないよう白ひげや白ひげの海賊達、コテツ、そしてエースを見送ることにした。
ミコトはコテツが眠っている棺を穴に埋める様子を遠目で見つめながら彼の―――彼女の思い出に浸りながら窓に額を寄せた。


(コテツ……あなたにとって、わたくしはいい主人だったかしら…)


目を瞑れば"彼"や"彼女"の姿が浮かぶ。
それが堪らなく懐かしくて、愛おしくて、切なくて…ミコトは涙がぽつりと零れた。
コテツは、今では元海兵の現白ひげ海賊団0番隊隊長だが、実は―――女である。
それも人ではなく、"超人族"というコテツが死にすでに絶滅した種族だった。
超人族はその名の通り超人的な力や治癒能力を持っている他は見た目は普通の人間である。
だが5歳になると親元から離れ一人で生きていき、そして子を作ればその子も5歳には親離れをさせる…そういう風習があった。
そのせいで希少となり、すでに絶滅してしまった種族ではあったが、コテツとミコトが出会ったのは―――まだコテツが本来の姿…女である時だった。
コテツの本当の名前は『ラッツェーリエ』。
元奴隷である。
捕まって奴隷として海賊に飼われていた時に出会い、ミコトは主人となった。
超人族は5歳で親元を離れる風習のほかに、生涯の主を決め、その主のために死ぬのが一族の最高の死であり生き方だという風習や考えがあった。
ラッツェーリエはミコトを主と認め、ミコトもその強さを認めてミコトの能力で男へと性別を替えてまず海兵の問題児として演じてもらった。
その後性別を変えたことでコテツと名乗るラッツェーリエは海軍を辞め、後に白ひげ海賊団に入る、というのがミコトの計画である。
しかしコテツは男として過ごし問題児として演じてきたせいかそのまま性格が定着してしまいミコトに逆らうようになった。
ミコトは最初こそフォローをしていたが、ついには大暴れの末同僚殺しにインペルダウンへと送られることになる。
ミコトも計画を変更して一先ずインペルダウンに収監させ頭を冷やさせ後々また別人として白ひげに居れようと考えていた。
しかしコテツはインペルダウンに送られる船を沈めて脱出した。
そのあとはコテツとの連絡も途絶え、白ひげの船で再会するまでミコトはずっとコテツを探していた。
コテツはどちらかと言えば白ひげ達と一緒にいることが肌に合っていたらしく、ミコトは正直裏切られた感が強かった。
そして…コテツの最期の姿。
ミコトはコテツに対し罪悪感に苛まれた。
羽織っていたシャンクスの上着をギュッと握りミコトは切なさで潰れそうになるのを必死に抑えるようぎゅっとまつ毛が震えるほど目を瞑る。
息を吐き出すことで落ち着かせ、ミコトは瞑っていた瞼を開け窓から葬式を見守っていた。
白ひげ海賊団の海賊たちが並び白ひげやエース、死んでいった仲間達を想い泣き、見送っていた。
周りは綺麗な花畑が広がっており、ここなら穏やかに過ごせるだろうとミコトは小さいながらも笑みを浮かべた。


(エース…コテツ……いつか…あなた達に会いに行ってもいいかしら……)


きっと弟や元部下に聞けば『当然だ』と答えてくれるかもしれない。
それは自分の都合のいい返事かもしれない。
でも、いつかは海兵としてのミコトではなく、ただ一人の姉として主人として…一人の人間として彼らに会いに行ける日があればいいと思った。
今、ミコトはしがらみが多すぎて会いにいけないが…例えいつか…そう、例えおばあさんになってしまったとしても彼らに会いに行ける日がくればいいと願う。


「ミコト」


思いに耽っていると葬式を終えて戻ってきたシャンクスが帰って来ておりその後ろには副船長のベンがいた。
ミコトはシャンクスに声をかけられゆっくりと窓から離れる。


「見送りは済んだか?」

「ええ」


マルコもシャンクスもミコトが葬式に参加してもいいと言ってくれた。
しかし他の海賊達の気持ちを考えれば自分が行けば反感を買うと遠慮したのだ。
ならば、とマルコが窓から見送ることを提案してくれた。
窓を見ていたミコトの頷きを見て、シャンクスは『そうか』と零し控えていたベンに船を出すよう指示を出し、ベンは頷きチラリとミコトを心配そうな目で見つめた後部下たちに指示を出すために姿を消した。
ベンを見送っていると不意にシャンクスがミコトの髪に手を伸ばし、ミコトはシャンクスの手に顔を上げてシャンクスを見上げ首をかしげる。


「髪、短くなっちまったな」

「…そうですね」

「伸ばすのか?」

「いえ…伸ばしません……コテツが寂しがりますもの」


髪に触れたのはミコトがバッサリ髪を切ったからだった。
腰まであった綺麗な髪が肩までに短く切られてしまい、シャンクスは勿体ないと零す。
シャンクスもミコトの髪が好きだった。
勿論髪だけではないが、風に揺れる絹のようなあの髪がもう見られないと思うと少し残念そうにする。
そんなシャンクスにミコトはくすりと笑い、シャンクスの胸元にそっと寄り添った。
甘えるようにすり寄るミコトにシャンクスは片腕しかないその腕をミコトの腰に回し、引き寄せる。
シャンクスの胸に耳を当てるように頬を当て、トクントクンというシャンクスの心臓の音に目を瞑る。


ミコトはこの日から涙を流すのをやめた。


【完】

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