(1 / 2) 尾形IF (尾形IF 1)

〜 もしも最終回後に尾形と夫婦になったら 〜

※短いです。
※超短いです。
※書きたいところだけ。
※原作終了後の話で全て丸く収まっています。
※ある死亡キャラはご存命です。
※鯉登には触れません。
※息子さん成長しています。
※ほぼ尾形と白石と息子さんのみです。

※息子さんの名前が出ています。
※なので本編を見た後に読まれることをお勧めします。





ある北海道にあるアイヌのコタンに珍しい一家が住んでいた。
その一家にある男が訪ね、その男は目の前の人物を見て顔を引きつらせていた。


「あっらー…尾形ちゃん、今日はまた…なんというか…男前が更に男前に上がってるねぇ……なにしたの?」

「…………」


男、白石は知り合いのいるコタンに遊びに来ていた。
だっぷん…脱獄王と呼ばれている彼はあの騒動から捕まっては逃げ出すを繰り返しており、その手腕は衰えていない。
白石の言葉に尾形と呼ばれた人物はムスッとした顔で一睨みした。
元々顔が整っている分恐ろしさはあるが、白石は彼に殺意がないのを知っているので怖くもない。
それに白石にとって彼の顔を更に男前にした相手の方が尾形よりも恐ろしいのだ。
そんな尾形の顔には多くの傷があった。
目元には青痰があり、右頬は腫れ、口が切れたのか絆創膏が張られていた。
男前が更に男前となって白石を出迎えてくれたのだが…白石は『来るタイミングまずったなぁ』と思う。
しかしそう思いつつも囲炉裏を挟んでせっせと手を動かしている尾形の向かいに腰を降ろした。
白石は自分を空気と扱い手を動かす尾形の手元を見る。
その手には洗濯物が握られており、先ほどから尾形は無言で洗濯物を畳んでいる。
その光景はもう慣れたもので、白石は顎を撫でニヤニヤとにやけながら尾形を見た。
勿論その目線は尾形も気づいており、だからこそ不機嫌オーラで白石の肌を刺しまくっていた。


「…なんだ、さっきから」


あまりにも見つめすぎたのか、我慢できなくなった尾形が最後の洗濯物を畳み終わった後ポツリと呟く。
不機嫌で低いその声は以前の白石なら怯えていたが、今の尾形では怯えるどころかニヤけ顔が強まるばかりである。


「いやぁ?なにもぉ?あの尾形ちゃんが随分と丸くなったんだなぁって思ってただけさ」


白石の言葉に尾形はギロリと睨み『あ"ぁ"?』と凄む。
流石にそれは恐ろしかったが、ここで側に置いている得意な銃に触れないところから白石はその姿を見て『本当丸くなったなぁ』としみじみ思う。
あの旅での尾形に今の尾形を見せてやりたいと心底思った。


「そう言えば杉元は?」


チセ(家)に尾形しかいない事に疑問に思った白石はそう尋ねると、尾形は低い声をそのままに教えてくれた。


「雪乃はアシリパとチビ共を連れて母親のところだ…あいつは谷垣とチカパシと狩りに行ってる」


ぶすっとしながら答える尾形に白石は苦笑いを浮かべる。
尾形と雪乃は結婚し、もう10年経っている。
白石ももう10年かと思い自覚はなかったが、騒動時、結婚前に生まれた二人の1歳の子供がもう11歳になっているのでそれくらいの月日が経っているのだろう。
あれから騒動は終わった。
あれほど死をも覚悟した事もあったというのに呆気ない終わり方だった。
敵だった者や仲間だった者達はそれぞれ各地に散らばってしまった。
白石のようにこうして会う者もいれば、あれから音沙汰ない者もいる。
白石は相変わらず捕まっては脱獄を繰り返し、キロランケは妻子の元に帰り時々会いに行ったり来たりし、土方や永倉達は姿を暗ました。
牛山と家永も別れて以来連絡していないが、白石曰く捕まってはいないのだとか。
谷垣もインカラマッと結婚し、チカパシを引き取りこのコタンで息子や娘達と共に暮らしている。
鶴見サイドも事が事だけに罰せられたが、流石情報将校と言うべきか隠しタネをいくつも持っており軽い罰だけで済んだらしい。
その後尾形は谷垣同様、女に戻った雪乃と結婚し、軍を辞めアシリパのいるコタンで妻と3人の子と共に平和に暮らしている。
あの頃の尾形と今の尾形と比べると本当、彼は丸くなったと言えよう。


「あれ…白石ニシパ、来てたんだ」


するとチセに少年が入って来た。
この少年こそ尾形と水城の最初の子供である。
生まれは違えど今や立派なアイヌの少年だ。
少年は白石の姿に気付き親しそうに声をかけ『こんにちは』と挨拶をする。
それに白石は手を上げて返した。


「よう!坊!また大きくなったなぁ…狩りに行ってたんだよな、何を獲ってきたんだ?」

「ラスパニ(ノリウツギ)を取りに行くついでに夕飯にって思って…その辺飛んでた鳥二羽」


そう言って静秋と呼ばれた少年は二羽の鳥を持ち上げ白石に見せる。
簡単に言うが飛んでいる鳥を銃で撃つのは難しい。
静秋は瞳以外父親の血を濃く受け継いでいるのか、銃の腕前はピカイチである。
銃を壁に掛け静秋は白石に『どうせ泊っていくでしょ』と鳥の羽を毟るよう頼み、空いている席に座る。


「谷垣とチカパシはどうした」

「谷垣ニシパ達は解体したのを町に売ってくるって…あとで取り分を渡しに来るってさ」


静秋は、額から掛けている荷物から木の屑を取り出し何やら作業をする。
羽を毟りながら白石は少年の作業を見ていると、どうやら湿布を作っていたようだった。
その出来たばかりの湿布を尾形に『はい』と渡し、尾形は腫れた部分に貼る。
どうやら尾形の為に取りに行ってくれたようである。


「アチャ、出来た?」


鳥を毟るのを手伝った後、捌く前に静秋は父にそう問う。
白石はその問いの意味を知らないが、尾形は息子の問いに『ん』とだけ呟き傍に置いていたソレを差し出す。
それは女用小刀、メノコマキリだった。
その小刀を手に取り静秋はくまなく見る。
その目はさながら鑑定人のようであった。
尾形がメノコマキリを見定めているのを無言でじっと見つめており、それに釣られて白石もゴクリと喉を鳴らし緊張した。
静秋は隅から隅までメノコマキリを見た後、『うーん』と唸る。
それに白石は『え?駄目なの?いいの??どっちなの???』とドキドキハラハラしていたが…


「まあ、いいんじゃない?」


ギリギリだがOKサインが出た。
何だかよく分からないが、白石は『良かったね、尾形ちゃん』と涙を拭う。
尾形もホッとしたのか表情を変わらないものの息子から小刀を返してもらい安堵の息を吐く。


「で、それはなに?」

「メノコマキリ…母さん(ハポ)のご機嫌取りで作らせたんだ」


何だかよく分からないが感動した白石だったが、よく分からないからこそ静秋に問う。
だが静秋の言葉に『あ〜』と納得した声を出してしまった。


「しかしまあ、尾形ちゃんも杉元とよく喧嘩できるよなぁ…口より手が出るっつーのに…で?今回は何をして怒らせたんだ?」

「…なんで俺がしかけたみたいに言ってんだ」

「大抵ご機嫌取りする時って尾形ちゃんが9分9厘悪いんじゃん??だから黙って殴られてるんじゃん???」

「……今あいつは腹に子供がいるんだ…殴れるわけねえだろうが」

「え…ええぇ…また子供作っちゃったの…これで4人目だよ??」

「違う」

「へ?」


白石もよく来るとは言うがそう頻繁には来ない。
どちらかと言えばキロランケの方がよく雪乃達と会っているだろう。
なんだか来るたびに子供をこさえているような気がした。
だが、白石の言葉に尾形がポツリと呟き、白石は『何が違うの?』と首を傾げる。
そんな白石に尾形は髪をかき上げ、懐かしのドヤ顔を見せた。


「5人目だ…双子らしい」


その言葉に白石は思わず『ふぇぇ』と声を零した。


「ええぇ…なんなの…尾形ちゃん、獣なの??万年発情期のケダモノなの???100発100中なの????」

「100発100中なら今頃子供100人以上じゃねえか…流石にそこまでは作る気ないぞ」

「それただの言葉の綾ぁ!」


『大体人間なんざ万年発情期の生き物だろうが』と凄む尾形に白石は否定せず、『うん、だけど子供の前でそれはやめよう?』と宥めた。
チラリと息子を見れば聞こえてませんよと装い慣れた手つきで鳥をさばいていた。
この距離で普通の音量で話しているのだから聞こえないはずはない。
見た目はともかく、中身は尾形にも雪乃にも似ていない出来た子供だと白石は思う。


「成程…それで母親のとこにプチ家出中って事か…」


母親である静子は騒動の後、雪乃と再会を果たした。
変わり果てた姿の娘と息子のした事に最初こそショックを受けたようだが、今や以前のように仲睦まじい親子関係に戻っている。
娘がアイヌとして生きていく事を決めた時、静子も娘と共に暮らす事を決めたが、これまで川畑家を守って来たせいか周りが許してくれず、結局周りは妥協して北海道に住まいを移す事を許可した。
だから静子は九州ではなくここ北海道、それも雪乃が住むコタンの一番近い町に屋敷を建て住んでいる。
躊躇なく屋敷を建てたところはやはり母も令嬢なのだと雪乃も苦笑いを浮かべた。
その屋敷に雪乃は静秋以外の子供達を連れて家出した…ということだろう。


「それもあるけど、もうすぐ出産だし暫くは顔出せないからって妹達連れて出て行ったんだ」

「いやもうすぐ出産だからこそ大人しくしておこうぜ?尾形ちゃんもなんで止めなかったの、旦那さんでしょ…」

「止めた結果がアチャです」

「ああ…なるほど…」


前線から身を引いた雪乃だが、まだ回復力は健全で出産後すぐに動けるが流石に子供も同じ回復力があるわけもない。
静秋以外はこのコタンで全員生み落としており、今回の出産もここでするのだろう。
だが不死身だからこそ雪乃は普通の妊婦と違った。
活発なのだ。
確かに安定期に入ったから多少は動かないとという医者の言葉もあったが、狩りから帰って来たらコタン中の薪を全て一人で割っていたのは流石に口があんぐりと開き、尾形も静秋もアシリパもついでに遊びに来ていたキロランケも暫くは口が閉じれなかった。
それもその後尾形と静秋が取って来た鹿と、アシリパが狩って来たウサギ三羽と、キロランケがお土産に持って来た大きい魚数匹を持とうとしたのには流石に全員で止めた。
因みにそのお腹には二人目の子供が宿り、出産間近だったのだから驚きである。
今回の喧嘩もそんな感じで、ついに尾形も堪忍袋の緒が切れ喧嘩に勃発。
だが流石に尾形も妊婦相手に暴力は振るえず、結果がこれである。
それを聞けば全面的に雪乃が悪いように聞こえるだろう。
いや、悪いのは殴る雪乃なのだが…尾形も尾形である。
売り言葉に買い言葉…尾形はあれでいて独占欲が強く雪乃には過保護な所があるので今回の喧嘩は大騒動になり、そしてプチ家出である。


「静秋は行かなかったんだ…あれかな?アチャが心配だったのかな?」


この喧嘩、どっちもどっちなので正直に言えば夫婦喧嘩は犬も食わないである。
関わらない方が白石の精神面も安定するのだが、思い出したのかムスッとさせる尾形をチラリと見てつい尾形の味方に付いてしまう。
ご機嫌取りというほどではないが気まずい中で食事は囲みたくはない。
それに同じ男して庇ってやりたいというのもあった。
雪乃が静秋だけ置いていくなどありえないため、ここに静秋がいるという事は自主的に残ったという事だろう。
と、いうことは静秋は父親が心配で残ったのかと思ったのだが…


「いや、アチャにメノコマキリを作らせるために残っただけだけど」


悲しいかな…子供は案外父親に冷たいものだ。
白石は『僕が言わないとご機嫌取りしないし』と何でもないように言う友人の息子に『そっ…そう、なんだ…』と引きつった顔で笑いながらチラリと尾形を見る。
流石に堪えたのか、尾形は片手で顔を覆って俯いていた。
泣いてはいないようだが、あの尾形にこの姿を晒させるとは…やはり見た目は尾形似だが中身は雪乃似なのだろう。
とりあえず悲しい父親の姿から目を逸らし(大人だけが)気まずい空気を何とかしようと話を逸らそうとした。


「で、でもよく頑張るね〜…あの尾形ちゃんも5人のアチャかぁ」


棒読みだが空気を変えるためだと見逃してほしい。
静秋の他にも尾形と雪乃の子供はおり、長女、次女である。
長男は結婚前に生まれたため、結婚後新婚生活を満喫した後暫くして出来た長女とは4つほど離れており、次女に至っては8つ。
今回双子という新たな兄弟に至っては11歳差…下手をすれば12歳差である。
確かに10年経っても衰えない雪乃の美しさに惹かれるのは理解できる。
だが獣じゃないんだからそうポコポコ孕ませるなよと思うのは決して嫉妬ではない。
そう、決して、嫉妬、では、ないのだ。(強調)
だが、尾形に至ってはそう思えない。
その理由は…


「子供さえ作っとけば簡単に他所の男のとこにいかないだろ」


子作りの理由がこれだからである。
尾形の顔にデカデカと『なに当たり前の事言ってんだ』と書かれており、それを見た白石は『そっかーそうだねー』ともう考えるのをやめた。
尾形の言葉は誰が聞いても子供を物としか思っていないような内容だ。
とは言え子供を愛していないわけではなく、先ほど息子に頭が上がらなかったのを見て分かるように尾形はちゃんと子供を愛している。
ただそれ以上の愛情が雪乃に向けられているだけである。
それはもう、盛大に、当の昔に、愛情メーター針が振り切れているほどに。
そんな尾形が出て行った雪乃をすぐに連れ戻しに行かないのは、ちゃんと戻ってくるのを知っているからだ。
過去に色々あった二人だが雪乃もちゃんと尾形を愛しているらしい。
まあでなければ子供を5人も産まないだろう。
とりあえず白石は『アメちゃん食べるぅ?』と二人に飴をあげた。
二人が同じタイミングで飴を口に入れ、同じ頬を膨らませる姿にほっこりしながら自分も飴を口に入れたその時――――


「尾形ァ!!静秋!!大変だ!!雪乃が産気づいた!!!」


プチ家出をしていた出産間近の雪乃に付いていたはずのアシリパが飛び込むように駆け込んできた。
ここまで馬で走って来たのか、ぜえぜえ息を荒しながら駆け込んできたアシリパはそう言った後『お、白石じゃないか』と白石に気付き、そんなアシリパをよそに尾形はすぐに立ち上がり大切にしている銃さえ忘れチセを出る。
静秋は父と自分の銃を手に取りその後を急ぎ、白石もそれに続く。
だが外に出れば尾形と静秋の姿はなく、アシリパが乗って来た馬もいなかった。


「尾形め!急いでるからと私の馬を勝手に乗っていきおって!」

「まあまあ、そう怒らないであげなよ…尾形ちゃんも本心ではすごく気にしてるんだし」

「知っている!だが!雪乃は私の相棒だ!!すなわち私の(マッ)だ!!出産は私も付き添うはずだったんだぞ!!」

「…うん、相変わらず色々突っ込みたいけど…とりあえず飴ちゃん食べて落ち着きなぁ??」


久々に会うアシリパは綺麗になった。
きっと白石が知らないだけで求婚は多いのだろう。
だが如何せん、雪乃がアシリパフリークであるようにアシリパも雪乃フリークであり、中々『(アシリパさん/私)に告白したければ(私/雪乃)を倒してからにしな!』という壁を乗り越える男は今のどころいない。
キーッといい歳して地団駄を踏む美人に白石はそっと飴を渡し、その後馬を借りて尾形達を追いかけた。


―――その次の日の早朝、元気な女児の双子が生まれた。



/ あとがき /

番外編というよりはパロですかね。
尾形と夢主が夫婦になったら子沢山になりそうだなって思って書きました(笑)
尾形は子供に眼中になさそうですが、ちゃんといいお父さんしてますよ。
夢主も裏切ると心からは思っていませんが、色々モテるので不安なんです。
鯉登ですが、自分は昼ドラや執着系愛情が好きなんですが、片方が不幸になるのとか、片方と結ばせるからと別のキャラと結ばせとけばいいかみたいなのは好きじゃないんです。
なのであえて触れません。
とはいえ、連載では確実にどちらかが振られるんですがね…(汗)
長男(静秋)は成長したらこうなります。
目の色以外全て父親譲りですが、両親が両親なのでしっかりした子になります。
その後は全て女の子で、夢主似です。
夢主似なのできっと父と長男は女達に尻に敷かれるのでしょうね(笑)
それも娘たちはアシリパ仕込みに成長する事でしょう。

ではここまで読んでいただきありがとうございます。

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