(1 / 13) USJ襲撃事件編 (01)

夜。
私は母と共に棺の前に立っていた。


「琴子…綾乃お姉ちゃんに…バイバイ、しようね…」


涙声の母にそう言われ抱えられながら棺桶を覗き込む。
そこには花に囲まれたウサギのぬいぐるみがあった。
それを見て琴子は首を傾げる。


「あやねえ、いないよ?うさちゃんがいるだけだよ?」

「…っ」


その言葉に母は目に涙を溜め、私を抱きしめた。
抱きしめる母を見ればぽろぽろと溜まった涙が溢れて私の頬に落ちる。
母が泣いている理由は分からなかったけど、大好きな母が泣いているその姿に幼いながらも私は胸が締め付けられた。


「…して、やる……」


後ろから声が聞こえて母の腕の中でチラリとそちらに目線をやった。
そこには30代くらいのどこにでもいる男性がいた。
その男性は綾乃…棺にいるはずだった少女の父親だった。
綾乃という少女は従姉で、仲が良かった。
親戚の中で一番仲が良く、そのため綾乃の父親だった叔父もよく遊んでくれた。
普段は私にも優しい人で、穏やかに笑う人だった。
だけど、


「殺してやる…ッ!!!」


今の彼は当時私の知っている叔父ではなかった。
今の彼は、鬼そのもだった。
彼から出されるその言葉が幼かった私には全て呪いのように聞こえ、私は怖くて抱きしめてくれる母にしがみついた。
母の温もりに恐怖が緩和されたような気がした。
しかし…

――――従姉の葬式の数日後、伯父が行方不明となり、続けて母も姿を消した。
棺の中にはクマとネコのぬいぐるみが入れられていた。

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