(10 / 10) ガンダム (10)

視界からも見える敵の艦にリアナの心臓は大きく鼓動する。


「いた!ムサイだ!」


これから自分の指一つでこの場は戦闘と化す。
その覚悟をリアナは深呼吸して落ち着かせてから決める。
覚悟を決めたリアナはミサイルを片手に構え、スコープでゆっくりと動くムサイを捉え、円状のマークが二つ合わさるのを待つ。
あちらはまだ気づいていないようで、この待つ時間がリアナにとって数時間に感じられる。


「よし…つかまえた!」


ムサイを円状の中に収め、円状のマークが重なったのと同時にリアナは引き金を引いた。
それと同時にミサイルが発射され、それは開戦の意味を持つ。
リアナはミサイルがムサイに向かっていくのを見送る暇はなく、次のミサイルを放つ。
一発目はムサイと補給艦を繋ぐコンベアーパイプに当たり、二発目はムサイに当てた。
そこまでされて敵襲に気づかない馬鹿はいない。
ムサイからも反撃が来るが、太陽を味方につけているためその弾は当たらない。
リアナはもう一発、ミサイルを撃つ。
そのミサイルを出撃したシャアが相殺させようとしたが、外しムサイに当てるのを許してしまう。
その間にコアファイターはムサイを攻撃しに向かった。


「!―――来た!シャアだ!」


もう一発、ミサイルを発射させようとしたリアナだったが、スコープからシャアの乗る赤いザクが見えた。
その姿を捉えた瞬間、リアナの体に緊張が走った。
こちらに向かってくるシャアをリアナは迎え撃ち、リアナはシャアとの交戦を開始する。


「シャアめ…!」


向かってくるシャアのSMに対して、リアナは盾で対応し応戦する。
ライフルを使われ盾で守りつつ、頭に搭載されているバルカン砲で迎え撃つ。
その弾に押されたシャアを見てリアナは押し切れると思い、バズーカを構えた。


「外した!」


しかし、バズーカの弾はジャアのSMには当たらず外してしまう。
シャアに当たらなかったことに舌打ちを打つ暇もなく、リアナはシャアに後ろを取られ振り返りざまに殴ろうとしたが、動きはあちらの方が上だった。
ザクの盾で弾かれ、リアナはがら空きとなった懐に入り込まれた。
コクピットすれすれの場所を殴られ、衝撃でリアナの乗るコクピットが揺れた。
幸いシートベルトがリアナの体を支えてくれたおかげで大した揺れはなかったが、その衝撃の強さに息が詰まりそうになる。


「このままじゃまた負ける…!」


初陣が散々だったリアナは負けたくない気持ちが生まれた。
しかし気持ちだけで勝てるなら、多くの兵たちは生き残ることだろう。
シャアとリアナでは、実力どころか出撃の数すら天と地の差だ。
リアナは実力で言えばシャアに勝つことはないだろう。
だが、リアナが持つ負けん気だけは誰にも負けるつもりはない。
今のリアナは気持ちだけで保っていた。
グッと操縦桿を握りしめ追い詰められている中でどうやってシャアに一矢報いるのか考えていると、シャアの乗るMSがリアナの乗るガンダムから遠ざかろうとしているのに気づいた。


「!、ホワイトベースのところに行くつもり!?」


リアナはハッとさせシャアを追いかける。
向かったのは間違いなくホワイトベースだろう。
ホワイトベースがムサイに攻撃をかけてきたことを仲間から知らされたか、気づいたかのどちらかだ。
リアナとしてはどちらでもいい。


「ブライトと約束したのよ!私がシャアを引きつけておくって!!失敗でもしたらまた…!」


一瞬浮かぶのはブライトの顔。
リアナだって、冷静に考えればブライトも一杯一杯だと分かるのだが、どうしてもプライドの高いリアナは反発心が生まれてしまう。
失敗したら何を言われるか想像したくない。
リアナはシャアを邪魔するようにライフルを撃つ。
シャアもリアナを引き連れてムサイに戻るわけにはいかないのか、ライフルを撃つリアナに応戦する。
ライフルで迎え撃つシャアに、リアナも盾を使いライフルの弾を防ぐ。
あるものはなんでも使った。
弾切れになったバズーカをシャアに投げつけもした。
そのバズーカは弾き飛ばされて防がれてしまった挙句、特攻するように体当たりをされてしまう。


「と、止まって!!」


体当たりされたリアナは後ろへと飛ばされてしまう。
重力がない分、遠くへと吹き飛ばされたリアナはスラスターを噴射させて動きを止めた。


「―――っ!」


しかし、止まった瞬間、間合いをシャアに詰められ再びリアナは懐に入るのを許してしまう。
突然現れた赤いザクがモニターに映り、リアナは驚くのと同時に咄嗟的にバルカン砲を発射させようとした。
だが、それを読んだようにシャアに腹部を蹴られ、再び吹き飛ばされてしまった。


「っ、いったぁ…!」


直撃はしなかったが、その衝撃の強さにコクピット内が大きく揺れた。
今回は先ほどよりも大きな揺れだったため、頭をシートにぶつけてしまう。
一瞬隙を作ってしまったと慌ててモニターを見ると、シャアが対峙しているガンダムではなく別の方向へと飛んでいくのが見えた。


「しまった!シャアが…!」


向かった先は恐らく…いや、確実にホワイトベース。
それが間違っていたとしても、ムサイの傍にはホワイトベースとコアファイターがいる。
シャア一人で戦略は一気に変わる。
それほどの実力をシャアは持っている。
リアナはサーベルを取りだし、急いでシャアが向かった方向へと進む。


(いた!シャア!)


シャアが向かったのはホワイトベースではなく、自身の軍艦であるムサイだった。
コアファイターの襲撃にムサイから救援要請を受けたらしい。
シャアを見つけた時、その隣にはザクとは少し違うデザインの旧ザクだった。
旧ザクはシャアが止めるのも聞かず、ガンダムに向かってきた。


「ぶ、武器も持たずにくるの!?」


丸腰の相手にリアナは一瞬戸惑う。
今までは武器を持ったザクを相手に戦っていたからリアナは相手に立ち向かえた。
だが、目の前の相手は武器一つ持っていない。
相手は長い軍歴を持つ老士官。
だが、高齢から前線を退け補給任務に従事していた。


(武器も持っていない相手に戦えるの!?…でも…やらなきゃ…こっちが…っ!でも…!)


旧ザクとはいえ、相手は武器を持たない丸腰。
リアナは戸惑い迷う。
その迷いが隙を生み、旧ザクに間合いを詰められてしまう。
もうそこまでくれば丸腰だのなんだのと言ってられなくなる。
サーベルで迎え撃とうとするも、軍人ではないリアナと軍歴の長い旧ザクのパイロットでは、シャアと同様実力差で詰められてしまう。
しかし、リアナも負けてはおらず、体当たりしてきた旧ザクの腹部にサーベルで切りかかった。
硬い装甲をじわじわと溶かし切るリアナは相手が爆発する前に離れ…リアナが下がったのと同時に旧ザクは爆発した。


≪下がれリアナ!!≫


唖然と爆発が収まるのを見ていたリアナに無線が入る。
相手の声でリアナは我に返り、無線の音声が流れるスピーカーに視線をやる。


≪補給艦は撃破したんだ!すぐに下がるんだ!!≫

「で、でも!」

≪お前も武器の手持ちがないんだろ!シャアとどう戦うんだ!!≫


相手はブライトだった。
リアナの任務はシャアの足止めだが、ホワイトベースはムサイの補給を防ぐために襲撃していた。
その必要もなくなった今、必要以上にエネルギーや弾薬を使用するのは避けたい。
目的が果たされた以上、これ以上ここにいる理由にもならず、一刻も早く避難した人達を安全な場所に移す方が最優先される。


「っ、……了解」


不服ではあるものの、ブライトの判断も正しい。
リアナもこれ以上シャアと戦う気はなく、ブライトの命令通りホワイトベースに帰還する。
シャアはその後ろ姿を追うことなく見送った。



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