「…、……」
夏目は妖かしの記憶を夢に見て目をゆっくりと開ける。
すでに空は赤くそまっており昼間より肌寒い。
横を見ると自分以上にボロボロの妖かしが倒れており小さく目を見張る。
「生きているよ」
夏目が起きた事に気づいた名取がそう呟く。
名取の呟きに夏目はさして驚くわけもなく静かに目だけ上にし名取を目に移した。
「首の呪縛は焼ききれなかった…五分五分だと思っていたんだ……呪縛から逃れられない哀れな妖かしなら一思いで逝かせてやりたかったし、うまくいけば一命をとりとめて…縄を焼いて自由にしてやれるんじゃないかって…」
「………」
「しかし実際は呪縛の方が強かったらしくてね、小春ちゃんがその呪縛を切ってくれたお陰で自由になった…」
「小春…?…………小春!?」
体中が痛くて起き上がれなかった夏目だったが名取の口から妹の名が出てガバッと起き上がる。
本当は起き上がったことで激痛まではいかなくても相当な痛みが夏目を襲ったが今は痛む余裕はなく、名取の目線を辿れば名取の上着をかけられて気を失っているように眠る妹の姿があり、その側には小春に寄り添うように丸まった斑がいた。
夏目は小春が倒れている姿に慌てて小春に駆け寄る。
「大丈夫、怪我はないよ」
「な、なんで小春がここに…家に置いてきたはずなのに…」
小春の無事に安堵するも唖然と呟く夏目に名取は小春が来た時の事を夏目に話した。
夏目は名取の説明を聞き更に首をかしげる。
「1人?本当に1人だったんですか?」
「ああ…周りに誰もいなかった。車椅子もだ。」
「なのにどうやって…」
「夏目…小春ちゃんは本当に人間なのか?」
「え…?」
「彼女が陣に触れた瞬間君達の傷が一瞬にして消え、癒えていった…それに妖かしの呪縛も弱まっていたとはいえ触れただけで焼き切る人間などいない。」
「……………」
夏目は名取の説明に名取から小春へ目を移すが名取の問いに再び名取へと目線を戻した。
名取は真剣な表情を浮かべ、既に気がついている妖かしも割れた面の隙間から目だけを動かし夏目へ目線を向ける。
斑はただ何も言わず黙ったまま夏目の回答を待ち、夏目は目を伏せてゆっくりと口を開く。
「…小春は人間です……どんな力があろうと、俺の妹です…」
夏目の答えに斑はふと笑い、名取は目を細め、妖かしは目線を空へと戻す。
名取は夏目の答えにそれ以上何も言わず夏目から倒れて夕空を見つめている妖かしへ目を移した。
「しかし…気付かなかったよ…この妖かしはあの妖かしだったんだな…君達が盾になってくれただけでこの程度で助かったんだ」
深く聞かないでいてくれる名取に夏目は心の中で深く感謝しながら名取の話しに耳を傾ける。
「――けれど夏目、悪かった…こういう巻き込み方をしたかったわけじゃないんだ…」
「…………」
「君を見ていると昔の自分を思い出して何かを伝えてやれるんじゃないかと…ただ、話をしていたかっただけなんだ…」
「―――…はい、僕もです」
夏目は名取の言葉に目を閉じ頷く。
名取が安堵の息をつき笑ったのを感じ、夏目も小さく笑った。
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