「世話になったな、夏目、小春、田沼。」
その後、アサギはひょうたんに戻りそれから眠っているという。
世話になった、とアカガネは見送る3人に振り返る。
アサギが出ていってしまったため小春はもう目で物を見る事も、耳で音を聞くことも、自分で何かを伝えることも、自分の足で地面に立つことも出来ず夏目に背負われていた。
そんな小春にアカガネは頭を撫で、頭を撫でられた小春は顔をあげ小さく笑う。
その姿を夏目は目を伏せ、田沼はどこか悲しげに小春を見つめる。
「これからどうするんだ?」
「アサギを連れて里に帰る」
「そうか…」
アカガネは深く眠っているというひょうたんの中にいるアサギを連れて里に帰るようで、夏目は一先ず安堵する。
「小春には礼が言い切れないほどの恩が出来てしまったな…」
夏目はアカガネの言葉に後ろで大人しくする妹を横目で見る。
小春の中に居たアサギは小春の妖力を無意識ながらに吸い取り、完全に奇病を治したという。
しかし失ったものは返ってくることはなく指は三本しかないままで、その上まだ体に戻るほど体力は回復しておらず、体力が回復するまでひょうたんで休んでいると夏目はアカガネから聞いた。
それを聞き夏目は安堵の笑みを浮かべ、アカガネに『良かったな』と呟いた。
アカガネは照れているのか乱暴な言葉を投げかけるも夏目は照れていると知っているので笑うだけだった。
そして夏目に聞いた田沼も『良かった』とアカガネに呟きまたアカガネの照れが始まる。
そんなアカガネに夏目と田沼は愉快そうに笑いをこぼした。
「またな、アサギ……またな、アカガネ。」
「ああ…またな。」
アカガネは夏目と田沼に見送られ姿を消した。
アカガネが姿を消し去っていったのを見届け、夏目と田沼は田沼の家に帰るため歩き出す。
「今回は巻き込んでごめんな、田沼…」
帰りの途中、夏目は田沼を横目で見ながら申し訳なさそうに呟く。
そんな夏目に田沼は目を見張った後小さく笑った。
「何を言うんだよ…嬉しかったんだ」
「え?」
「普段あまり頼らない夏目が俺に頼って来てくれて嬉しかったよ。…それに泊まりにも来てくれたし……俺、夢だったんだ…友達を家に泊めるの。」
「田沼…」
『妖かし関係では俺は役に立たなかったけどな』と苦笑いを浮かべる田沼に夏目は目を見張った。
利用した自分を許してくれることがとても嬉しくて、そして夏目も田沼と同じ思いだったため、涙で濡れた目で田沼を見つめ微笑んだ。
「俺も、友達の家に泊まるの…夢だったんだ。」
夏目の言葉に田沼はまた嬉しそうに笑みを深めた。
→あとがき
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