小春の体はもう元に戻り始めていた。
最初は声もかすれてて聞きづらく、目も霞んで見え、耳もたまに耳鳴りがし痛みが走る。
それでも症状は治まりつつあり今となっては完全に治ってきていた。
しかし足は長い間使っていなかったということもありリハビリが必要となり、小春は退院はしたものの毎日散歩は欠かさない日常となる。
それでも外に出て色々な物や風景を見るのはとても好きだった。
妖かしにとり憑かれ、妖かしを通してではない風景。
人に、普通の人にとったらどうでもいい風景も、音も、小春にとったら幸せだった。
自分の目で物を見て判断し、自分の耳で色々な音を聞く事ができ、自分の意見を伝え、自分の足で歩くことが出来る。
アサギに憑かれていた時とは違い今度こそ自分の思うように動かせる事がとても嬉しいと小春は思う。
目も、耳も、声も使えなかった小春はとにかく学がない。
会話の為にと最低でもひらがなと数字は、と両親から叩き込まれていたのでなんとか絵本は読むことが出来るのだがカタカナ、漢字は全く分からない。
そんな小春に滋と塔子は恥じることもなく、よく小春の為に少し上の子が読むような絵本や小学生が使う漢字ドリル等を買ってきてくれる。
お世話になっている身でお金を使いそんな気を使われるのは正直戸惑ってしまう。
小春がその戸惑いをはっきりと表に出していたようで、2人は微笑みながらこう言った。
『小春ちゃんと貴志くんはもう私達の子供だもの…気にしないでいいのよ?』
『ああ…小春も貴志ももう私達の子だ…子供がそんな心配はするものじゃないよ』
2人の言葉は小春だけではなく夏目の胸を熱くさせるものだった。
ずっと病院で閉じ込め厄介者扱いされた小春。
ずっと親戚をたらい回しにされ厄介者扱いされた夏目。
小春は2人の言葉につい涙を1つこぼした。
それからは小春は乾いたスポンジが水を吸うように知識を吸っていく。
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