(1 / 8) 9話 (1)

「小春、おはよ。」

「お、おはよう、奈々ちゃん」


小春は兄と別れ自分のクラスへ向かう為階段を登っていた。
すると後ろから話しかけられ小春は振り返るとそこにはこの前友達となった奈々がいた。
奈々は手を上げており、そんな奈々に小春も照れながらも手を上げて挨拶を返す。
妖かし達しか友達が居なかった小春は奈々のように朝の挨拶もされたことがなく、自分も返したこともなかった。
だからいつも奈々に挨拶を返すときは気恥ずかしさで一杯になり恥ずかしそうに頬を染め小さく笑う。
その笑みが周りの人間…特に男子の心臓を鷲掴みにして離さないのだが、小春はまったく気付いていないだろう。
奈々は小春の隣まで歩き一緒に教室へ向かう。


「薫、リン、おはよう」

「おっはー!」

「おはよう、奈々、小春ちゃん」

「おはよう」


小春は奈々の友達に声をかけられ自分の席に座りながら笑みを浮かべて返した。
もう以前のように小春が教室に入れば凍りつくことはなく、皆挨拶をすれば返してくれるまでになった。
それは小春が笑顔を浮かべていなかったことに気付き次の日から笑顔を浮かべて入ってきてからであり、それ以来小春の学生生活は一変した。
まず、あれほど遠目だったクラスメイト達は少しずつだが話しかけてきて距離も縮まっていく。
まだ距離は遠い方だが、それは美少女にどう接したらいいのか分からないからだろう。
特に男子はテレビでしか見たことのない美少女に戸惑いが隠せず美少女の定番である告白タイムも小春は一度も受けたことはない。
小さい頃に比べればここはとても天国だった。

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