小春は学校に行くのが以前より倍に楽しみになっていた。
既に諦めかけていた友達も出来、その中の1人は自分の秘密を知っていても避けることもなく友達第一号となってくれた。
ここで小春は兄がこの町が好きな理由が分かった気がした。
「あれ?ニャンコ先生まだ帰ってこないの?」
「ああ、そうなんだ…ちょっと強く殴りすぎたかな…」
今日は斑と一緒にお風呂を入ろうと小春はパジャマを持ちニャンコ先生を探していた。
しかし家の中には斑はらず、もう既に風呂上りの兄の部屋を覗き込むとやはりいない。
小春は首をかしげながら兄に聞くと兄は頷き少し心配そうに窓に目をやる。
どうやら夏目と斑は喧嘩をしたようだが小春はその場にはいなかった。
兄も最初は怒っておりそう詳しいことは分からないが、とにかく斑が助けなかったことを怒っているようである。
別に全ての妖かしから守れとは言わないが、見て見ぬふりがむかついた。…と夏目は眉をひそめそう呟いた。
その苛立ちに任せるように襲ってきた妖かしの顔面を殴り、無視して蝶を捕まえようとしていた斑の頭に拳骨を食らわせたという。
小春も兄に釣られ心配そうに窓に目をやるとパチ、と何かの顔が窓に浮かび上がり夏目と小春は驚いて声を上げた。
「わっ!…ってニャンコ先生?」
「なんだ、ニャンコ先生か…脅かすなよ…どこ行ってたんだ?」
「……………」
その顔が斑だと気付き夏目は窓を少し開けてやると斑はのそりと部屋に入る。
しかし…
「……っぷ…!あっははは!!ま、真っ黒!!何で!?どうしたんだ先生!黒!どうして…!っはは!!」
「ぷっ…ニャ、ニャンコ先生真っ黒…っ!」
「……………」
その斑は真っ黒の体をしており、それを見た小春と夏目は一瞬呆気にとられたが、真っ黒に変わり果てた斑を見て2人同時に噴出し笑い声を上げる。
しかし斑はまだ黙ったままで表情はなくただ小春と夏目を見上げていた。
2人はお腹をかかえ、時には耐えられないと床を叩くが夏目の前を通ると足跡が残り、斑はどんな妖かしも怯む夏目の拳骨を再び貰ってしまい、一発KOで沈んでしまった。
「汚れた足で歩き回るなよな!ったく!ほら、小春と一緒にお風呂に行って汚れを落として来い!!」
床に沈んで動かない斑を小春は兄の言葉に抱き上げお風呂場へ向かった。
****************
チャポン、と水滴の音が風呂場に響く中、小春は斑の汚れを落とす為斑にシャワーをかけていた。
「あ!こら!暴れない!!」
水が嫌なのか斑は逃げ出そうとするも小春に抑えられてしまう。
十分に濡れた体を見て小春はシャワーを止め斑の身体に斑用(猫用)のシャンプーをつけて泡立てる。
シャンプーは嫌いじゃないのか斑は小春の膝の上で大人しくしており、小春は大人しい斑にくすりと笑みを浮かべ汚れを落とそうと体全体を泡立てようとした。
しかし…
「あれ?全然落ちないね…どうしてなんだろう…」
「…………」
いくら泡立てても多少は汚れが落ちたようだが、体の黒い場所は真っ黒なままだった。
真っ黒なままの斑は小春の言葉にも無言を貫き通し、小春はそんな斑に首をかしげ顔を覗きこむように斑を見つめる。
「まだお兄ちゃんのこと怒ってるの?」
「…………」
「そりゃお兄ちゃんはちょっと怒りっぽいけど…お兄ちゃんのいいところはニャンコ先生も知ってるでしょ?」
「…………」
「もう…どっちも頑固なんだから……」
「…………」
どんなに言葉をかけても斑は無言を貫き通す。
小春は斑がそんなに拗ねているのも珍しい、と思いながらも頑固な斑に溜息をつく。
それでも斑は何も言わず、気持ちよさげに目を瞑った。
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