(1 / 12) 夜明けの抱擁 (01)

夜が明け始めた頃。
東の空がうっすらと照らされはじめた時刻。
1人の赤子が誕生した。


「性別は…女か…男か…」


女性は出産したばかりだというのに、息も絶え堪えに、まずは赤子を抱くよりも性別が気になった。
性別を確認する母を他所に、生まれたばかりの赤子はまるで母に存在を主張するように『おぎゃあ』と泣く。


実代(みよ)様…!おめでとうございます!!女児でございます!!」


初老の女性の言葉に、女性は目を輝かせた。
やっとか、と呟き、元気に泣く我が子を、女性はようやく手を伸ばしその腕で初めて我が子を抱く。
湯で綺麗にされた我が子を優しく撫でる。


「やっとか…やっと、私にも女子(おなご)が…」

「ええ!ええ!実代様…!ようやっと生まれましたね!」

「ええ…これでお母上様も私を認めてくださるだろう…ああ…ああ!これで!これで地獄から抜け出せる…!汚らわしい男などに触れられずに済む!!これで我家に帰れる…!」


感涙に涙を流す女性…実代に傍にいた初老の女性も何度も頷きながら涙を流す。
この時代、男児を強く望まれるが、実代達は違った。
実代達は女児を欲していた。
その女児を3人目にしてやっと生まれたのだ。
これで汚らわしい男に触れられることに心を削らなくてすむ。
そう思うと実代だけではなく周りにいた女性達は涙が止まらなかった。
女性が産後の実代を気遣い、『実代様、お体を休ませくださいませ』と実代を寝かせる。
我が子を女性達に預け、実代は素直に横になり眠るのかと思ったが、実代はお産した直後だとは思わないほどのはっきりとした声で女達に言った。


「男どもに我が子を触れさせるな」


敵意を感じる低い声だった。
だが、周囲は疑問も思わずコクリと頷き、それを見て安心したのか母はやっと眠りについた。



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