(16 / 16) 子作りは計画的に (16)
夕暮れ。
普通なら買い物に出かけて帰ってきている時間帯。
銀時もパチンコから帰り、神楽も遊びから帰っている時間。
だけど今日は違う。
神楽は意識不明のまま真選組の救護班に運ばれ、雪も傷の手当てを受けていた。


「雪」


あとは1か所の傷に絆創膏を張れば終わり、というところで銀時が雪を迎えに来た。
雪は銀時の迎えに振り返りつい銀時の後ろを見る。
そこには本来神楽がいるはずだがおらず、雪は思わず気落ちしてしまう。
そんな雪に気づいているはずだが銀時は気づいていないふりをし絆創膏を貼り終えたのを見届け『帰るぞ』と声をかける。
銀時の声掛けに雪は『はい』と落ち込んだような声色を零し手当をしてくれた看護婦の人にお礼を言ってテントから出た。




外はすっかりと真っ赤に染まっており、雪は少し前を歩く銀時の背を追うに続く。
銀時の背はとても広くて大きく見えたが、雪の心境が心境だからか…少し寂しそうにも見えた。


「……あの、銀さん」

「んー?」

「……勝手な事、して…すみません…」

「…………」


戸惑いながらも雪は銀時に声をかけた。
振り返ることなく銀時は気のない返事をしたが、雪の謝罪に足を止める。
振り返る事もなく足を止めた銀時に雪も立ち止まった。



「…私…やっぱりダメでした…神楽ちゃんと別れるの、ダメ、でした……だけど…そんな事で勝手なことして…みんなに迷惑かけて…身勝手ですみませんでした…」

「いいんじゃねえの、それで」

「…え?」


エイリアン騒動は仕方ないにしても、ターミナルの人や神楽や星海坊主に迷惑をかけた事に雪は落ち込んでいた。
頭では神楽が星海坊主の傍にいることが一番いい選択だと分かって、理解していたつもりだったが、やっぱり嫌だった。
神楽が、可愛い妹のような存在が、危険な宇宙を旅するなんて心配でたまらなかった。
だから取り戻そうと行動に出たが、その浅はかさに気づいたのだ。
項垂れるように俯き震える声で謝る雪を銀時は振り返る。
俯いていたため銀時が振り返った事に気づかなった雪だったが、銀時の言葉にハッとさせ顔を上げた。
顔を上げると銀時と目が合い、銀時の目は相変わらず死んだ魚のような目をしていたが、どこか優しさや寂しさが垣間見えた。
自分の言葉に目を真ん丸にさせキョトンとする雪に銀時はふと笑って見せ、自分とは正反対の真黒な綺麗な髪に手を伸ばし撫でてやる。


「何も一生戻ってこねえってわけじゃねえんだ…神楽が今より大人になったら戻ってくるかもしれねえだろ?そん時まで俺らは万事屋を…あいつの第二の巣を守ってやればいいんだ…」

「戻って…きて、くれるでしょうか…」

「ぜってぇ戻ってくる。」

「…なんですその自信…どこから来るんですか」

「んなもん…俺があいつの地球での父ちゃんで、お前が母ちゃんだからだろ。」

「いや、あの…全然意味が分かりません。」


神楽が突き放しただけで戻ってこないなんて繊細な生き物じゃないのは銀時が一番知っている。
雪では可愛い可愛いと妹みたいに猫可愛がりしているから夜兎がどんなに強いのかは分からないだろう。
それに先ほど銀時は神楽の背を押してやったのだ。
あの親子喧嘩していた時のように一方的に突き放したとは違い、ちゃんと目を覚まし救護テントから抜け出して隠れていた神楽にも聞こえるように星海坊主に神楽を任せ、銀時は神楽を見送った。
その意味が分からない神楽ではないと銀時は思う。
だから強気でいられるのだが、雪は怪我の治療でその場でいなかったために銀時の強気が分からなかったのだろう。
弱弱しく突っ込んでいるが、銀時がそういうのならば、と雪もそんな気がしてきたのか寂しさもあり弱弱しく笑う。
弱弱しくあるが、笑みが戻り銀時はホッとさせまた雪の頭を撫でる。


「お前はそうやって笑ってればいいんだよ…迷惑かけようがなんだろうが子供のために尽くすのが、母ちゃんっていうもんだ…母ちゃんが沈んでたら俺らまで笑顔が消えるだろ?」

「…そうなんですか?」

「さあ?そうなんじゃね?」


ぐりぐりと少し乱暴に撫でる銀時の言葉に雪は首を傾げるが、銀時も首を傾げた。
『何ですかそれ…銀さんが言ったんでしょ?』と零す雪に銀時は『俺も知らねえしなぁ』と返した。
銀時は親というものを、家族と言う物を知らない。
だから理想でしか家族を描くことしかできない。
だから聞き返されても曖昧な返事しか返せない。
雪はこの際『母親』が定着していることは置いておくとしても、銀時の言う通りだとふにゃりと笑った。
まだ神楽がいない寂しさからか、銀時と神楽が好きな向日葵のような笑顔ではないが銀時は雪の笑みに釣られるように笑った。


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