(4 / 4) ××遊びは20歳になってから (4)
「雪ちゃ〜ん」


『うるせェ飲ませろや』といつもの妙では雪に決して向けないであろう言葉遣いで雪の忠告を聞かず運ばれて来たドンペリをまた飲み始める。
そんな姉にどうしたら止めてくれるかと悩んでいると銀時が声を掛けてきたのだ。
(因みに鷹臣はあてにしない。むしろあてにならない。動かないから。)


「あ!銀さん!ちょっと銀さんも止めてくださいよ!このままじゃ姉上がアルコール中毒になっちゃいますよ〜!」


銀時の声に雪は銀時に押さえて込んでもらおうとしたのだが、妙を挟んで座っていた雪の膝に銀時は頭を乗せた。
所謂膝枕である。


「ぎ、銀さん!?」

「あ〜良い眺めだなァ、おい…」


銀時の突然の行動に雪は目を丸くする。
ひっく、としゃっくりのような声を零しているため銀時も酔っぱらっているのだと分かり、酔っぱらいのセクハラに雪は深いため息をつく。
そんな雪に銀時はニヤニヤと笑って見上げていた。
ニヤつく銀時に雪は呆れたような目で見下ろし鼻をつまむ。


「あにふんだ」

「ニヤつかないでくださいよ…全く…銀さんまで悪乗りして酔っぱらって…誰が介抱すると思ってるんですか…」

「雪ちゃん」

「…私は姉上を介抱しないといけないんで無理でーす」

「え〜…銀さん、雪ちゃんがいい…むしろ雪ちゃんじゃないとここから動かな〜い」

「なに駄々っ子みたいなこと言ってるんですか…もう…」


周りがドンドンと酒を仰ぎ酔っぱらっている間に、銀時は妙が酔っぱらいすぎて警戒もガバガバなのをいいことに雪に思いっきり甘える。
姉の身の回りの世話から神楽や銀時の身の回りの世話をしていた雪はこうして甘えてくる人に弱い。
それはもう分かっている銀時はだからこそ思いっきり雪の膝に頭を乗せて甘えまくる。
よく神楽が膝枕を強請っていることもあってか、その癖で雪は銀時の白い髪の毛を梳くように撫でる。
天然パーマだと言いながらもその癖のある毛は柔らかくふわふわしておりなんだか大きな猫を撫でているようだった。
そう思えば恥ずかしさも消え、雪は思わず笑みを浮かべ猫を可愛がるが如く銀時を思いっきり甘やかす。
雪の撫でる手を銀時は気持ちよさげに目を細めながら、チラリと鷹臣を見る。
鷹臣が何かしてくると思ったのだ。
鷹臣は雪のストーカーで、鷹臣の兄である近藤は当然妙がこうして男に膝枕をしていると怒りだすだろう。
というよりかは恋する男は皆そうだ。
だがチラリと見た鷹臣は怒りだすどころか、猫(銀時)を可愛がる女神が如く美しく愛らしいの表情(銀時&鷹臣視点)を浮かべる雪の横顔を優しい表情で見つめていた。
普段も優しい優男風の顔つきだが、銀時からしたらそれは作っているとしか見えなかった。
勿論、僻みではない。
そう、僻みではない。(大事な事なのでry)
だけど今雪を見つめている鷹臣は本当に雪を愛おし気に見つめていた。


(本気だってことかねェ…まあ、だとしても渡す気はさらさらねえけどな。)


鷹臣があまりにも淡泊な性格だから、正直雪への愛情を疑っていた。
だが鷹臣の今の表情を見て銀時は彼が本当に雪に恋をしているのだと分かった。
しかしだからと言って引き下がるほど銀時と鷹臣の仲は深くないし、銀時も人が良いわけではない。
雪の手が気持ちよくてこのまま眠るのも悪くはないなと思い目を閉じた銀時だったが、片栗虎達の声で閉じた目をすぐに開けることになる。


「やるなァ近藤…だがそろそろ財布の方がヤバーくなってんじゃねえのか?」

「甘くみるなよ!俺は夫婦貯金を全て下ろして…―――アレ!?もうねえじゃん!どういうこと!?」

「フハハハ!!てめえはドンペリなんざ滅多に頼んだことねえから知らねえだろ!アレマジで高ェんだぞ!?ほーんと高ェんだぞ!!ダース単位で買ってたら、金なんかスグなくならァ!!――――どうしよう…母ちゃんに怒られる…!」

「ってお前もヤバイのかィィィ!!」

「鷹臣ィ!おめえ…」

「あ、無理でーす。もう全財産義姉上に渡しちゃいましたから〜」

「なァにィィィ!?」


どうやらそろそろ決着がつきそうである。
高々に笑うが片栗虎も底がつきかけており、大きすぎる出費に妻に叱られると涙目となる。
そのため鷹臣に助けを求めたが、当然雪のためにと結婚資金すら溝に捨てた男…それ以外の金という金を全て妙に渡していた。
鷹臣の言葉に片栗虎はガクリと肩を落とす。
しかし肩を落とすのは何も片栗虎であけではない。
近藤は空となったサイフを見て恐る恐る妙に振り返る。


「やばい…お妙さん…」

「近藤さん…もういいです…ここまでやってくれただけで…」

「お妙さん…」

「―――あとはこれを売払ってくれれば十分ですから」

「「え」」


妙は振り返った近藤に首を振った。
妙の言葉を聞き近藤は涙目となって感激する。
今の今までストーカーし嫌われ続けたおかげか…妙のその優しい言葉で天にも昇る勢いだった。
――が、妙の手には腰に差していたはずの侍の魂…刀がいつの間にか握られていた。
その刀を見て、近藤、そして雪までもが呆気に取られる。


「…売払ってって…刀は武士の魂なんですけど…」

「魂なんてまた買えばいいじゃないですか」

「いや…そういう訳には…」

「ビックマネー叩きつけてくださいよォ」


姉のその言葉を聞いて雪は『あ、酔ってる』と思った。
いや、今までも酔ってはいたが、更に酔いが回っているらしいのだ。
流石に魂と同等の物を売れという姉の言葉に放置も出来ないと思い止めに入ろうとした雪を遮り膝の上にいる銀時が笑う。


「そうだそうだ!!いるなら中古で買え!!」

「お前は借りてこい」

「…へ?」


酔いが醒めつつあると言っても酔っていることは変わりないのか、悪乗りする。
だがそんな銀時に妙がそのまま振り返り笑顔で言った。
その言葉に一瞬理解できなかった銀時に、妙は可愛い妹の可愛い膝の上に頭を乗せて殿様気分の銀時の胸元を掴む。


「だからァ…金持ってねェ奴は借りて来いって言ってんだよ」


ゴキ、と片手でも指を鳴らし禍々しいオーラを出す妙に銀時は逆らえず『…はい』と頷いてしまう。
それを他人事のように見ていた長谷川だったが、その長谷川もターゲットになっており妙は『てめェはグラサンな』と酔う前に高かったと自慢していたグラサンを売るよう言った。
銀時よりもこういう時の妙に耐性がない長谷川は顔を青くさせ何度も頷く。


「ゴリラ弟、てめェは…」

「はい、義姉上」

「あ?」

「(どっかの偉い官僚)さんの通帳です」

「ちょっと待てェェ!!なんで他人の通帳なんか持ってるんですか!?」

「こういう時のためにくすねて来ました〜」

「いや、エヘ☆じゃないから!!なに平然と人の金使おうとしてるの!?それ人のでしょ!?鷹臣さんのじゃないでしょうが!!」

「この人次の任務で殺す相手だからいいかなって」

「ひぎゃあ!!なに機密バラしてるんすか!!それ秘密任務でしょうが!!」

「まあまあ雪ちゃん、落ち着いてちょうだい?明日死ぬ人なのよ?そんな人のお金使わないと勿体ないでしょう?―――すみませーん!ドンペリ10本追加で〜!」

「姉上ェェ!それ人のだから!!駄目なんですってば〜〜!!」


近藤、銀時、長谷川…と来れば当然鷹臣に白羽の矢が立つ。
だが他の3人よりも鷹臣は一歩進んでいたのか、通帳を妙に差し出して難を逃れる。
が、その通帳は鷹臣のではなく赤の他人のものだったらしい。
それも明日仕事で始末する人間の。
どうやって手に入れたかは怖くて聞きたくないが、軽く(というかどっぷり)犯罪を犯している鷹臣に雪は突っ込みを入れ、更には人の(しかも盗まれた)金でちゃっかりドンペリを追加する姉にも突っ込んでおいた。



かくして…妙VS阿音の戦いは引き分けとなった。
2人はクビを免れたのだが…―――その二人の勝利に影には4人の男達の屍がある事を雪は一生忘れないと誓ったという。
そして…当然万事屋の家計は真っ赤な血の海のような赤字となったという。


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