(3 / 3) カワイイを連発する自分自身をカワイイと思ってんだろお前ら (3)
向かってくる天人達にまず飛び道具を持っている神楽が足を止めた。
天人達は神楽の傘先から放たれる銃弾に踊るように足をばたつかせ、その間に銀時は起き上がる。


「結局俺達にゃこいつが一番向いてるらしいな…―――ついてこいてめえら!強行突破だアア!!!」


『大丈夫ですか!銀さん!神楽ちゃん!』と上から聞こえる雪に二人は手を挙げて応えてやり、雪は大きな怪我がないらしい二人の反応にホッと胸を撫で下ろす。
銀時が結局いつものように暴れるパターンになった事に対し腹をくくったのを見て、銀時の声に従い雪もコンテナの上で銀時を追うように走る。
素人同然の公子も慌てて敵をなぎ倒しながら走る銀時に続く。


「おお。アンタやればできるじゃん!!ヤベッ…惚れそう!!」

「いや、本当にやべえから止めて!!」


次から次へと天人を倒していく銀時の体に、天人からつけられた傷はない。
木刀一本で多くの天人をなぎ倒していく銀時を見て少なからず一瞬だけでも公子の乙女な部分に引っかかってしまった。
それを全力で拒絶しながら銀時は『なんてこいつ(公子)が俺に惚れるのにあいつ(雪)はいつも無反応なんだよオオオオ!!!』と心の底からの叫び声をあげる。
チラリとコンテナの上にいる雪を盗み見するも、雪は走っているのに夢中で気づいていない様子だった。
怪我一つないことにホッとしながらも無反応な雪にまたしても悲しくなってしまう。
気分を切り替え銀時は雪から後ろから追いかけてくる強面の天人達を振り返った。


「それよりこれ何!?どういうこと!?たかがチンピラ一人の送別会にしちゃえらい豪勢じゃねェか!どうにもキナ臭せえなその陰毛頭!」

「ちょっとなに!?太助がよからぬことでもやってるって言うワケ!?」

「ふざけんな!!俺は公子と一緒に真っ当に生きていくと決めたんだ!!それから俺は陰毛頭じゃねえ!これはオシャレカツラだ!!なめんなよ!!」


そう言って太助は被っていたカツラを取った。
スポーンと簡単に取れたカツラの下は剃ってあるのかはたまた天然のつるっぱげなのか…髪の毛一本もなかった。
だが、髪の毛一本も見当たらない代わりに"あるもの"があった。
それを見て銀時と公子は立ち止まり真っ白となる。


「……オーイ」

「……モノ隠したのどこかぐらい自分で覚えておこーや」

「あ」


つるっぱげの頭には白い粉みたいな物が入っている少し小さめの袋がテープで張り付けられており、それは天人達に追われている理由である転生郷であった。
自分がどこに隠したのか忘れていた太助はカツラを外してしまい、その間抜けさに思わず公子までもが呆れ返ってしまう。
銀時の言葉でやっと隠した場所を思い出した太助は慌てるがすでに遅く、バッチリ天人も隠した場所を見ていた。


「あ!!あの白い粉は転生郷!!野郎ォ!あんなところに隠してやがったのか!取り戻せ!!」


一人の天人の言葉でひるんでいた天人達が一斉に太助へと集中しはじめ三人を囲む。
それを銀時と天人をジャンプ台に駆け付けた神楽の二人によってせき止められていた。
その間、公子は転生郷を持ち逃げすようとしていた彼氏をキッとにらむように見つめた。


「太助…あんた…組織から転生郷持ち逃げしてきたんだね…!どうして!もう止めようって言ったじゃん!!一緒に真っ当に生きようって言ったじゃん!!!」

「…………」


公子の責めに太助は目を逸らすだけで何も言わない。
それが真っ当に生きるという言葉を否定されたように公子は感じた。
公子が何か言いかけたその時、公子の首に鋭い刃物が宛がわれ、公子は息をのむ。


「太助…取り引きといこうか?」

「…!」

「こいつとおめえの盗んだブツと交換だ…今渡せばお前も許してやるよ…」

「言うこときいちゃ駄目!殺されるわよ!!私なんて構わずに早く逃げ―――」


大鎌を持った天人は隙を突き公子の背後を取って公子を人質にする。
公子は内心恐怖に襲われながらも必死に気丈に振る舞い天人の言いなりになるなと太助に言ったのだが…太助はそんな公子の言葉など聞きもせずそそくさと逃げてしまう。


「その女なら好きなようにしてくれていいぜ!あばよ公子!お前とはお別れだ!!金もってるみてェだから付き合ってやってたけどそうでなけりゃお前みたいなブタ女ゴメンだよ!世の中結局金なんだよ…!!」


雪は走っている中でも太助の声が聞こえた。
その言葉に走っていた足を止め思わず公子を見た。
公子は大鎌を向けられているというのに太助の背をただ唖然と見送っており、雪はそんな公子の心情が痛いほどわかってしまう。
否…雪だけではなく、恋を一つでもした女性なら公子が今どんな想いなのか読み取れるだろう。
恋人を捨てる太助を雪はキッと睨みコンテナから降りて太助を持っている木刀で叩き倒してやろうとし足を一歩踏み出したその瞬間―――太助の後頭部に木刀が飛んできた。
それを見て雪は目を丸くし飛んできた方向へと目をやった。
そこには、銀時がいた。


「人間食い物にする天人…それに甘んじ尻尾ふって奴らの残飯にがっつく人間ども…―――ブタはてめえらの方だよ。薄汚ねえブタ守るなんて俺達はごめんだぜ」


銀時は突然味方であろう太助に持っていた木刀を投げつけて困惑する天人を見向きもせず太助へと歩み寄り気を失っている太助の頭に張り付いている転生郷を取る。


「てめえ敵なのか味方なのかどっちだ!?」

「どっちでもねえよそれより……ほら、これ…そいつとそのブサイク、交換しようぜ」


天人からしたら敵だった銀時が味方である男を気絶させるという敵か味方か判別しきれない行動に警戒を高めていた。
銀時は天人の問いに適当に返しながら手に持っていた転生郷と、天人側に人質に取られている公子を交換しようと持ち掛ける。
大鎌を持っている天人はその言葉の真意が見えないのか、少し警戒し低い声でうなるようにつぶやく。


「……お前から渡せ」

「なーに、びびってんだか…ほれ」

「―――!!」


銀時からしたらとっとと公子と太助を回収し報酬をもらって帰りたい一心だったため裏はない。
だが天人側からしたらどっちつかずの銀時の行動が怪しく見えるのか信用ができなかった。
天人の言葉に銀時は肩をすくめながら天人の言う通り転生郷を渡す。
しかし、銀時は天人に手渡しするでもなく…転生郷を投げてしまう。


「あいつ投げやがった…!」

「おい!!誰かとれ!!」


転生郷は天人達にとって価値のある品物だからか、乱暴に扱い転生郷を放り投げる銀時に天人達は慌てふためく。
銀時はわざとなのか高く投げたため、天人達はみな空を見るように顔を上げた。
そして全員の目線の先には転生郷と……コンテナの上で待機していた雪が転生郷の入った袋を木刀で叩き切った。
といっても銀時ほどの腕前ではないため衝撃で袋が破ける程度だが、それでも天人達の注意をそらすのには十分で、雪は腰に木刀を差しながら銀時と神楽が公子と太助を助けてどこかへ逃げるのを見て、雪もそれに続きコンテナの上から天人達から姿を消した。

天人達が気づいたころにはすでに雪達の姿はなかった。





「まじありえないんですけどォ」


公子の口からダルそうに声がこぼれる。
あの後雪は銀時達と合流し港から離れた場所へと移った。
追手が来ないのを確認すると公子からの報酬をもらい橋で別れることにした。
そして冒頭の言葉が出てきたのだ。


「太助助けてくれって言ったのに何でこんなことになるわけ〜?」

「ありえねえのはお前だろ?どーすんだ、それ」

「あの…言っておきますけどそれは焼いても食べられませんよ?」

「お前ら最後までそれか」


太助を助けてほしいという依頼は果たされているようないないような微妙な結果となった。
まあ連中から逃げれただけで良しとしようと思いながら公子は背中に背負っている太助を指さす雪のボケに突っ込みを入れる。


「こいつ逃すと彼氏なんて一生できなさそうだからか?おいおい諦めんなって、世の中には奇跡ってのがあるんだぜ?」

「そんな哀れみに満ちた奇跡はいらねェ!……こんなヤツに付き合えるの私くらいしかいないでしょ…」


そう言って公子は太助を背負ったまま銀時達のもとから去っていった。


「何なんだ?ありゃァ…」

「恋人というより親子みたいですね」

「あんな母親俺ならグレるね」


女が男を背負うというアベコベな光景だが、雪はなんだかほほえましく見えた。
公子は太助からあんなことを言われて捨てられたのも同然なのに太助を見捨てるでもなくまだ付き合うつもりらしい。
正直それを聞いて信じられなかった。
いくら好きだからと言ってあんな身勝手なことを言われても付き合うなんて雪には到底無理だから、公子の想いを貫く姿勢が羨ましかった。
自分はもう初恋の男性を諦めているのだから余計に。
羨ましさからくる嫉妬からちょっぴり意地悪なことを言えば、返ってきた銀時の返しに雪はくすりと笑った。


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