(2 / 3) カワイイを連発する自分自身をカワイイと思ってんだろお前ら (2)
電話は依頼だった。
昼食も終えた銀時達は依頼人との待ち合わせ場所へと向かう。
そこはなんの変哲もないファミリーレストランで、依頼主は一目で見つけられた。


「あ、銀さん、あそこですね…」


雪の指さすほうへ歩み寄れば、なんとなく見たことがあるようなないような依頼主に一言あいさつし銀時達は依頼主の向かえの席へと座った。
依頼主である女性は銀時達と一言二言交わした後、さっそく本題へと入る。


「前にィ〜あんたに助けてもらったみたいなことをォ〜パパに聞いてェ?それで頼みたいことがあって来たんだけどォ〜?」


依頼主の女性…というのは、以前この依頼主の父からの依頼で助け出したハム子だった。
ハム子の言葉に銀時は首をかしげる。


「覚えてねェなァ……ああ、あれですか?しゃぶしゃぶにされそうになってるところを助けたとかァ?なんかそんなんですか?」

「ちょっとマジムカつくんだけど〜!ありえないじゃん!そんなん!」

「そうですよね、しゃぶしゃぶは牛ですもんね。じゃあ何ですか?ポークビッツか?ポークビッツなら満足かコノヤロー」

「なんの話してんだよあんた…」


銀時は本当に覚えていないのか、覚えているが覚えてないフリをしているのかはわからないが、覚えてないと言い切るその態度にハム子はイラッと来た。
雪も適当な態度の銀時にせっかく来た仕事がパーになると銀時の耳にこっそりと耳打ちする。


「もう…本当に覚えてないんですか?あれですよ…ほら、春雨とやり合った時の…」

「えー?全然聞こえないんだけどー…雪、もうちょい近くに寄って耳打ちしてくれね?」

「はあ?けっこう近いですけど…」

「ぜーんぜん近くないな〜…ほら、銀さん最近耳掃除してないじゃん?雪ちゃんのお膝で耳かきしてもらってなかったじゃん?だからさ、耳の垢が溜まって耳が聞こえにくくなってんだよね〜」

「いや、最近耳かきしてもらってっていうか、そんなセクハラサービスしたことないんですけど…だから!春雨が撒いた麻薬に手を出したハム子さんですってば!!」

「豚からハムに変わっただけじゃねェかよ!!っていうか人の前でイチャイチャすんのやめてもらえる!?鬱陶しいんだけど!!」


雪から近くに寄ってきてくれるのが嬉しくてデレデレと鼻の下をだらしなく伸ばす。
それに気づかず銀時の言葉に怪訝とさせる雪に銀時はちゃっかり腰を回し密着させた。
そこでようやく銀時の罠だと知り、雪はむすっとさせた後わざと耳元で大声を出す。
それには流石に銀時も応えたようで雪から身を離し雪側の耳に指を突っ込んだ。
これらははたから見ればいちゃつきにしか見えないのか依頼人のハム子は突っ込みを入れる。


「もうマジありえないんだけど!頼りになるって聞いたから仕事をもってきたのにただのムカつく奴じゃん!!」

「お前もな」

「何ォォォ!?」

「こ、こら!神楽ちゃん!めっ!―――す、すいません!あの…ハム子さんの方はその後どうなったんですか?」

「…あんたフォローにまわってるみたいだけどハム子じゃないから!公子だから!!」


毒を吐く銀時達にハム子も苛立ちを隠さないまま吐いた。
それをまた神楽がぽつりと毒を吐き、娘を叱るように雪が咎めたが、ハム子の名前を間違え、もちろん雪もまたハム子を苛立たせる。
ハム子ハム子と銀時達はそう思っていたが実はハム子ではなく公子だというのが判明した。
が、公子を助けるために公子の父から依頼されたときも父からはちゃんと公子と教えてもらっていたのだ。
多分ハム子とインプットされてしまったのは、正直見た目と銀時がハムハム言っていたからだろう。
とりあえず怒りはおさめた公子は雪の問いに答えてやる。


「転生郷ならもうすっかりやめたよ。立ち直るのマジ大変でさァ〜いまだに通院してんの…もうガリガリ?」

「何がガリガリ?心が?」

「痛い目見たしもう懲りたの…でも今度は彼氏の方が?ヤバイ事になってて〜」

「ハム子さんあんた…!まだ幻覚見えてんじゃないですかっ!?」

「オメェら人を傷つけてそんなに楽しいか!!」


応えたのはいいが、痩せたと言った公子の体は助け出したときと同じように肉がついていた。
人間ちょっと肉がついていたほうが柔らかくて好ましいのだが…公子はちょっぴりやりすぎだった。
それをどこがガリガリ、と突っ込む銀時をあえて無視し続ける公子に雪は本気で心配し、銀時に続いて雪からのボケなのかいじめなのかはわからないボケに思わず突っ込んだ。
苛立ちゲージをそのまま上らせたまま公子は続ける。


「まあ、ちょっとこれ見てほしんだけどォ〜」

「何ですか?」

「彼氏からのメールなんだけど〜」


そう言って公子はカバンから携帯を取り出し真正面にいる銀時に渡す。
公子は見てほしいメールの画面を表示したまま渡してくれたおかげでそのまま見ることができた。
そしてその内容というのは…


≪件名:マジヤバイ―――マジヤバイんだけどコレ マジヤバイよ どれぐらいヤバイかっていうとマジヤバイ≫

「あー、本当…やべえなこりゃ…俺たちより病院にいった方が…」

「頭じゃねェよ!!」


内容は、なんとも力が抜けるものだった。
ヤバイとマジを連呼するなんとも若者らしいメール内容だが、正直に言おう…これでは危機感が感じられなかった。
そのため銀時は焦ることも危機感を受け取ることもなく病院を進めた。


「実は私の彼氏転生郷の売人やってたんだけど〜…私が足洗ったのを機に一緒に真っ当に生きようってことになったの〜けど〜深いところまで関わりすぎてたらしくて〜?辞めさせてもらうどころか〜なんかァ組織の連中に?狙われだして?とにかく超ヤバイの〜それでアンタたちに力が借りたくて呼んだわけェ〜」


彼氏が彼氏なら彼女も彼女で、先ほどから語尾を伸ばしてしゃべる公子からも危機感が見えなかった。
が、公子の言葉を借りるのならばマジ超ヤバイらしく、今すぐ彼氏を助けてほしいと言ってきた。
神楽と雪は依頼主の頼みに銀時を見上げる。
銀時は二人の目線を受けながら面倒くさそうに携帯から依頼主の公子へと顔を上げた。





銀時は今、張り切ってコンテナの上を走っており、その後ろには依頼人の公子と雪と神楽がいた。
結局、銀時は公子の依頼を受けた。
報酬が良かったのもあったが、何より愛しい隣人からの『かまっ娘倶楽部』という呟きによって銀時は二つ返事で受けた。
雪がポツリとつぶやいた瞬間あの魚の死んだような眼が一気に輝きだし『もちろん受けますとも!!この万事屋銀ちゃんにできない仕事はございません!!!今後ともご贔屓に!!』と言いながら立ち上がり困惑する公子の手を無理やり取って握手を交わした。
そんな銀時を神楽は若干憐れんだ目で見つめ、雪はにこにこ顔を張り付かせながら『まあそれでもかまっ娘倶楽部には行ってもらうけどね』と心の中で囁いた。
公子の案内で麻薬の取引場所へと急いで向かうと、少し離れた場所で騒ぐ声が聞こえ銀時は足を速める。
ついた先にはやはり公子の彼氏である太助がいた。
太助は組織だと思われる天人に囲まれ、大釜を持つ天人に脅されている様子だった。
それを見て銀時は作戦会議をした後その辺にあったロープを腰に巻き付けコンテナの上からダイブし、そのまま木刀で大釜を持っている天人を叩き倒す。


「な、なんだテメエは!?」

「なんだチミはってか?そうです私が―――」

「太助ェェ!!」

「―――ぐはっ!」


突然現れた銀時に天人達は騒然とする。
せっかくかっこよく(?)決めた銀時だったが、その上を大きな巨体…もとい、公子が踏みつけ、公子は銀時をクッションに彼氏である太助のもとへと駆け寄る。
雪はクッションにされて潰れた銀時を見て『ああもう…かまっ娘倶楽部に行けなくなったらどうしてくれるんだ』と小さくつぶやいた。
その呟きを偶然にも聞いてしまった娘役である神楽は雪からそっと目をそらし雪のキャラが崩壊するほどに坂田家の財政はやばいのだと察し、同時に生贄である銀時を助け出せない自分の無力さをうら…みはしないが銀時に同情はした。


「公子!!」

「太助!もう大丈夫!万事屋連れてきたから!!あいつら金払えば何でもやってくれんの!」

「いや、何でもやるっつーかもう何にもやれそうにねェぞ!大丈夫なのか!?」


潰れて倒れている銀時を指さす公子に太助は頼りないと言わんばかりに突っ込んだ。
そんな太助の不安そうな視線などよそに銀時はのそりと起き上がる。


「邪魔しやがって…おい!作戦変更だ!!連中を残して戦線離脱するぞ!」

「あいあいさー!」


重石が突然降ってきたような衝撃で体のあちこちが痛く、それに耐えながらコンテナの上にいる雪と神楽に作戦変更を述べる。
その指示に神楽と雪は持っていたロープに力を入れ、主に神楽の力で成人男性である銀時の回収を行う。
それに気づき少しずつコンテナの上へと離脱していこうとする銀時に公子が駆け寄った。


「あッ!!てめェ!!何一人で逃げてんの!?」

「悪いが豚二匹しょって逃げる作戦なんざ用意しちゃいねェ!!」

「はあああ!?ふざけんな!!パフェ何杯食わせてやったと思ってんだよ!!キッチリ働けや!!」


一人だけ逃げようとする銀時に公子はすかさず飛び上がって釣られている銀時の足にしがみつく。
それに続き逃げたい一心の太助までもが公子がしがみつく反対側の足に飛びつき、豚と評する太った人間二人の体重が思いっきり銀時の腹にかかる。
二人の体重の重さがじりじりと銀時の撒かれているロープにかかり、銀時は思いっきり苦し気な声を漏らしてしまう。


「ふぐおおお!!はっ、腹が!!腹がしめつけられ…ぐへェっ!や、やばいってこれ!出るってこれ!!なんか内臓的なものが出るってこれエエエ!!」

「え!?内臓的なもの!?いやだヨそんな銀ちゃん!!四六時中そんなの出てたら気を使うヨ!!関係ギクシャクしてしまうヨ!!」

「出るわけねェだろそんなもん!!」

「雪!!縄お願いアル」

「ええええ!!?ちょっと神楽ちゃん!!?ってぎゃーー!!重い重い!!やばいってこれ!!重すぎだってこれ!!何人分なのこれエエエ!!!」


銀時の内臓の危機に神楽はロープを雪に預け銀時を救いにコンテナから降りる。
夜兎族である神楽のおかげで一般人よりちょっと強い程度の雪でもロープを引っ張っていられたのだが、夜兎族が戦線離脱してしまいその重さは雪に全て降りかかる。
一応雪も力いっぱい踏ん張っているのだが豚二匹と成人男性一人と少女一人の体重を支えきれず少しずつ前へ進んでしまっている。
やばいやばいと叫ぶ雪をよそに神楽はこれからかまっ娘倶楽部へ生贄として送られる銀時のため必死に豚二匹を落とそうと公子の顔を蹴り始める。
これは神楽なりの生贄を止められないせめてもの償いなのかもしれない。


「ハム子オオオ!!!銀ちゃんから手を離すヨロシ!このままじゃ銀ちゃんの内臓がアアア!!!」

「ちょっ!何すんの!?マジムカつくんだけどこの小娘!!」

「っていうかテメェも降り…あ゙っ!!出た!!ケツからなんか出たぞコレ!!ちょっと雪!!おい雪!!お前ちょっと見てくれコレ!なんか出てない!?俺!?」

「知るかアア!!今こっちはそれどころじゃないんだよオオオ!!!もうお前ら全員降りろオオオ!!!―――ってあっ!もう、ダメ…っ!!」


が、神楽の償いは償いではなく…とどめだった。
自分にしがみ付く神楽の体重もプラスされただけの苦行にしかならず、銀時は必死に雪に助けを求める。
だが、助けてほしいのは何も銀時だけではなく、雪もだった。
万事屋の中で一番ひ弱な雪が命綱であろう縄を握っており、豚二匹だけで四人分の体重がかかるその重りを非力な少女の腕二本で支えろというのが無理な話で…結果、雪が耐えきれずロープが雪の手からすり落ちてしまった。
そのせいで銀時達は再びコンテナから落ちてしまう。
雪は痛む手のひらを気にもせず銀時達を落としてしまい顔から血の気をなくし青い顔をさせながら慌ててコンテナから銀時達を見下ろした。


「ご、ごめんなさい!―――あ、あの…銀さん!!やばいから早く逃げて…!!」


いくら銀時達が重いからと言って支えきれなかったことを謝りながら雪は銀時達に逃げるよう叫ぶ。
それを合図にコントを見守っていた天人達は一斉に倒れている銀時達に襲い掛かってきた。


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