(1 / 11) その後 (1)
あの後、真選組は情報を手に高杉一派が潜む港へと向かった。
だが一歩遅く、真選組がついた時にはすでに事が終わっていた。
どうやら高杉相手に何者かが介入したらしい。
それを土方は山崎に調べさせていた。


「ほう…桂と高杉がねえ…」


注文した昼食の上にマイマヨネーズを一本空になるまで上に乗せながら、土方は山崎の報告を聞く。
報告によればあの高杉とやりあったのは桂一派だという。
それを聞き何となく納得はいった。


「過激派だった桂の野郎も今ではすっかり穏健派になりかわりとかく暴走しがちな攘夷浪士達を抑えるブレーキ役となっていると聞きます…バリバリの武闘派である高杉一派とぶつかり合うのは目に見えていました……両陣営とも被害は莫大な模様で死者、行方不明者五十数名…あの人斬り似蔵も行方不明とか…これでしばらく奴らも動けないでしょう」

「…しかし解せねえ…岡田、河上ら猛者を擁する高杉に比べ桂は碌な手駒を持っていなかったはず…一体どうやって高杉達を互角にはり合ったってんだ?」


高杉と桂はまず攘夷浪士と聞いて上がる名前だ。
少し前までは桂も過激派として動いていたが、ある日を境に穏健派となり鳴りを潜めていた。
桂を追いかけているのは沖田である。
沖田も桂を追いかける際、やはりやり方がなまぬくなった事を気づいていた。
だから真選組からしたら高杉と桂がぶつかること自体そう不思議な事ではなくある程度予想は出来ていた。
予想が現実になっただけで驚きもない。
ただ、土方が一つ納得できないのが、手駒である。
高杉は岡田似蔵、河上万斉、来島また子、武市変平太という猛者を手駒として持ってはいるが、桂で上がる猛者はいない。
その差は大きく、桂は別として高杉達の計画を邪魔することが出来る部下がいるとは思わなかった。
それを疑問に零せば山崎が土方スペシャルを見ながら込み上がる吐き気を抑えながら続く。


「それなんですがね、気になる情報が……桂側に妙な連中が助っ人についていたらしくて…そいつが"妙なガキを連れた馬鹿強い白髪頭の侍"らしいんです…―――副長…こいつはもしかして…」

「………」


山崎がその言葉を聞いてまず思い浮かんだのが、目の前の上司のライバル的な位置についているあのモジャモジャ頭。
それは土方も同じことを思っていたのか少しの沈黙の後に『…野郎か』と不機嫌そうに目を細め零す。


「確か野郎は以前池田屋の一件の時も桂と関わっている風だったがうまい事逃げられたんだったな…洗うか」

「副長…」

「元々胡散臭ェ野郎だ…探れば何か出てくる奴だってのはお前も前から分かってんだろ…派手な動きもせなんだから捨て置いたが…潮時かもな…」

「…これでもし…旦那が攘夷活動に関わっていた場合は…」


土方の言葉に山崎の脳裏に一人の少女が浮かんだ。
自分と同じく地味仲間であるあの眼鏡の可愛い子。
16も歳が離れているが、周りの派手さに負ける地味さに共感できてあのお花見の時から仲良くしてもらっている。
土方のパシリでマヨネーズを買いに行くときも極たまにだが鉢合わせて山崎の心を癒してくれるのだ。
だからそんな少女が慕う男を真選組が怪しんでいると知られると悲しむかな、と思ってしまう。
それでも仕事は仕事と割り切って上司に報告している所を見ると自分は何だかんだ言って仕事人間なのだろう。
土方は山崎の言葉にタバコを出しマヨネーズライターで火をつけ、煙を吐き出す。


「んなもん決まってるだろ…穏健派だろうが過激派だろうが俺達の敵には違いねえ…―――斬れ」


山崎の言葉に、山崎は顔を引き攣らせた。


1 / 11
× | back |
しおりを挟む