爆発音と天人の部下の叫び声をBGMに銀時は天人と対峙していた。
「てめえら終わったな…完全に"春雨"を敵に回したぞ…今に宇宙中に散らばる"春雨"がてめーらを殺しにくるだろう」
「知るかよ…終わんのはてめーだ。」
天人がよく言う『春雨』とは何かなど雪には分からない。
しかし聞く限り天人はその『春雨』の一員のようで、自分たちはもう『春雨』に目を付けられたようだった。
まだ『春雨』の恐ろしさが分からないからかもしれないが、雪は銀時と一緒なら…銀時と神楽が一緒なら怖くないと思った。
今だって神楽や銀時がいるから怖くない。
あれほど啖呵を切っていた勢いも収まりつつあった。
「いいか、てめえらが宇宙のどこで何しようと構わねえ…だが俺のこの剣、こいつが届く範囲は俺の国だ。」
銀時は木刀を抜き、天人に向けた。
雪はふと銀時と目が合った。
何も言葉を交わしていない。
しかし銀時が何が言いたいのかがわかり、雪は立ち上がり走って神楽の隣に座った。
銀時は2人を守るように構える。
「無粋に入ってきて俺のモンに触れる奴ぁ将軍だろーが宇宙海賊だろーが!隕石だろーが!!ブッた斬る!!」
言い終えたのを合図に2人は一斉に動いた。
勝負は一瞬だった。
一度剣を交わし、お互い背を向けたまま固まる。
雪は息を呑んだ。
銀時が負けるはずがないのはわかるが、思わず祈ってしまう。
そして…
「オイ…てめえ…便所で手ぇ洗わねえわりに……、…結構…キレイじゃ、ねえか…」
勝負は銀時が勝った。
雪は銀時が立っていることに安堵の息をついた。
信用していないというわけではないというのは言い訳でしかならないが、大切な人が傷つくのを見ているのはつらかった。
神楽も、銀時も…
「あ!神楽ちゃん!」
「なにヨ」
そう思っていると神楽の事を思い出し、雪は突然声を上げた。
突然声を上げた雪に神楽も銀時も驚き、銀時を見て喜んでいた神楽はビクッとさせ雪を怪訝そうに見つめ、銀時は背を向けていたが振り返る。
もう銀時の表情はいつものダメな銀時に戻っていた。
それも今ではどうでもいい雪はキッと神楽を睨むように見る。
雪に睨まれることはしていない神楽は何故か怒られ心外だと焦りながらムッとさせ『何アルか!』と負けじと睨む。
すると睨む神楽など余所に雪は神楽に顔を近づけ、神楽は反射的に目をつぶった。
そして…
「めっ!」
、とコツンと自分の額に神楽の額をくっつけて神楽を叱る。
「……………は?」
神楽の反応はこれであるが、正直正しいといえよう。
その証拠に銀時も神楽同様きょとんとしていた。
そんな2人など気にもせず雪はぐりぐりと額を擦りつけた。
「な、なにするネ!!痛いネ!!」
「当たり前でしょ!痛くしてるんだから!!まったくあんな無茶をして!!」
「あんなって…?」
「飛び降りようとしたこと!!」
「で、でもあれは仕方なかったアル…足手まといは…」
「バカ!!」
「…!」
痛い、と言っているも後ろに下がればいいのに神楽は雪からのグリグリ攻撃を受け続けていた。
銀時は止めようかと考えたが、本来なら避ける事ができるはずの神楽が『痛い』と言いながらも避けないのを見て、そして雪を見て止めるのをやめた。
神楽は雪の言葉に言い返そうとしたが、雪の叫びが遮り、そして顔を上げた雪の表情に言葉を呑んだ。
雪は泣いていたのだ。
「バカ!バカバカバカ!!神楽ちゃんのバカ!!!足手まといっていうなら私がそうじゃん!!この中で一番弱いの私じゃん!!!道場の娘なのに!姉上の妹なのに!!足手まといでもなんでも死ぬって言わないでよ!!足手まといって思わないでよ!!いつ私達が神楽ちゃんを足手まといって言ったわけ!?いつ私達が神楽ちゃんをそんな風に思わせたの!?私…神楽ちゃんが死ぬかもって思ったとき生きた心地しなかった!!海に飛び込もうとしたときどんな気持ちだったか…っ!!」
「雪…」
雪の大きな目から涙が零れ、雪の頬を濡らしていく。
その姿が神楽の目にはとても綺麗に映った。
どんなに綺麗だとみんなが褒める宝石よりも、どんなに綺麗だと褒め称える星空よりも…雪が綺麗だと思った。
神楽は雪の言葉がストンと入っていった。
神楽は戦闘部族である夜兎の一族。
雪は地球の人間。
『戦い』や『死』への考えが違うのかもしれなが、それでも神楽にとって雪の言葉はうれしかった。
ポロポロと泣く雪に銀時が歩み寄って肩を抱き、神楽は俯いていたが雪の胸にポスンと顔を埋めて抱き付いた。
手が使えないため抱きしめることはできないが、擦り寄ることはできる。
抱き付いてきた神楽に雪も涙が止まったのか『神楽ちゃん?』と涙声で神楽の名を呼ぶ。
それがまたくすぐったくてクスクスと笑ってしまった。
泣くのではなく笑う神楽に銀時は呆れた声を零す。
「おいおい…このシリアスムードの中笑うか?普通…」
「だって嬉しいアル!嬉しいときは笑うんだってマミーが言ってたヨ!!そんなことも知らないなんて銀ちゃん遅れてるアルな〜だからマダオなんだヨ」
「オイイ!マダオ関係ないだろ!?今ここでマダオ要素ゼロだろおが!!」
「あ゙ー雪のおっぱいはきもちいアルな〜」
「お、おま…!!人が心配してやってるっつーのに…てめ…!離れやがれ!!その場所は俺の場所だ!!」
「いやですぅー!!今からこの場所は私のモノですぅー!!!」
「おーれーのーだー!」
「わーたーしーのー!!」
シリアスもどこへやら吹っ飛んだのか恒例の雪のおっぱい争奪が始まった。
どういうわけ神楽は雪の巨乳が大のお気に入りでよく揉んでくるし顔を埋めてくる。
正直治したい。
女の子なのに女のおっぱいが好きな子には育てたくないし、もし神楽の両親が知ったら殺されるどころではない。
なんて言ったって神楽は戦闘民族、夜兎族なのだから。
まだ少女であれだけの力なのだから両親ともあればもっとすさまじいのだろうというのは考えなくてもわかる。
銀時はああは言っても神楽のように触ることはない。
まあそこは銀時も自分の年で神楽のような事をすればセクハラになるのを知っているからだろうが…大半の理由は雪の背後にいる姉の存在だろう。
雪は本気で姉が最凶なんじゃないかと思う。
「では俺がもらおう」
「え…――ひゃあっ!」
あれだけいいムードでシリアス全開だったのに…雪はとても遠い目をしていた。
普段はそろそろ終わってもいい頃なのに一向に終わりが来ない。
更にはそろそろ見せつけるように銀時を睨みながら擦り寄る神楽のお蔭で胸が痛くなってきた。
大きければ柔らかいとか、大きければ痛みがないだろ、とかそんなもの男の妄想である。
胸はあればあるほど重力がかかり揺れれば揺れるほど痛い…これが現実である。
遠い目をしてどう止めようかと思っていると銀時とは反対側の背後に聞き慣れた低い声が雪の耳に届いたのと同時に……むに、という音が雪の耳に届いた。
「ふむ…悪くない。」
下を見れば両脇から手を入れられ後ろから手が伸び胸が揉まれていた。
むにむに、と何度も何度も揉むその手は銀時の手ではなかった。
銀時は絶対自分の胸を揉むというセクハラはしないし、今銀時の手は雪の肩に置かれているはずである。
では、考えられるのは――…
「ヅ…ヅラアアア!てめえ!!何してんだ!!」
「ヅ、ヅラアアア!!お前雪から離れろオオオオ!!」
桂だった。
聞いたことのある低い声は桂の美声である。
ここで美声って…と思うが声優さんが声優さんなので誰がなんて言おうが美声なんですぅー。
雪は銀時と神楽の叫びで今自分の胸を揉んでいるのが桂だと知り顔をこれでもかと真っ赤にさせた。
銀時は木刀を手に桂を切りつけようとするも桂に難なく避けられた挙句に雪を奪われ、怒りで我を忘れてる(某姫姉様風)神楽は怒りをそのまま力に変え鉄製の手枷を壊し桂に襲い掛かる。
桂は笑いながら雪を横抱きにし2人から逃げるよう船の甲板を走り回った。
雪は恋人でもない男の人に胸を揉まれ半分泣いていた。
「おいヅラ!!お前の好みは人妻じゃなかったのか!?」
「だから雪くんがいいんじゃないか!雪くんは将来銀時の嫁になるのだろう?そう考えるとぐっとくる!」
「くる!、じゃねええよ!!!何ドヤ顔してんだ!!!何拳握って力説してんだ!!俺だってまだ雪の胸揉んでねえっつーのによオオオ!!」
「おお!そうであったか!!それはすまない事をした…では、どうぞ。」
「へあ!?」
神楽は怒りで鬼と化し、銀時は悔し涙を流していた。
桂はそれはもう楽しそうに笑っており、揉んだことがないという銀時の言葉に雪を差し出した。
突然立ち止まった桂に銀時も慌てて立ち止まり、桂が脇に手を入れて差し出す雪と桂を交互に見た、
「え…え?なに?え…?」
「揉んだことがないのだろう?では揉めばいい。そこにおっぱいがあるのだから」
「え…えー…それはちょっと…それは…ジャンプの主人公としてどうよ…」
「何を言う。行動すべてがスケベに繋がるラッキーボーイな主人公もいるではないか」
「それは…その…ラブコメ漫画の主人公であってさ…一応俺がしたらやばいわけよ…わかる?」
「さあな、俺はその辺の詳しいことは分からないな。さあ、銀時!今こそ男を見せよ!!」
「いや、見せよってお前…」
真顔で言う元同士は更に雪を差し出す桂に銀時は戸惑った。
その間でも銀時の目線は雪の豊満な胸に集中していた。
だから雪の表情には気づかなかったのだろう。
雪は羞恥から俯き顔を真っ赤に染め目も涙でぬれており体は恥ずかしさから震えていた。
もしこの時、銀時がこの雪を見ていたら止めれたはずである。
「揉まぬのか?雪くんの胸はそれはそれは柔らかくしかし弾力もあり暖かかったぞ?」
「…ッ」
止めてはいないが、まだ理性はあるのか銀時はぐっと何かを飲み込むように口をとざした。
そんな銀時に桂はやれやれとため息をつき雪を立たせる。
雪は解放されたのかとほっと胸を撫で下ろしたのだが…
「なるほど、服越しでは嫌、か…お前も案外ムッツリスケベなのだな」
「〜〜〜〜〜ッッ!!!」
あろうことか桂は雪の服に手を伸ばし、脱がそうとしていた。
それには流石の銀時も止めようとした。
しかし…
「てんめエエエエ!!何平然と乙女の服を脱がそうとしてやがんだこのロンゲオカマ爆弾魔野郎がアアアア!!!!」
「ぐほあアァァ!!!」
雪が突然桂の股間を蹴り上げたのだ。
背後にいた桂が雪の服を脱がそうとしたのだが、それにブチ切れた雪は神楽同様怒りで手枷を壊し足を後ろに蹴り、その足が丁度桂の股間に当たり、桂は吹き飛ばされた、ということである。
(え…エエエエエ!!?豹変したアアアア!!!)
あんなにも暴力ゴリラ女を姉に持ちつつも素直でいい子に育ったと涙を流すほど姉と違って真っ直ぐに育った雪が…あんなにも神楽と並ぶと母と子で銀さん超幸せだな〜と思っていたほど主婦力が女子力をはるかに上回っていた雪が……今、豹変した…………鬼に。
あまりのギャップに現実逃避する銀時は『お、お妙だ!お妙が憑依しやがった!!あのシスコン抜け目ねえ!!』と現実から目を逸らした。
神楽も雪の服を脱がそうとしているのに気付き鬼の形相で男2人を殴り飛ばそうとしたが雪の豹変に思わず鬼を引っ込めて立ち尽くした。
そんな2人を余所に雪はずんずんと怒りに任せたごとく足音を立て股間を抑え倒れる桂に歩み寄り髪を掴んで持ち上げる。
「おいてめぇ…黙って聞いてりゃいい気になりやがって!何が揉むだ?何が柔らかいだ!?何が弾力あるだぁ!?何が暖かかっただァア!!?ぶっ殺すぞゴラァ!!大体てめぇのせいでこうなんてんだろ!!お前がどうせ麻薬に感づいて嗅ぎまわってたから私と神楽ちゃんがてめえら攘夷志士と間違えられたんだろ!!お前が責任もてよ!この始末!!ああ!?どうなんだよ!!」
「し、しかしだな…よくよく聞けば俺が嗅ぎまわらなかったとしても雪くん達もいずれは捕まって…」
「うっせえよ!喋んなゴラ!おめえが喋んと減るんだよ!空気が!!おい、もういい。もう責任持てとかいわねえよ………とりあえずチ(ピー)コ切らせろ。」
「や、やめてー!!やめてあげてえええ!!!それだけはやめてあげてーー!!そいつが何をしたっていうんだよ雪ちゃんーー!」
「猥褻」
「ですよねー!だよねー!!でもさ!でも何もそいつだけが悪いってわけじゃないじゃん!?そいつだけが責任とれっていうの可笑しいじゃん!?」
「ああそうだな…じゃあ銀さん、てめえのチ(ピー)コも切らせろや」
「すみませんっしたアアアア!!ほんっとすみませんっした!!土下座で勘弁してくださいイイイイ!!」
男の叫びが空しくも沈みかけている空に響く。
桂はもう我慢の限界なのか気絶し、銀時が鬼の形相でその辺に転がっていた刀を握る雪に土下座をしている光景が広がっていた。
「……やっぱり雪はメガネでも姐御の妹ね」
とてもじゃないが少女が見てもいい光景ではない。
だがあまり物事に動じないであろう彼女は…やはり銀時同様現実を見ないようにうっすらと暗い空を見上げた。
(やっぱり雪は万事屋のマミーね!)
銀時の情けない声を耳にしながら…空を見上げる神楽の表情は何だか嬉しそうだった。
→あとがき
「てめえら終わったな…完全に"春雨"を敵に回したぞ…今に宇宙中に散らばる"春雨"がてめーらを殺しにくるだろう」
「知るかよ…終わんのはてめーだ。」
天人がよく言う『春雨』とは何かなど雪には分からない。
しかし聞く限り天人はその『春雨』の一員のようで、自分たちはもう『春雨』に目を付けられたようだった。
まだ『春雨』の恐ろしさが分からないからかもしれないが、雪は銀時と一緒なら…銀時と神楽が一緒なら怖くないと思った。
今だって神楽や銀時がいるから怖くない。
あれほど啖呵を切っていた勢いも収まりつつあった。
「いいか、てめえらが宇宙のどこで何しようと構わねえ…だが俺のこの剣、こいつが届く範囲は俺の国だ。」
銀時は木刀を抜き、天人に向けた。
雪はふと銀時と目が合った。
何も言葉を交わしていない。
しかし銀時が何が言いたいのかがわかり、雪は立ち上がり走って神楽の隣に座った。
銀時は2人を守るように構える。
「無粋に入ってきて俺のモンに触れる奴ぁ将軍だろーが宇宙海賊だろーが!隕石だろーが!!ブッた斬る!!」
言い終えたのを合図に2人は一斉に動いた。
勝負は一瞬だった。
一度剣を交わし、お互い背を向けたまま固まる。
雪は息を呑んだ。
銀時が負けるはずがないのはわかるが、思わず祈ってしまう。
そして…
「オイ…てめえ…便所で手ぇ洗わねえわりに……、…結構…キレイじゃ、ねえか…」
勝負は銀時が勝った。
雪は銀時が立っていることに安堵の息をついた。
信用していないというわけではないというのは言い訳でしかならないが、大切な人が傷つくのを見ているのはつらかった。
神楽も、銀時も…
「あ!神楽ちゃん!」
「なにヨ」
そう思っていると神楽の事を思い出し、雪は突然声を上げた。
突然声を上げた雪に神楽も銀時も驚き、銀時を見て喜んでいた神楽はビクッとさせ雪を怪訝そうに見つめ、銀時は背を向けていたが振り返る。
もう銀時の表情はいつものダメな銀時に戻っていた。
それも今ではどうでもいい雪はキッと神楽を睨むように見る。
雪に睨まれることはしていない神楽は何故か怒られ心外だと焦りながらムッとさせ『何アルか!』と負けじと睨む。
すると睨む神楽など余所に雪は神楽に顔を近づけ、神楽は反射的に目をつぶった。
そして…
「めっ!」
、とコツンと自分の額に神楽の額をくっつけて神楽を叱る。
「……………は?」
神楽の反応はこれであるが、正直正しいといえよう。
その証拠に銀時も神楽同様きょとんとしていた。
そんな2人など気にもせず雪はぐりぐりと額を擦りつけた。
「な、なにするネ!!痛いネ!!」
「当たり前でしょ!痛くしてるんだから!!まったくあんな無茶をして!!」
「あんなって…?」
「飛び降りようとしたこと!!」
「で、でもあれは仕方なかったアル…足手まといは…」
「バカ!!」
「…!」
痛い、と言っているも後ろに下がればいいのに神楽は雪からのグリグリ攻撃を受け続けていた。
銀時は止めようかと考えたが、本来なら避ける事ができるはずの神楽が『痛い』と言いながらも避けないのを見て、そして雪を見て止めるのをやめた。
神楽は雪の言葉に言い返そうとしたが、雪の叫びが遮り、そして顔を上げた雪の表情に言葉を呑んだ。
雪は泣いていたのだ。
「バカ!バカバカバカ!!神楽ちゃんのバカ!!!足手まといっていうなら私がそうじゃん!!この中で一番弱いの私じゃん!!!道場の娘なのに!姉上の妹なのに!!足手まといでもなんでも死ぬって言わないでよ!!足手まといって思わないでよ!!いつ私達が神楽ちゃんを足手まといって言ったわけ!?いつ私達が神楽ちゃんをそんな風に思わせたの!?私…神楽ちゃんが死ぬかもって思ったとき生きた心地しなかった!!海に飛び込もうとしたときどんな気持ちだったか…っ!!」
「雪…」
雪の大きな目から涙が零れ、雪の頬を濡らしていく。
その姿が神楽の目にはとても綺麗に映った。
どんなに綺麗だとみんなが褒める宝石よりも、どんなに綺麗だと褒め称える星空よりも…雪が綺麗だと思った。
神楽は雪の言葉がストンと入っていった。
神楽は戦闘部族である夜兎の一族。
雪は地球の人間。
『戦い』や『死』への考えが違うのかもしれなが、それでも神楽にとって雪の言葉はうれしかった。
ポロポロと泣く雪に銀時が歩み寄って肩を抱き、神楽は俯いていたが雪の胸にポスンと顔を埋めて抱き付いた。
手が使えないため抱きしめることはできないが、擦り寄ることはできる。
抱き付いてきた神楽に雪も涙が止まったのか『神楽ちゃん?』と涙声で神楽の名を呼ぶ。
それがまたくすぐったくてクスクスと笑ってしまった。
泣くのではなく笑う神楽に銀時は呆れた声を零す。
「おいおい…このシリアスムードの中笑うか?普通…」
「だって嬉しいアル!嬉しいときは笑うんだってマミーが言ってたヨ!!そんなことも知らないなんて銀ちゃん遅れてるアルな〜だからマダオなんだヨ」
「オイイ!マダオ関係ないだろ!?今ここでマダオ要素ゼロだろおが!!」
「あ゙ー雪のおっぱいはきもちいアルな〜」
「お、おま…!!人が心配してやってるっつーのに…てめ…!離れやがれ!!その場所は俺の場所だ!!」
「いやですぅー!!今からこの場所は私のモノですぅー!!!」
「おーれーのーだー!」
「わーたーしーのー!!」
シリアスもどこへやら吹っ飛んだのか恒例の雪のおっぱい争奪が始まった。
どういうわけ神楽は雪の巨乳が大のお気に入りでよく揉んでくるし顔を埋めてくる。
正直治したい。
女の子なのに女のおっぱいが好きな子には育てたくないし、もし神楽の両親が知ったら殺されるどころではない。
なんて言ったって神楽は戦闘民族、夜兎族なのだから。
まだ少女であれだけの力なのだから両親ともあればもっとすさまじいのだろうというのは考えなくてもわかる。
銀時はああは言っても神楽のように触ることはない。
まあそこは銀時も自分の年で神楽のような事をすればセクハラになるのを知っているからだろうが…大半の理由は雪の背後にいる姉の存在だろう。
雪は本気で姉が最凶なんじゃないかと思う。
「では俺がもらおう」
「え…――ひゃあっ!」
あれだけいいムードでシリアス全開だったのに…雪はとても遠い目をしていた。
普段はそろそろ終わってもいい頃なのに一向に終わりが来ない。
更にはそろそろ見せつけるように銀時を睨みながら擦り寄る神楽のお蔭で胸が痛くなってきた。
大きければ柔らかいとか、大きければ痛みがないだろ、とかそんなもの男の妄想である。
胸はあればあるほど重力がかかり揺れれば揺れるほど痛い…これが現実である。
遠い目をしてどう止めようかと思っていると銀時とは反対側の背後に聞き慣れた低い声が雪の耳に届いたのと同時に……むに、という音が雪の耳に届いた。
「ふむ…悪くない。」
下を見れば両脇から手を入れられ後ろから手が伸び胸が揉まれていた。
むにむに、と何度も何度も揉むその手は銀時の手ではなかった。
銀時は絶対自分の胸を揉むというセクハラはしないし、今銀時の手は雪の肩に置かれているはずである。
では、考えられるのは――…
「ヅ…ヅラアアア!てめえ!!何してんだ!!」
「ヅ、ヅラアアア!!お前雪から離れろオオオオ!!」
桂だった。
聞いたことのある低い声は桂の美声である。
ここで美声って…と思うが声優さんが声優さんなので誰がなんて言おうが美声なんですぅー。
雪は銀時と神楽の叫びで今自分の胸を揉んでいるのが桂だと知り顔をこれでもかと真っ赤にさせた。
銀時は木刀を手に桂を切りつけようとするも桂に難なく避けられた挙句に雪を奪われ、怒りで我を忘れてる(某姫姉様風)神楽は怒りをそのまま力に変え鉄製の手枷を壊し桂に襲い掛かる。
桂は笑いながら雪を横抱きにし2人から逃げるよう船の甲板を走り回った。
雪は恋人でもない男の人に胸を揉まれ半分泣いていた。
「おいヅラ!!お前の好みは人妻じゃなかったのか!?」
「だから雪くんがいいんじゃないか!雪くんは将来銀時の嫁になるのだろう?そう考えるとぐっとくる!」
「くる!、じゃねええよ!!!何ドヤ顔してんだ!!!何拳握って力説してんだ!!俺だってまだ雪の胸揉んでねえっつーのによオオオ!!」
「おお!そうであったか!!それはすまない事をした…では、どうぞ。」
「へあ!?」
神楽は怒りで鬼と化し、銀時は悔し涙を流していた。
桂はそれはもう楽しそうに笑っており、揉んだことがないという銀時の言葉に雪を差し出した。
突然立ち止まった桂に銀時も慌てて立ち止まり、桂が脇に手を入れて差し出す雪と桂を交互に見た、
「え…え?なに?え…?」
「揉んだことがないのだろう?では揉めばいい。そこにおっぱいがあるのだから」
「え…えー…それはちょっと…それは…ジャンプの主人公としてどうよ…」
「何を言う。行動すべてがスケベに繋がるラッキーボーイな主人公もいるではないか」
「それは…その…ラブコメ漫画の主人公であってさ…一応俺がしたらやばいわけよ…わかる?」
「さあな、俺はその辺の詳しいことは分からないな。さあ、銀時!今こそ男を見せよ!!」
「いや、見せよってお前…」
真顔で言う元同士は更に雪を差し出す桂に銀時は戸惑った。
その間でも銀時の目線は雪の豊満な胸に集中していた。
だから雪の表情には気づかなかったのだろう。
雪は羞恥から俯き顔を真っ赤に染め目も涙でぬれており体は恥ずかしさから震えていた。
もしこの時、銀時がこの雪を見ていたら止めれたはずである。
「揉まぬのか?雪くんの胸はそれはそれは柔らかくしかし弾力もあり暖かかったぞ?」
「…ッ」
止めてはいないが、まだ理性はあるのか銀時はぐっと何かを飲み込むように口をとざした。
そんな銀時に桂はやれやれとため息をつき雪を立たせる。
雪は解放されたのかとほっと胸を撫で下ろしたのだが…
「なるほど、服越しでは嫌、か…お前も案外ムッツリスケベなのだな」
「〜〜〜〜〜ッッ!!!」
あろうことか桂は雪の服に手を伸ばし、脱がそうとしていた。
それには流石の銀時も止めようとした。
しかし…
「てんめエエエエ!!何平然と乙女の服を脱がそうとしてやがんだこのロンゲオカマ爆弾魔野郎がアアアア!!!!」
「ぐほあアァァ!!!」
雪が突然桂の股間を蹴り上げたのだ。
背後にいた桂が雪の服を脱がそうとしたのだが、それにブチ切れた雪は神楽同様怒りで手枷を壊し足を後ろに蹴り、その足が丁度桂の股間に当たり、桂は吹き飛ばされた、ということである。
(え…エエエエエ!!?豹変したアアアア!!!)
あんなにも暴力ゴリラ女を姉に持ちつつも素直でいい子に育ったと涙を流すほど姉と違って真っ直ぐに育った雪が…あんなにも神楽と並ぶと母と子で銀さん超幸せだな〜と思っていたほど主婦力が女子力をはるかに上回っていた雪が……今、豹変した…………鬼に。
あまりのギャップに現実逃避する銀時は『お、お妙だ!お妙が憑依しやがった!!あのシスコン抜け目ねえ!!』と現実から目を逸らした。
神楽も雪の服を脱がそうとしているのに気付き鬼の形相で男2人を殴り飛ばそうとしたが雪の豹変に思わず鬼を引っ込めて立ち尽くした。
そんな2人を余所に雪はずんずんと怒りに任せたごとく足音を立て股間を抑え倒れる桂に歩み寄り髪を掴んで持ち上げる。
「おいてめぇ…黙って聞いてりゃいい気になりやがって!何が揉むだ?何が柔らかいだ!?何が弾力あるだぁ!?何が暖かかっただァア!!?ぶっ殺すぞゴラァ!!大体てめぇのせいでこうなんてんだろ!!お前がどうせ麻薬に感づいて嗅ぎまわってたから私と神楽ちゃんがてめえら攘夷志士と間違えられたんだろ!!お前が責任もてよ!この始末!!ああ!?どうなんだよ!!」
「し、しかしだな…よくよく聞けば俺が嗅ぎまわらなかったとしても雪くん達もいずれは捕まって…」
「うっせえよ!喋んなゴラ!おめえが喋んと減るんだよ!空気が!!おい、もういい。もう責任持てとかいわねえよ………とりあえずチ(ピー)コ切らせろ。」
「や、やめてー!!やめてあげてえええ!!!それだけはやめてあげてーー!!そいつが何をしたっていうんだよ雪ちゃんーー!」
「猥褻」
「ですよねー!だよねー!!でもさ!でも何もそいつだけが悪いってわけじゃないじゃん!?そいつだけが責任とれっていうの可笑しいじゃん!?」
「ああそうだな…じゃあ銀さん、てめえのチ(ピー)コも切らせろや」
「すみませんっしたアアアア!!ほんっとすみませんっした!!土下座で勘弁してくださいイイイイ!!」
男の叫びが空しくも沈みかけている空に響く。
桂はもう我慢の限界なのか気絶し、銀時が鬼の形相でその辺に転がっていた刀を握る雪に土下座をしている光景が広がっていた。
「……やっぱり雪はメガネでも姐御の妹ね」
とてもじゃないが少女が見てもいい光景ではない。
だがあまり物事に動じないであろう彼女は…やはり銀時同様現実を見ないようにうっすらと暗い空を見上げた。
(やっぱり雪は万事屋のマミーね!)
銀時の情けない声を耳にしながら…空を見上げる神楽の表情は何だか嬉しそうだった。
→あとがき
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