妙は今日ほど目の前の男を心底殺してやりたいと思ったことはなかった。
「…今、なんとおっしゃりました?」
妙の目の前には銀色のモジャモジャが頭を深々と下げており、その隣には可愛い妹も頭を下げていた。
妙は自分の声が低く聞こえた。
それは気のせいではなく、機嫌の悪さが声に出ていたのだろう。
銀時は動きもしないが、その隣にいる可愛い妹の肩がビクリと揺れ、様子を見守っていた神楽が妙を見た。
妙の問いに銀時が頭を上げないままもう一度答えた。
「俺たちの交際を認めてくれ」
「…………」
その言葉に妙はヒクリと口が引き攣り、顔から笑みが消えた。
更に不機嫌な空気を醸し出せばその部屋の温度はまた下がった。
「認めることはできません」
「っ、姉上!私は…」
「雪ちゃんは黙りなさい」
「姉上ッ!」
首を振る妙に雪は初めて顔を上げる。
あの後銀時と雪は付き合う事になった。
だがその前にまず姉に許可を得て付き合おうと銀時が言ったのだ。
別に許可なんか取る必要はなく、16歳とはいえ雪は一々家族の許可を得てお付き合いをするほどお子様でもない。
妙も銀時を嫌い、銀時も妙を嫌っているから一々妙の顔色を伺うのは嫌だ。
だが、それでも銀時は妙に認められて雪との交際をしたいと思った。
…いや、自分を嫌っているからこそ、銀時はその妙から認められて正式に付き合いたいのだろう。
だが予想していた通り妙は決して首を簡単に縦に振る女ではなかった。
特に目に入れても痛くないほど可愛がっている妹の事なら余計に。
雪は先ほどから駄目だ駄目だと言うばかりの姉に声を上げるも一言で黙らされた。
それでもなお食い下がろうとした雪の手を銀時が触れる。
銀時へ見れば、銀時は雪に首を振ってみせた。
それは雪は何も言うなという意味だろう。
この問題は雪もだが、何よりも妙と銀時の問題である。
2人の問題には雪も神楽も首を突っ込めないところがあってか、雪は口を噤んだ。
それを見て妙は不機嫌そうに目を細める。
「もうお帰りいただけませんか?ここに居座られても迷惑ですもの」
「……分かった」
「…!」
朝からずっと銀時と雪は妙の前で頭を下げ、許しを請いていた。
だが、銀時と雪がしつこければ、妙も頑固である。
すでに時計の針は昼を優に超えており、いい加減飽き飽きしたと妙の言葉に銀時は意外に頷く。
それを見て雪と神楽は目を丸くして銀時を見た。
『銀さん…』とまるで捨てられたように傷ついた目で見てくる雪に銀時はふと笑って見せ雪の頭を撫でた後、妙を見た。
「今日は帰る…だが、俺は雪との交際を認めてもらえるまで何度だってここに足を運ぶからな」
「お好きに」
銀時の言葉に雪は安堵する。
銀時は諦めてはおらず、ただ今日はこのままいてもらちが明かないという事で切り上げるだけのようである。
冷たく返す妙に銀時は『そうさせてもらうよ』と返し、立ち上がって神楽と共に志村家へ去っていこうとした。
雪は銀時達を玄関まで見送ろうとしたのだが、姉に名を呼ばれ止められてしまう。
代わりに妙が見送りに向かい、雪は一人残された部屋でただ俯き座っていた。
――玄関先まで見送った妙は靴を履く銀時と神楽に声をかける。
「今後一切雪ちゃんとの接触はしないでください」
「…俺は雪と恋仲になれるんならお前に頭だって下げるしある程度は言う事聞いてやるつもりでいる……だがな、んなもんまでお前に決められる筋合いはねェよ」
「あなた達は私の宝を奪う泥棒ですもの…立派な犯罪でしょう?別にあなたには命令される義理はないでしょうけど雪ちゃんにはあります…あの子が私のお願いを破るとでも?」
「…何をどう行動するかは雪の意志が決めるもんだ…いつまでも雪が自分だけの可愛い妹だと思ってんじゃねェ」
「その言葉、そっくりあなたにお返しします…あの子の心がいつまでもあなたに向けられるなんて考えないでください」
妙と銀時の会話を神楽は黙って聞いていた。
口を挟めないのだ。
いつもなら『私は雪の娘ネ』と言って乱入するだろうが、今回はそうはいかないのを分かっている。
雪の前だから大人しくしていた銀時と、雪の前だから笑顔を保っていが今は無表情の妙の睨みあいを見ながら神楽は当分雪に会えないであろう寂しさに傘を握る手を強くする。
「…今、なんとおっしゃりました?」
妙の目の前には銀色のモジャモジャが頭を深々と下げており、その隣には可愛い妹も頭を下げていた。
妙は自分の声が低く聞こえた。
それは気のせいではなく、機嫌の悪さが声に出ていたのだろう。
銀時は動きもしないが、その隣にいる可愛い妹の肩がビクリと揺れ、様子を見守っていた神楽が妙を見た。
妙の問いに銀時が頭を上げないままもう一度答えた。
「俺たちの交際を認めてくれ」
「…………」
その言葉に妙はヒクリと口が引き攣り、顔から笑みが消えた。
更に不機嫌な空気を醸し出せばその部屋の温度はまた下がった。
「認めることはできません」
「っ、姉上!私は…」
「雪ちゃんは黙りなさい」
「姉上ッ!」
首を振る妙に雪は初めて顔を上げる。
あの後銀時と雪は付き合う事になった。
だがその前にまず姉に許可を得て付き合おうと銀時が言ったのだ。
別に許可なんか取る必要はなく、16歳とはいえ雪は一々家族の許可を得てお付き合いをするほどお子様でもない。
妙も銀時を嫌い、銀時も妙を嫌っているから一々妙の顔色を伺うのは嫌だ。
だが、それでも銀時は妙に認められて雪との交際をしたいと思った。
…いや、自分を嫌っているからこそ、銀時はその妙から認められて正式に付き合いたいのだろう。
だが予想していた通り妙は決して首を簡単に縦に振る女ではなかった。
特に目に入れても痛くないほど可愛がっている妹の事なら余計に。
雪は先ほどから駄目だ駄目だと言うばかりの姉に声を上げるも一言で黙らされた。
それでもなお食い下がろうとした雪の手を銀時が触れる。
銀時へ見れば、銀時は雪に首を振ってみせた。
それは雪は何も言うなという意味だろう。
この問題は雪もだが、何よりも妙と銀時の問題である。
2人の問題には雪も神楽も首を突っ込めないところがあってか、雪は口を噤んだ。
それを見て妙は不機嫌そうに目を細める。
「もうお帰りいただけませんか?ここに居座られても迷惑ですもの」
「……分かった」
「…!」
朝からずっと銀時と雪は妙の前で頭を下げ、許しを請いていた。
だが、銀時と雪がしつこければ、妙も頑固である。
すでに時計の針は昼を優に超えており、いい加減飽き飽きしたと妙の言葉に銀時は意外に頷く。
それを見て雪と神楽は目を丸くして銀時を見た。
『銀さん…』とまるで捨てられたように傷ついた目で見てくる雪に銀時はふと笑って見せ雪の頭を撫でた後、妙を見た。
「今日は帰る…だが、俺は雪との交際を認めてもらえるまで何度だってここに足を運ぶからな」
「お好きに」
銀時の言葉に雪は安堵する。
銀時は諦めてはおらず、ただ今日はこのままいてもらちが明かないという事で切り上げるだけのようである。
冷たく返す妙に銀時は『そうさせてもらうよ』と返し、立ち上がって神楽と共に志村家へ去っていこうとした。
雪は銀時達を玄関まで見送ろうとしたのだが、姉に名を呼ばれ止められてしまう。
代わりに妙が見送りに向かい、雪は一人残された部屋でただ俯き座っていた。
――玄関先まで見送った妙は靴を履く銀時と神楽に声をかける。
「今後一切雪ちゃんとの接触はしないでください」
「…俺は雪と恋仲になれるんならお前に頭だって下げるしある程度は言う事聞いてやるつもりでいる……だがな、んなもんまでお前に決められる筋合いはねェよ」
「あなた達は私の宝を奪う泥棒ですもの…立派な犯罪でしょう?別にあなたには命令される義理はないでしょうけど雪ちゃんにはあります…あの子が私のお願いを破るとでも?」
「…何をどう行動するかは雪の意志が決めるもんだ…いつまでも雪が自分だけの可愛い妹だと思ってんじゃねェ」
「その言葉、そっくりあなたにお返しします…あの子の心がいつまでもあなたに向けられるなんて考えないでください」
妙と銀時の会話を神楽は黙って聞いていた。
口を挟めないのだ。
いつもなら『私は雪の娘ネ』と言って乱入するだろうが、今回はそうはいかないのを分かっている。
雪の前だから大人しくしていた銀時と、雪の前だから笑顔を保っていが今は無表情の妙の睨みあいを見ながら神楽は当分雪に会えないであろう寂しさに傘を握る手を強くする。
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