妙は王女の顔面を蹴りつけ、その勢いで吹き飛んだ王女に近藤は巻き込まれ気絶する。
それを見て鷹臣は久々に声を出して笑った。
「何笑ってやがんだ」
「あてっ」
ゲラゲラと腹を抱えて笑う鷹臣の後頭部に誰かがチョップをした。
対して痛くはないが反射的にそう言ってしまい、頭に手をやりながら後ろを見る。
そこにはトイレに行っていた銀時が立っていた。
相変わらず死んだ魚の目をしており、憎悪など一切ない。
「何するのかなー、もう」
「何するもなにも…てめェなにとんでもねえことしでかしてくれてんだ」
「なにが?」
「あのメスゴリラの事だゴラ…めんどくせえことしやがって…どうすんだ、これ」
「別にいいじゃん、兄上が助かったんだし…まあ後はとっつぁんがどうにかするからいいでしょ」
「助かっておま…あれ助かって言っていいの?」
そう言いながら近藤を見た。
近藤はゴリラの衝突で気を失っており、うつ伏せで床に倒れたままだった。
鷹臣としてはゴリラが義姉にならなければ兄がどうなっていようとどうでもいいようだ。
それほど今回の件は鷹臣の怒りを買っていた、ということになる。
鷹臣がここまで誰かに執着を持つところをはじめて見た銀時はジッと鷹臣の背を見る。
その視線に気づいたらしい鷹臣は銀時に振り返り、凝視していた銀時は鷹臣が振り返りギクリとさせる。
「なに?」
「あー…いや……」
凝視していたのがバレ、銀時はどう言い訳しようと悩んでいた。
じっと見つめる鷹臣に気まずく思っていると鷹臣を呼ぶ少女の声がし、銀時、そして呼ばれた鷹臣もその声の方へ顔を向ける。
「鷹臣さま〜〜!」
2人が見た方には、おさきが終に守られながらこちらに向かって走っているところだった。
おさきの姿を見て鷹臣はふと笑みを浮かべ、椅子から立ち上がる。
微笑みを浮かべる鷹臣の横顔を銀時はじっと見つめていたのだが、ふと視線を感じその視線の元となる人物を見る。
その人物とは、鷹臣に駆け付けようとしたおさきだった。
おさきは殺さんばかりに銀時を睨みつけおり、銀時は見知らぬ少女にそんな鋭い視線を貰うような事などしたことがないと怪訝とさせた。
「鷹臣さま!なぜこんなのと一緒にいるんですか!!」
第一声がこれである。
銀時は『こんなのってどういう意味だゴラ』と思ったが、むすっとさせるおさきに鷹臣は頭を撫でる。
するとギロリと銀時を睨んでいたおさきの目が和らぎ、戸惑いの表情へと変わった。
「女の子がそんな顔しちゃ駄目だよ、おさき」
「でも…」
「俺は笑ってるおさきが好きだな」
「………」
そう鷹臣が言えば渋っていたおさきは観念したらしく、鷹臣に抱き着き胸元に顔を埋める。
そんな拗ね方をするおさきを鷹臣は愛おし気に見つめ、優しく頭を撫でてあげた。
それを銀時は複雑そうな目で見つめる。
幼い頃鷹臣と過ごしてきたが、松陽以外にこんな穏やかに笑う鷹臣を見たことがなかったし、何より鷹臣が誰かに、何かに、愛おし気に接すること自体見たことがなかった。
昔の鷹臣と今の鷹臣…銀時は明らかな違いに戸惑いが隠せなかった。
そんな銀時をよそに鷹臣は2人のやり取りを温かく見守っていた終へ目をやる。
「終、おさきを守ってくれてありがとう」
『俺もおさきを妹みたいに可愛いからね、守って当然だよ』
終のノートに書かれている文字に鷹臣は嬉しそうに『そう』と笑みを浮かべた。
「さて、そろそろお暇しよう…君も逃げなくていいの?」
「は?」
「だって、お雪さんたち逃げてるよ」
「げっ!!あんのシスコン!俺だけ置いていく気か…!!」
そういう鷹臣が指さした方へ目をやれば妙が雪と神楽の手引っ張って出口へ向かおうとしているのが見えた。
それを見て銀時は慌てて追いかけ、銀時を見送った後、終は『俺はみんなを手伝ってくるからタッキーとおさきは先に帰ってていいよ』とノートを掲げながらゴリラに向かっていく。
ゴリラへ向かっていく終へおさきは鷹臣に抱き着きながら手を振って見送った。
「じゃあおれ達はお言葉に甘えて帰ろうか」
「でもいいんですか?」
「いいんじゃない?兄上も十四郎さんも総君も逃げたみたいだし」
おさきは鷹臣の言葉に周りを見渡せば近藤達の姿がないのに気付く。
どうやら妙達が逃げるのを便乗して3人も逃げたのだろう。
鷹臣はおさきの手を取って堂々と開け放たれている道を歩く。
「鷹臣さま」
「ん?」
「私…あの人、嫌いです…」
妙のために開けた道を歩いていると俯いていたおさきがぽつりと呟く。
おさきの言う『あの人』とは、銀時の事だろう。
鷹臣はそれに対し、
「ああ、そう」
そう返しただけだった。
おさきが銀時を含めた鷹臣のかつての幼馴染達を嫌っているのは知っているから今更驚きもない。
ただ鷹臣にとっておさきが銀時達を嫌おうが憎もうがどうでもよかった。
人間とは、全ての他人を好く者はいないというのが鷹臣の認識であり、無理矢理仲良くなることもないというのも鷹臣の考えである。
おさきがそれでも笑っていられるのなら、誰を嫌おうが鷹臣には関係ない話であった。
それに、どうせおさきを置いて行かなければならないのだ…そこまで深く情を抱くこともない、と鷹臣は思う。
「あの…お名前だけでも…」
後ろの野生の声や男の雄たけびやらをBGMに鷹臣は『いつかおさきも結婚するのかァ〜その時泣かないでいられるかな…』と思っていると受付の女性の声がふと聞こえた。
そちらへ目をやれば見知った二人の姿が見え、その人はご祝儀を渡していた。
「気持ちだけ渡しにきた」
「でも…こんなにたくさんご祝儀…」
その人物とは、雪を攫った柳生九兵衛と、その護衛兼教育係りを任されている東城歩だった。
鷹臣は戸惑う受付の女性の元へ…正確に言えば九兵衛の元へ向かう。
「あれ…君…」
九兵衛は男が苦手だから触れず、声をかける。
鷹臣の姿に九兵衛は振り返り、東城は鷹臣に礼をする。
そんな東城に手を上げて軽く挨拶した後鷹臣は九兵衛の持って来たご祝儀を見る。
「あらまあ…こんなにご祝儀持ってきちゃって…いいの?兄上とゴリラの結婚式もう壊れてるけど」
「いいんだ…色々迷惑かけたし」
鷹臣は会場へ振り返る。
もはやそこは会場ではなく、乱闘場だった。
鷹臣の言葉に九兵衛は首を振る。
「それに…見たかったものもようやく見れたしな」
そう零す九兵衛の表情は笑っていた。
見たかったもの、というのはあの姉妹の本当の笑顔だろう。
ずっと柳生家にいた時は妙も雪も笑えていなかったのを九兵衛はずっと気にしていたのだ。
九兵衛のその笑みに鷹臣は目を細めた。
それを見て鷹臣は久々に声を出して笑った。
「何笑ってやがんだ」
「あてっ」
ゲラゲラと腹を抱えて笑う鷹臣の後頭部に誰かがチョップをした。
対して痛くはないが反射的にそう言ってしまい、頭に手をやりながら後ろを見る。
そこにはトイレに行っていた銀時が立っていた。
相変わらず死んだ魚の目をしており、憎悪など一切ない。
「何するのかなー、もう」
「何するもなにも…てめェなにとんでもねえことしでかしてくれてんだ」
「なにが?」
「あのメスゴリラの事だゴラ…めんどくせえことしやがって…どうすんだ、これ」
「別にいいじゃん、兄上が助かったんだし…まあ後はとっつぁんがどうにかするからいいでしょ」
「助かっておま…あれ助かって言っていいの?」
そう言いながら近藤を見た。
近藤はゴリラの衝突で気を失っており、うつ伏せで床に倒れたままだった。
鷹臣としてはゴリラが義姉にならなければ兄がどうなっていようとどうでもいいようだ。
それほど今回の件は鷹臣の怒りを買っていた、ということになる。
鷹臣がここまで誰かに執着を持つところをはじめて見た銀時はジッと鷹臣の背を見る。
その視線に気づいたらしい鷹臣は銀時に振り返り、凝視していた銀時は鷹臣が振り返りギクリとさせる。
「なに?」
「あー…いや……」
凝視していたのがバレ、銀時はどう言い訳しようと悩んでいた。
じっと見つめる鷹臣に気まずく思っていると鷹臣を呼ぶ少女の声がし、銀時、そして呼ばれた鷹臣もその声の方へ顔を向ける。
「鷹臣さま〜〜!」
2人が見た方には、おさきが終に守られながらこちらに向かって走っているところだった。
おさきの姿を見て鷹臣はふと笑みを浮かべ、椅子から立ち上がる。
微笑みを浮かべる鷹臣の横顔を銀時はじっと見つめていたのだが、ふと視線を感じその視線の元となる人物を見る。
その人物とは、鷹臣に駆け付けようとしたおさきだった。
おさきは殺さんばかりに銀時を睨みつけおり、銀時は見知らぬ少女にそんな鋭い視線を貰うような事などしたことがないと怪訝とさせた。
「鷹臣さま!なぜこんなのと一緒にいるんですか!!」
第一声がこれである。
銀時は『こんなのってどういう意味だゴラ』と思ったが、むすっとさせるおさきに鷹臣は頭を撫でる。
するとギロリと銀時を睨んでいたおさきの目が和らぎ、戸惑いの表情へと変わった。
「女の子がそんな顔しちゃ駄目だよ、おさき」
「でも…」
「俺は笑ってるおさきが好きだな」
「………」
そう鷹臣が言えば渋っていたおさきは観念したらしく、鷹臣に抱き着き胸元に顔を埋める。
そんな拗ね方をするおさきを鷹臣は愛おし気に見つめ、優しく頭を撫でてあげた。
それを銀時は複雑そうな目で見つめる。
幼い頃鷹臣と過ごしてきたが、松陽以外にこんな穏やかに笑う鷹臣を見たことがなかったし、何より鷹臣が誰かに、何かに、愛おし気に接すること自体見たことがなかった。
昔の鷹臣と今の鷹臣…銀時は明らかな違いに戸惑いが隠せなかった。
そんな銀時をよそに鷹臣は2人のやり取りを温かく見守っていた終へ目をやる。
「終、おさきを守ってくれてありがとう」
『俺もおさきを妹みたいに可愛いからね、守って当然だよ』
終のノートに書かれている文字に鷹臣は嬉しそうに『そう』と笑みを浮かべた。
「さて、そろそろお暇しよう…君も逃げなくていいの?」
「は?」
「だって、お雪さんたち逃げてるよ」
「げっ!!あんのシスコン!俺だけ置いていく気か…!!」
そういう鷹臣が指さした方へ目をやれば妙が雪と神楽の手引っ張って出口へ向かおうとしているのが見えた。
それを見て銀時は慌てて追いかけ、銀時を見送った後、終は『俺はみんなを手伝ってくるからタッキーとおさきは先に帰ってていいよ』とノートを掲げながらゴリラに向かっていく。
ゴリラへ向かっていく終へおさきは鷹臣に抱き着きながら手を振って見送った。
「じゃあおれ達はお言葉に甘えて帰ろうか」
「でもいいんですか?」
「いいんじゃない?兄上も十四郎さんも総君も逃げたみたいだし」
おさきは鷹臣の言葉に周りを見渡せば近藤達の姿がないのに気付く。
どうやら妙達が逃げるのを便乗して3人も逃げたのだろう。
鷹臣はおさきの手を取って堂々と開け放たれている道を歩く。
「鷹臣さま」
「ん?」
「私…あの人、嫌いです…」
妙のために開けた道を歩いていると俯いていたおさきがぽつりと呟く。
おさきの言う『あの人』とは、銀時の事だろう。
鷹臣はそれに対し、
「ああ、そう」
そう返しただけだった。
おさきが銀時を含めた鷹臣のかつての幼馴染達を嫌っているのは知っているから今更驚きもない。
ただ鷹臣にとっておさきが銀時達を嫌おうが憎もうがどうでもよかった。
人間とは、全ての他人を好く者はいないというのが鷹臣の認識であり、無理矢理仲良くなることもないというのも鷹臣の考えである。
おさきがそれでも笑っていられるのなら、誰を嫌おうが鷹臣には関係ない話であった。
それに、どうせおさきを置いて行かなければならないのだ…そこまで深く情を抱くこともない、と鷹臣は思う。
「あの…お名前だけでも…」
後ろの野生の声や男の雄たけびやらをBGMに鷹臣は『いつかおさきも結婚するのかァ〜その時泣かないでいられるかな…』と思っていると受付の女性の声がふと聞こえた。
そちらへ目をやれば見知った二人の姿が見え、その人はご祝儀を渡していた。
「気持ちだけ渡しにきた」
「でも…こんなにたくさんご祝儀…」
その人物とは、雪を攫った柳生九兵衛と、その護衛兼教育係りを任されている東城歩だった。
鷹臣は戸惑う受付の女性の元へ…正確に言えば九兵衛の元へ向かう。
「あれ…君…」
九兵衛は男が苦手だから触れず、声をかける。
鷹臣の姿に九兵衛は振り返り、東城は鷹臣に礼をする。
そんな東城に手を上げて軽く挨拶した後鷹臣は九兵衛の持って来たご祝儀を見る。
「あらまあ…こんなにご祝儀持ってきちゃって…いいの?兄上とゴリラの結婚式もう壊れてるけど」
「いいんだ…色々迷惑かけたし」
鷹臣は会場へ振り返る。
もはやそこは会場ではなく、乱闘場だった。
鷹臣の言葉に九兵衛は首を振る。
「それに…見たかったものもようやく見れたしな」
そう零す九兵衛の表情は笑っていた。
見たかったもの、というのはあの姉妹の本当の笑顔だろう。
ずっと柳生家にいた時は妙も雪も笑えていなかったのを九兵衛はずっと気にしていたのだ。
九兵衛のその笑みに鷹臣は目を細めた。
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