(22 / 23) そういう時は黙って赤飯 (22)
(ええ!?ちょ、ま…ええええええ!!?ケーキ入刀だろこれ普通!!え!?バナナ入刀!?いやいやいやいや!!おかしいよこれ!!確かに共同作業だけれども!!ええええ!!?ちょ、とっつぁん!これ…!!)


新婦の方はヤルき満々なのか、ドサリとベッドに仰向けになる。
それでますますこのベッドの活用方法が読めてしまった。
いや、ベッドだから活用方法など一つなのだけれども…近藤は顔を青ざめガタガタと体を震わせ助けを求めるように片栗虎を見た。
片栗虎はもぐもぐとバナナを頬張りながら近藤に向かって…ぐっと親指を立てて見せた。
他の幹部達も必死に目を逸らしている。
事実上、近藤は見捨てられた。


(なんだその親指は!!やれってか!?やれっていうのか!?誰か!あの指折ってくれ!!)


そう願うが片栗虎にそんな事出来る唯一の人物は只今悪事を働く悪い大人にお仕置き中のためいない。


(ふざけるな!どこぞのマニアックなビデオじゃねえんだよ!!加藤鷹じゃねえんだよ!!加藤雀なんだよ俺みたいなもんは!!しかも全員ガン見じゃねえかアアア!!さっきまでバナナに夢中だったくせに今度は俺のバナナかァァ!?)


さっきまでゴリラ達はウッホウッホと美味しそうにバナナに夢中だったはずなのだが、今現在近藤のバナナを今か今かと待ち構えていた。
近藤は助けを求め雪を見た。
しかし…


「残りは持って帰っておやつにしようか、神楽ちゃん」

「やりー!私バナナジュース飲みたいネ!」

「じゃあ帰ったらミキサー出して早速作ろう」

(タッパーはいいから!!持ち帰らなくていいから!バナナ!!どこまで家庭的なんだ!君は!!)


雪は持ってきていたタッパーに何本もの皮を剥いたバナナを並べて入れていた。
その隣には神楽が大喜びしており、全くこっちを見ようともしない雪に近藤は突っ込んだ。
興味ありげに見ていた雪と神楽だったが、ケーキではない事を知るや否や興味を失くしたのだ。


(はっ!おさき…!そうだ!おさきなら…!!)


紅一点の少女に近藤は助けを求める。
さきほどから頼れる人が少女しかいないが、それはまあ仕方のない事だろう。
なんせ男連中はさきほどからトイレに行っていたり無心にバナナを食べていたりこっちを見ないようにしていたりと役に立たないのだから。
そう思っておさきを見た。
だが―――


「あれ…終兄さん?十四郎兄さん?なに?どうしたんですか?見えないんですけど…」

『見なくていいよ、あれは』

「おい、終…ちゃんと目隠ししろ…ったく、おさきになんてもん見せてんだあのゴリラ…近藤さんの妻じゃなきゃ切り捨ててるところだぞ」

(トシイイイイイ!!!てめエエエ!なにしてくれてんだアア!!!なに完全にゴリラが俺の妻になってるんのオオオ!?お前諦めたのか!!諦めたのかお前はアアア!!!)


おさきの目を隣にいた終が両手で塞いでいた。
頼りになる土方も諦めモードと化しており、突っ込みながらも誰も助けてくれない現状を嘆いていると待っていた王女が近藤の首根っこを掴み宙に投げる。
女性とはいえゴリラの腕力に敵わなかった近藤は簡単に宙に浮いた。
チラリと見れば王女が両腕を広げて待ち構えており、それを見て近藤も全てを諦めた。


(…お妙さん…鷹臣……最後に2人の笑顔を…もう1度見たかった)


やはり思う事は愛する女と愛する弟の事。
もはやゴリラの妻が出来ることは必須。
ならば最後に2人の輝かしい笑顔を見たかったと願った。
そんな近藤に―――一本の薙刀が飛んできた。


「―――ッ!!」


その薙刀はそのまま近藤の羽織の衿に刺さり、その勢いで近藤は壁に釣られたようにぶら下がっていた。
一体何が起こったのか…会場にいる全員も近藤も全く分からなかった。
だが扉が開かれ、そこに立っている人物に近藤は目を丸くさせる。
そこにいたのは…


「お、お妙さアアアアん!!」


雪の姉、妙がいた。
雪も姉の登場に驚きが隠せず、『姉上!?』と立ち上がって驚いていた。
真選組側は頼んでも全く首を縦に振らなかった妙の登場に皆大喜びしていた。


「ね、姐さん!!ついに…!ついに局長と夫婦になる決意を…―――ッ!!」


妙の登場は正しく恋人を取り戻しに来た女性、だった。
しかも真選組の喜びようにゴリラ達はすぐさま勘違いではなく本当に近藤を取り返しに来たと思いこんだ。
王女の式を邪魔され怒り狂うゴリラ達に気付いた真選組は決意した。


「もう構うもんか!!」

「いくぞてめえらアア!!真選組がゴリラ如きにヘコヘコしてられっかアア!!」

「俺達の局長の嫁は俺達が決める!!」

「「「守れエエ!!局長と姐さんの愛の道をオオオ!!」」」


妙の登場に真選組の士気は高まった。
もはや流れ的に妙は近藤の恋人であり、このままいけば近藤妙となる道一本しかない。
それに雪は困惑した。


「えっ!?ちょ…ええええ!?ど、どういうことオオオ!!?」


姉がなぜここにいるのか皆目見当もつかない雪は困惑し声を上げる。
神楽は愉快そうにバナナを食べて観客として傍観していた。
大暴れするゴリラ対真選組でもはや式どころではなく、やはり片栗虎の怒りに触れた。


「てめえらアアア!!何してるやがんだゴラアアア!!せっかく地球と猩猩星との仲を更に悪化させるつもりかゴルラアアア!!」


そう叫ぶ片栗虎だったが―――首筋に冷たいものが当たり、片栗虎は怒りで燃え上がっていた炎を一瞬にして鎮火させた。
その冷たいものは見なくても想像がついた。
そして背後から発せられる殺気の主も…


「やあクソジジイご機嫌麗しゅう…さて、あなたに選択肢を与えてあげよう…―――今すぐ胴と首が離婚するか、兄上の結婚を全力で阻止しよりを戻すか……どっちを取る?」

「た、鷹臣てめェ…仕事はどうした…」

「そんなの昨日で全部片したよ…甘いよ、とっつぁん…あんな仕事量で俺を兄上から遠ざけれるとでも?―――で、俺の質問に答えてないよねェ……どっちがいい?離婚か、よりを戻すか…俺としてはよりを戻すのをお勧めするよ?流石に知り合いを手に掛けたくないからね」


殺気の主、それは鷹臣だった。
鷹臣に最低でも一週間以上かかる仕事を与えたはずなのに、数日で帰ってきた。
片栗虎はクナイの刃が首に食い込むのを感じながら彼が与えた選択肢を選ぶ。
その選択肢とは…


「こ、近藤オオオ!!惚れた女がいるなら何故言わねエエ!!年寄りが余計な事しちまったぜ!!!幸せになりな!!」

「兄上〜ご無事ですか〜?」

(とっつぁん…!鷹臣…ッ!!)


片栗虎はよりを戻すのを決めた。
むしろ鷹臣に逆らうのをやめた。
妙の事は知っているのに今知りましたよと装いゴリラを倒す片栗虎と椅子に座り手を振る弟を見て近藤はジワリと涙が溢れる。


(帰りたい…!俺…っ!みんなの所へ帰りたい…っ!!)


近藤は自分のために猩猩星との仲が悪化するのも覚悟でゴリラと乱闘しているのを見て心底彼等のもとに帰りたいと願う。
諦めていた。
もう、彼等の隣にいられないと。
もう、ゴリラに囲まれバナナしか食べれないのだと。
だが彼等は自分のために必死になってくれている。
そんな彼等を目の前に諦めてしまうのは失礼だと近藤は涙を流し感激しながら思う。
すると真選組が開けた道を妙が雄たけびを上げながら駆け寄ってきた。
それに近藤は弾かれたように顔を上げる。


「お妙さん…っ!!」


妙がこちらに向かってきているのを見て近藤の顔が明るくなった。


「てんめェ!!何してくれてんだ!!私の―――」

(私の!?お、夫!?男!?旦那!?恋人!?)


妙の様子がまるで恋人を掻っ攫いに来た女性だった。
だから近藤は期待した。
あれだけ振られぶっさいくな女でも可愛く見えていても、やはり近藤が心の底から愛しているのは妙だった。
妙は目を吊り上げながらすごい勢いで駆け寄り…


「―――妹に何とんでもねえもん見せてくれとるんじゃアアア!!」


ゴリラを蹴り飛ばした。


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