(15 / 16) 少年はカブト虫を通して生命の尊さを知る (15)
銀時達は雪の悲鳴に駆けつけた。
駆けつければ崖の真ん前で雪が何故か立っていた。


「か、神楽ちゃーーん!?ちょ、なにやって…駄目だからー!それ駄目だからーっ!!」


崖の上に向かって叫ぶ雪に銀時は慌てて声を掛け、銀時達が来たことに気づいた雪は振り返る。
銀時達に振り返った雪の顔は真っ青になり今にも泣きだしそうな表情を浮かべていた。
雪の表情に不思議そうにしていた銀時達だったが、『あ、あれ!あれ見てください!!』と言いながら指差す雪に銀時達は視線を崖の上へとあげた。
雪が指差す方向…そこには――


「総悟ぉぉ!!?」

「神楽!?あれ!?何やってんの!?嫌な予感がするですけど…!!」


神楽と、単独行動をしていた沖田がいた。
銀時は沖田と睨みあう神楽に嫌な予感がビンビン立ち、沖田をどう牽制するかなどもう考えられなかった。
神楽は銀時達がいることも気づかず崖の上で沖田を睨みながら対峙し、沖田も神楽と対決する気満々なのか近藤の『お前何やってんだ!!』という声も届いていないようである。


「定春28号の仇討たせてもらうネ!お前に決闘を申し込む!!」

「来ると思ってたぜィ…この時のために、とっておきの上玉を用意した」

「望むところネ!!そっちこそ定春29号の恐ろしさ思い知ることになるネ!!」


雪と銀時の嫌な予感が当たった。
神楽と沖田はお互いにライバル視している。
その為か神楽は定春28号の仇をどうしても討ちたいと思っていた。
定春29号と名を付けられた瑠璃丸を手に入れた神楽は沖田を探し出し決闘を申し込んだらしい。
偶然見つけた雪が結果が見えすぎているそれに思わず悲鳴を上げた、という事である。
しかも沖田もやる気満々で神楽の申し出を受け入れてしまった。
『いざ尋常に勝負アル!!』と瑠璃丸を地面に置く神楽に雪はまたもや悲鳴を上げる。


「ちょっとーー!やっぱりカブト相撲やるつもりですよーー!!」

「神楽ァァ!!聞けーー!!そいつは将軍のペットだー!傷つけたらえらいことになるぞーー!!切腹もんだよ!切腹もん!!」


神楽はまだ定春29号が将軍のペットとは知らないが、雪達は知っている。
雪達は将軍のペットで相撲を取らせようとしている神楽に何とか定春29号は定春29号ではないことを伝えようとしていたが、まったく聞こえていないようで神楽はこちらを見向きもしない。


「トシ!!鷹臣ィィ!!」

「まあ待て、総悟が勝てば労せず瑠璃丸が手に入る。」

「そうですね、総くんも全て計算ずくであの子の話に乗ってると思いますし…まずは手荒なマネはしないでしょう…」

「ああ、そこまで馬鹿な奴じゃねぇだろ」


近藤が唯一沖田を止めれるであろう土方と鷹臣に振り返るも2人からは様子見だと言われてしまった。
どっちにしろ戦うしか選択肢はないようで、将軍のペットという事もあり焦りばかりが積もっていく。
しかし…


「凶悪肉食怪虫カブトーンキング、サド丸22号に勝てるかな?」


土方と鷹臣のフォローも空しく、沖田は超巨大カブトムシを呼び寄せた。
いつの間にそんなの飼ってたんだ、とか、肉食って何食うんだ、とか、何だその恐ろしげな名前は、とか、その出で立ち超こええんだけど!、とか、色々言いたいことはたくさんある。
だが今言えることは『そこまで馬鹿なんですけどーー!』だった。


「オイィィ!!ちょっと待てーー!お、お前!そんなもんで相撲とったら瑠璃丸がどうなると思ってんだ!!」

「粉々にしてやるぜィ」

「そう!粉々になっちゃうから!!神楽ちゃん!定春29号粉々になっちゃうよ!!!」

「喧嘩はガタイじゃねえ!度胸じゃァァ!!」

「度胸があるのはお前だけだから!!ボンボンなんだよロリ丸は!!将軍に甘やかされて育てられたただのボンボンなの!」

「瑠璃丸っつってんだろォォ!!」


沖田と神楽はどうやら銀時達の声は聞こえていたようで、高々に男らしい事を言った神楽に銀時はすかさず叫ぶように声を上げた。
わざととしか言えないほど銀時は瑠璃丸の名を間違え、それに一々近藤が突っ込む。
慌てる雪達を余所に鷹臣だけは『あれまー』と呑気にそう呟いていた。


「止めねば!早く2人を止めねば!!」

「無理ーっ!!こんな崖上がれませんよ!」

「ええい!力を合わせるんだ!!侍が4人協力すれば越えられぬ壁などない!」


2人を止めるにも遠回りしていては着いた頃には瑠璃丸は粉々になってご臨終だろう事は目に見えている。
なら目の前の壁を登ってでも近道をした方が得策なのだが、器具なく壁を登れるほど侍はロッククライマーではない。
しかし選択肢はそれ以外残っておらず、だが4人も侍がいるのだから一人は登れるはずである。
ちなみに侍の4人とは雪以外の4人であり、雪は『私もいますけど!?』と近藤に突っ込むも近藤からは『いいや!!雪ちゃんは大事な俺の義妹だからな!傷を作れない!!』と今の状況に危機感を覚えているのかいないのか分からない答えが返ってきた。
『今の状況で何言ってんですか!!』と突っ込むも後ろから肩を叩かれ振り返ると鷹臣がおり、鷹臣はものすごくいい笑顔で『力仕事は男の役目だよお雪さん…お雪さんの代わりに俺がやるから安全なところにいてほしい』といい事を言うも雪からは『はあ?』と返されるだけだった。


「よし!お前が土台になれ!俺が登ってなんとかする!」

「ふざけるなお前がなれ!!」

「言ってる場合じゃねえだろ!!今為すべきことを考えやがれ!大人になれ!俺は絶対土台なんてイヤだ!!!」

「お前が大人になれ!!!」


ストーカーなど無視し雪は銀時へ振り返った。
もうこの中で頼りになるのは銀時と土方しかいない!と思ったのだが…その雪が頼りにしている2人はお互いを土台にしようと喧嘩を始めていた。
雪は大人になれと言いながらも一番大人になり切れていない銀時にツッコミを入れる。
しかしその瞬間上から大きな音がし、5人は一斉に崖の上へ顔を上げた。
そこにはすでに戦闘を開始していた沖田と神楽がいた。


「くらえ!サドビーム!!」


サド丸22号の上に乗り沖田は必殺技である『サドビーム』を放つ。
目から光線を発射するサド丸22号に神楽は後ろへ避ける。
地面が切れるほどの威力を持つカブトムシの攻撃に瑠璃丸は運よくギリギリで交わすことができたようで、それを見た沖田は舌打ちを打つ。


「チッ…しぶとい野郎でぃ………もう倒しちまってもいいですかいィ?――答えは聞いてやせんけど!」


小さいから余計に標的にし辛いのだろう。
いたぶって遊ぶ気が削げたのか刀を抜き空気を斬りながら瑠璃丸を刀で指す。
見下す沖田に神楽は這いつくばったまま瑠璃丸を守ろうと腕で瑠璃丸を囲む。
それでも沖田は神楽ごと瑠璃丸を倒そうとした。


「いっけええ!!サド丸ーー!!―――サドスラッーーシュ!!」


奴は本気だ…そう5人の心が一つになった。
その瞬間各々何をすべきかも分かり、全員が同時に動いた。
まず近藤が壁に駆けつけ座り込み、その肩に土方が乗り、土方の肩を鷹臣が乗り、雪が鷹臣の肩に乗る。
そして最後に銀時が4人を梯子替わりに崖の上へと昇って行った。


「お雪さん!?どうして…!」

「黙って見てられっかァァ!!こちとら家賃と食費がかかってんだよおおお!!」


女性を巻き込む形となった、と鷹臣は自分の肩に乗る雪に目を丸くさせ見上げた。
一大事に女も男もあるか!と雪は叫び、ついでに本音もダダ漏れさせ雪は鷹臣をキッと睨む。
『流石お雪さん…』と鷹臣が雪に惚れ直した直後―――サド丸は乱入してきた銀時によって倒された。


結果―――勝負は無効となり…


瑠璃丸は銀時に踏みつぶされご臨終となったという。

→あとがき


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