(1 / 9) ああ やっぱり我が家が一番だわ (1)
「下着泥棒!?」


雪は3日間、万事屋に泊まっていた。
それは依頼が三日間という依頼内容でしかも朝が早いからと泊まり込みだったからである。
今日で依頼最終のこの日、予定より早く仕事も終わり雪は万事屋でのんびりとしていた。
すると昼過ぎに姉から連絡がありファミリーレストランに来てほしいと言われ雪は銀時と神楽を連れて近くのファミレスに向かった。
すでにそこには姉が来ており、雪の姿に妙は『雪ちゃん、こっちよ』と言って相変わらずな綺麗な笑みを浮かべていたが、一瞬その笑みに背筋が凍ったような気がした。
しかし自分よりも鋭いであろう銀時と夜兎の血が入っている神楽の様子を見ても平然としていたため気のせいかと思った。
そして妙の言葉に雪は冒頭の言葉を零す。
思わずガタリと立ち上がってしまった雪だが、声が大きすぎたのとその言葉によって周囲の目線を独り占めしているのに気付き恥ずかしくなって顔を赤くして静かに座った。
静かに座った雪を見て妙は続ける。


「そうなの、雪ちゃんが泊まり込んでた今日までの3日間にやられちゃって…それも3日間連続。」


妙は困ったと軽く言うがその心の奥ではドス黒いモノが湧き出ているのを雪は見た。
というか妹の経験上知っている。
雪は引きつった顔をして『へ、へー、そうなんですかー…大変ですねー(泥棒が)』と呟くも、銀時と神楽はタイミグよく来た注文していた食べ物に夢中になり聞いているのかも危うい。


「ちょっと!銀さんも神楽ちゃんも聞いてる!?姉上の下着が盗まれたんだよ!?」


銀時は巨大なパフェを、神楽は胃に重い食べ物3品を…それぞれ好物を食べるのに夢中になっていたが、姉の下着のピンチに妹として見過ごせず思わず声を荒げてしまった。


「別にいいんじゃね?昔の人はよ、着物の下はノーパンだったらしいぜ?町娘とかギャルとかお姫様全員!」

「……だから何ですか」

「だーかーら!着物の下は何もはいてないわけよ!みんなもう暴れん坊将軍ってわけよ!そのギャップがいいんだよ!おしとやかな顔して暴れん坊将軍かい、みたいな――ふぐッ!」


雪は銀時の話をしていると何だかムカムカしてきた。
男の理想と、女の理想は全く別物だとこの時初めて雪は知った。
雪の声が低くなったのに気づかず銀時は続け、その結果、雪の姉上の拳を顔面に叩き付けられる羽目となる。


「てめえのノーパン談義はどうでもいいんだよ…こちとらお気に入りの勝負パンツ盗られてんだぞコラ!」

「勝負パンツってお姉さん、誰かと決闘でもするんですかい?」

「あたぼうよ…時と場合によっちゃ無制限一本勝負だゴルァ…なめんなよ。」

「それで何が望みだ?決闘に必要だから取り戻してえのか、戻ってくれば気が済むのか。」


拳を銀時の顔面に埋めたまま妙は凄む。
別に銀時が犯人でもないのだが、今の妙には誰も逆らう気力すらわかないほどの気迫があった。
雪は姉に聞こえないように『姉上…怖い…』と呟いたとか…


「パンツを取り戻したうえで、パンツを盗んだ奴を血祭りにあげたい」

「もう発言がパンツをはく現代人の発言じゃねえよ。ニ、三万年前の裸で槍もって野を駆ける人の発言だよ。」

「下着盗るなんて女の敵アル!!姐御!私もひと肌脱ぎますぜ!!」

「まあ!神楽ちゃん!」


どう見てもやる気なさげな銀時の姿に雪は冷や冷やしていた。
銀時が姉のサンドバックになろうがどうでもいいが、出来れば姉の機嫌を悪くはしたくはない。
とばっちりを受けるのは全部自分である。
特にストレスをため込むと妙は料理を作って雪に食べさせて発散するという趣味を持っているためそこは避けたい。
そこは避けたいからこそ雪は忙しい間を縫って姉のストレスがたまらないように一生懸命なのである。
神楽の言葉に妙は嬉しそうに笑った後、『よし、よく言った。兄弟の盃をかわすぜ』と席を立ち神楽を連れてファミレスから出て行ってしまった。


「おーいってこーい」

「ああ、言い忘れてましたけど……」

「あ?」


出ていく際、妙はダル気に返事を返す銀時に何か言い忘れていたことがあると立ち止まった。
外を見ていた銀時だったが妙の言葉に妙へと視線を向け、妙は銀時の視線に背を向けていたがゆっくりと振り返り―――…


「―――盗まれた下着の中に、雪ちゃんのも入ってましたから。」


そう言い放った。


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