(2 / 9) ああ やっぱり我が家が一番だわ (2)
銀時はもちろん、雪も初めて聞くその情報に呆然としていたが、自動ドアが閉まる音で我に返った雪は姉に詳しく事情を聞くため追いかけようとした。
それに神楽と妙が組めば冗談抜きで地球上に敵はいなくなる。
むしろ全宇宙探してもいないだろう。
だから止めなえればという思いもあった。
しかし…雪の肩に誰かが手を置いて引き止めた。
振り返ればそこには銀時がおり、だらけきった表情ではなく何故か影がかかっている銀時のその表情は姉とは別の恐怖を煽り雪は怯えてしまう。


「殺すぞ」

「え…」

「あいつらマジで殺してやる!!!おい!!ゴリラの弟ーー!!いるんだろてめぇえ!!出てきやがれええ!!」

「銀さん!?何言って…こんなところに鷹臣さんがいるわけ…」

「やあ、偶然だねお雪さん」

「いたアアア!!なんか爽やかに偶然を装ってるけど出てきたところが出てきたところだから台無しだアアア!!!」


雪の肩を抱き寄せ銀時は何故か叫びだす。
鷹臣を呼び出しているようで、真選組の裏の顔のトップがそう簡単に出てくるはずがないと突っ込むが、その途中でその鷹臣が出てきた。
爽やかな笑みを浮かべ髪を耳にかけながら雪に近寄る。
しかし本人は偶然を装っているが出てきたところが雪達が座っていたテーブルの下だったためすべてが台無しだった。
が、世の女性たちの中でイケメンなら何でも許されるという法則があり、周りの雪以外の女性達は鷹臣に骨抜き状態だった。
それも相まって銀時は警戒を高め雪を背に隠すように前に出て鷹臣を睨む。


「おいストーカー!お前らだろ!白状しやがれ!!」

「はて…何のことかな?」

「とぼけやがって……てめェら兄弟が雪と妙の下着を盗んだんだろ!?」

「下着…?」


雪は銀時に庇われ、少しドキッとさせた。
普段はああだがここぞというときはカッコいい大人になるのを知っているため思わず頬を赤らませてしまう。
しかし雪は『あ、あれ…なんで私ドキって…』、と自分の密かな思いに気づかず首を傾げていた。
そんな美味しいチャンスを逃がしているとも知らない銀時は木刀を抜きまるで親の仇のように鷹臣を睨み付ける。
だが過去とは言え白夜叉の睨みと殺気を向けられても鷹臣は平然としており、それを見ていた雪は『腐っても真選組の人なんだなぁ』と思う。
まったくもって失礼極まりない事には気づいていない。


「とぼけるのも大概にしとけよ!!お妙と雪の下着が盗まれたって聞けば誰だっておめえらが盗んだって思うだろうが!ええ!?ストーカーさんよお!!」

「何ですかそれ………そんな妻の影に旦那ありみたいな言い方やめてください…!!俺たちが熟年夫婦のようなこと言うのやめてくださいよ!!大体お雪さんの下着を盗むなんて…!そんな…!!まだ結婚の日取りも決めてないって言うのに気が早すぎますっ!!」

「ちげえええよ!!!なんでそうなるんだ!!!下着泥棒と結婚の日取りとどう関係あるんだよ!俺はストーカーの話してんだ!!ストーカーのな!!何がどうなって夫婦になるわけだよ!お前ら何なの!?お前らストーカーの脳内ってどうなってんの!?もういいから警察に行くぞ!!お前の兄貴じゃ駄目だな…多串くんに訴えて慰謝料ふんだくってやるぞゴラァ!!!」

「ま、待ってくださいよ!ちょっと本気で俺たちじゃありませんって!!」

「嘘つけ!お前ら以外に誰が雪と妙の下着盗むんだよ!!雪ならいざ知れず妙の下着なんて盗んでも誰も得ねえだろ!!第一な妙がいるっつーのに志村家に侵入するっていう命知らずはお前らしか知らねえんだよ!むしろお前らしかいねえんだよ!!」

「だから!!俺は違いますってば!ね!兄上!!」

「へ?」

「ああ!」

「ええええ!!!?こ、近藤さんンンン!!?」


雪は顔を茹蛸のように真っ赤になっていた。
それは銀時が大声で『下着下着』というからであり、羞恥から鷹臣にストーカーされているという(世の中のお姉様方には)羨ましいことこの上ない事からお姉様方の鋭い視線など気づく余裕はなかった。
雪は銀時に『もう帰りましょう!』と言おうとしたが、鷹臣がむっとしたまま隠れていた雪達の座る席のテーブルへ視線と声を掛ければそこからもう一人のストーカーが出てきた。
銀時は分かっていたようだが、雪はまだストーカーには慣れておらず兄弟揃ってテーブルの下に隠れていたことに驚きが隠せず、思わず驚いた雪は傍にいた銀時の服を握ってしまった。
銀時は『お、得役』と思い、そんな銀時など余所に濡れ衣を掛けられたと近藤はキッと銀時を睨んだ。


「大体侍が下着泥棒なんて卑劣なことするかよ!!」

「侍がストーカーなんてするわけねえだろうが!」

「ストーカーはしても下着泥棒なんてするか!!訴えるぞ貴様!」

「訴えられるのはあんたらだろ!!」


必死に自分はストーカーを認めても下着泥棒は認めないでいる近藤の言葉に雪は正論を述べる。
どう考えても訴えて勝つのは志村姉妹である。


「これで真選組解体か〜!いやー、めでてえなぁ〜」

「ま、待て待て待て!!これを見ろ!!」


雪の目が本気だったのを見て近藤は必至に待ったをかけた。
そしておもむろに近藤は懐から新聞を取り出し、雪は受け取る。
『ここだ』、と雪と銀時に見せたい記事を示し、その通りに新聞を開けばデカデカと何かの記事が取りざたされており、写真もカラーで印刷されていた。


「えっと…『またも出没!怪盗ふんどし仮面!』?」


雪が開いたその記事の写真には変態が映っていた。
誰がどう見てもアウトだと思う姿が、映っていた。
姿だけ見れば新聞の一面を飾るほどではないようにしか見えず、雪は『えっと、これって一体…』と困惑したように上目で近藤を見つめる。
近藤は『最近巷を騒がしているコソ泥だ』と答えた上で続けた。


「その名の通り風体も異様な奴でな…真っ赤な褌を頭に被りブリーフ一丁で闇を駆け抜け綺麗な娘の下着ばかりを掻っ攫いそれをモテない男達にバラまくという奇妙な奴さ」

「…なんですかそれ……鼠小僧のパンツバージョン?」


雪は近藤の説明を聞き、正直呆れていた。
モテない男達に綺麗な女の人の下着をバラまくよりも、貧乏な人にお金をバラまいた方が世のためじゃね?と素で思う。
呆れていると隣にいた銀時から『そうか…』と小さな声がし、近藤から銀時の方へ視線をやればどこから出したのか…パンツが握られていた。
銀時の手にあるパンツを見て雪は眼鏡を反射させる。


「このパンツにはそういう意味が…俺はてっきりサンタさんのプレゼントか―――、フブゥ!!」


言葉からして銀時もそのふんどし仮面に施しを受けていたらしい。
出すところを見てないがどうやら懐に入れていたようで、今まで気づかなかったのは仕方ないとはいえ何だか無性に腹が立ってきた。
『なるほど…』とどこをどう納得しているのかは分からないが、下着を凝視している銀時を見ていると更に腹が立ってきて雪は気づいたら銀時の頬を叩いていた。


「何すんだ雪!!」

「………」

「む、無言!?何も言わず叩いておいて無言!?何!?お前反抗期なわけ!?」

「………死ね」

「ええええ!?し、しねェェ!?やっと出したと思った言葉が死ね!?いや、あの…雪ちゃん?ど、どうしたわけよ…なんでそんなに怒ってるわけよ…」


叩かれる理由は銀時はないと思っている。
しかし思い返せば雪が怒る理由はちょいちょいあったりもする。
こっそり一人で食べた特大パフェの事とか、2人がいない時に依頼が来てその依頼料でパチンコに行ったのとか、一日2杯と決めていたいちご牛乳を4杯も飲んだとか…銀時はツーン、とそっぽを向く雪に必死に宥めながら思いつくばかりの罪を自ら明かし許しを請う。
雪は次々に発覚していく銀時の罪に『そんなことしてたんですか!?』とつい怒鳴り、もう片方の頬にも平手打ちを放った。
平手打ちを放つほどの事ではないと普段の雪なら思い叱るくらいだが、苛々は積もるばかりで思わず手が出てしまったのだ。


「フハハハ!何だお前モテない男と見なされたのか!哀れだな〜!」

「おーい、見えてるぞー懐からモテない男の勲章がこぼれ出てるぞー」

「こ、これは…!ふんどし仮面の施しパンツじゃねえぞ!!?」

「だったらもっとまずいだろ…」

「え゙」


雪の機嫌がなぜ悪いのかは不明だが、バカにした笑いを上げる近藤に銀時は起き上がりながらある指摘をした。
それは近藤の懐からパンツがチラリと見えている事だった。
それを指摘され近藤は慌ててパンツを隠し言い訳をするも、どちらかと言えばふんどし仮面の施しを受けたと言った方がマシな言い訳だった。
雪はその2人のコントを聞きながら銀時が平手打ちを二度も受け倒れた際に零れ落ちたパンツを無言で拾いジッと何の感情もなく見下ろしていた。
そして…


「鷹臣さん、あげます。」

「え」

「え?」

「えええ!?」


雪は何故か隣で相変わらず自分を凝視している鷹臣にパンツをあげた。
雪にパンツを押し付けられた鷹臣は流石にキョトンとしており、雪の行動に銀時も目を丸くさせ、近藤は声を上げた。
呆気にとられている男どもなど余所に雪は受け取らない鷹臣にもう一度パンツを押し付ける。


「あげます」

「あ、ありがとう…」


鷹臣は惚れた弱みからか、雪から他人のパンツを押し付けられ戸惑いながら受け取ってしまった。
鷹臣が受け取ったのを見て雪は満足したのかにこりと笑い、その笑みに鷹臣はエンジェルに矢を放たれる。
ようするにさらに心を奪われたという事である。


「ちょ、雪!?なんでこいつに俺のパンツあげるわけ!?」

「………俺の?」

「え、あ、ちが…違います…言い間違えました…そのパンツは俺のじゃないです…鷹臣くんのです…」


今の雪には逆らわない方がいい、と銀時は思い目をそっと逸らして兎にも角にも謝った。
何で、どうして、どのような理由で、雪がマジ切れ5秒前なのかは分からないが、銀時は謝る事しか選択肢はない。


「兄上!兄上!お雪さんからプレゼント貰っちゃいましたっ!!」

「おう!見てたぞ鷹臣!よかったなー!」

「はいっ!」

「いや良くねえだろ!ちゃんと見ろよ!パンツだぞ!パンツ!!お前の弟好きな人に他人のパンツ貰って喜んでんだぞ!?」


鷹臣は雪からプレゼントを初めて貰ったと嬉しそうに兄に報告する。
余りの嬉しさからか、いつもの優男風は崩れ、今は無邪気な子供のようにはしゃいでいた。
近藤ははしゃぎ花を背負いそうな笑みを浮かべる弟を微笑ましそうに見つめ頭を撫でてやり、兄に頭を撫でられた鷹臣は本当に嬉しそうに笑みを深め『このパンツ…一生の宝物にします』と呟く。
雪はさっきまでモヤモヤ苛々だった気持ちが一気に晴れ清々していたが、鷹臣の感極まったように呟かれたその言葉に『なんでだよ』、と心の中で小さく突っ込みを入れ、銀時はパンツ取られるわ雪は怒ってるわで八つ当たりも含め突っ込んだ。


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