(9 / 9) ああ やっぱり我が家が一番だわ (9)
「床の下にも地雷をセットしてあったんですね…」

「そうみたいだな…」


何故か縁側にも地雷をセットしてあったようで、泥棒は爆発に巻き込まれた。
雪は『庭だけじゃなくて家の床にも…今日からどう生活すればいいんだ…』と思う。
ギャグ漫画だから黒焦げで済まされるが、これがギャグ漫画ではなかったらどうなっていたのだろう。
まあ、ギャグじゃないのだから地雷の存在はないのだろう。
迷惑料として真選組に壊れた縁側の修理費、並びに地雷を持ってきた責任として地雷撤去を押し付けようと雪は泥棒が爆発したのを見て安堵したのかそう計画を立てた。
嫌な顔されようがこちらには姉のストーカーである真選組のトップの局長がいるのだ。
流石に血の気が多いとは言え局長には逆らえないだろう。
やっと事件解決し、平和に暮らせると安堵の息をついたその時、神楽が何かに気づき空を見上げて指をさす。
全員神楽につられて上を見上げればそこには雪のパンツがヒラリヒラリと風に乗って落ちてくるのが見える。
ひらひらと落ちていくパンツを全員が何故か目で追う。
雪も自分のパンツだと忘れ落ちていくパンツを見送っていた。
本来ならそのパンツは地面に落ちるはずである。
しかし、パンツが地面に落ちる寸前…瓦礫の中から勢いよく手が伸ばされ、落ちてくるパンツを見事にキャッチした。
それに目を丸くしていると爆発に巻き込まれたはずの泥棒が瓦礫の中から現れる。


「甘い…こんなものじゃ俺は倒れない…!全国の変態、電波男、チェリーボーイ、スケベノビッチ、妄想スキー達が俺の帰りを待っているんだ!彼らの声が俺に力を与えてくれる!!お前達には聞こえるか!彼らの声が!!『ふんどし仮面よ頼む!希望を分け与えてくれ!!ナイロンのシャカシャカ、シルクのツルツル、コットンのフワフワ、どれでもいい!ただ一枚のパンツさえあれば明日を生きられる!前を向いて、胸を張って歩いていけるんだ!!』泣き叫ぶ、彼等の声なき声が、聞こえるかァァァ!!!こんな所で負けるわけにはいかん!!!ふんどし仮面の名誉に賭けて彼らのもとに戻らねばならんのだ!!!」

「聞こえんわァァ!!何かっこつけた言い方してるんじゃ!!かっこつけても結局最低な変態野郎なだけだろうが!!パンツ一枚で明日を生きられるとか言ってる時点でそいつらも変態だろうが!!モテない理由はそこにもあるんじゃねえか!!パンツ一枚で胸張って歩いてどうすんだよ!!嘆くよりもモテる努力しろよ!!それより私のパンツ返せや!!!恥かいただけで終わらすつもりはないんだよこっちはなァァ!!」


自分の意志を貫くその姿はカッコいい。
だがいかんせん、言っている内容と恰好で台無しになっていた。
ぐっと自分のパンツを握りしめて力説する泥棒に雪は力の限り突っ込みを入れた。
突っ込み、というよりはキレていると言ってもいいだろう。
雪は怒りすぎて地雷の事を忘れ茂みから出て泥棒の元へと向かおうとしたのだが、雪が茂みから出るよりも早く、ある人物が『待てェェい!!』と叫びながら泥棒の足を掴み雪はハッとさせ我に返る。
泥棒の足を見ればそこには最初の犠牲者である近藤がうつ伏せのまま泥棒の足を掴んでいるのが見えた。


「汚ねえ手でお雪ちゃんのパンツに触るんじゃねえ!!鷹臣だって触ったことねえんだぞ畜生ォォ!」

「食いつくとこそこォォ!!?なんであんたがキレてんのーー!!?」

「鷹臣だってな…鷹臣だってなァ!!この場に居たかったんだよ!!お雪ちゃんの傍にずっといたかったんだよ!!だけどあいつは仕事だって部下に引きずられていったんだ!!そんなのってねぇよ!!そんなのあんまりじゃねえか!!鷹臣が何したって言うんだ!!なんであいつばっかり辛い思いしなきゃならねえんだ!!だから俺は誓った!!泥棒に逃げられてもいい…せめて…せめて鷹臣にお雪ちゃんのパンツを一枚でもいいからプレゼントしてやるってなァァ!!」

「最低だーー!!ここにも最低な変質者がいたァァ!!!ちょ、こ、近藤さんー!?何勝手に人のパンツをご褒美に使おうとしてるの!?何兄弟の美談風に語ってんの!?美談じゃないよね!?それもはや変態兄弟だよね!?何したって私にストーカー行為及びに盗撮してるよね!?これって罰当たるレベルだよね!?一枚でもいいって何枚持ってく気だったんだよ!!っていうか泥棒逃がすなよ!!警察だろあんた!!」

「万事屋ァァ!!何やってんだ!早くしろォ!!今回はパンツ以外お前に譲ってやる!!」

「無視かいィィ!!突っ込み無視かいィィ!!」

「言われなくてもやってやるさ!しっかり掴んどけよ!そいつの毛むくじゃらの足を!!――あと雪のパンツは俺がもらう!!」

「なんでんだァァ!!なんでそうなるんだー!!誰にも私のパンツはやらんぞ!!私物っつーもんは私の物って書いて読むから私物なんだよ!!」


妙のパンツでもないのに何故近藤が必至になっているのか…雪は不思議に思っていた。
そして少し見直した。
――が、次の近藤の叫びにその見直した感情がブラックホールへと呑み込まれ、雪は力の限り突っ込んだ。
近藤はどうやらここに来れなかった弟の無念を晴らすために来ているようで、仕事を終えた弟のご褒美として雪のパンツをちゃっかり持って帰ろうとしていたようである。
泥棒同様、行動と一部の言葉はカッコいい。
流石は局長だと思えるほど、カッコいい。
だが、内容が内容なためカッコいいと微塵にも思えなかった。
銀時もまた行動と言葉は様になっているが、最後の言葉によって台無しとなっている。
既にパンツを晒されて恥ずかしいなどと言っている余裕は雪にはなかった。
下手をしたらキモオタ連中よりも雪のパンツは質の悪い男達に渡るかもしれない。
顔を青くする雪などよそに銀時が動き出した。
運よく地雷を踏むこともなく真っ直ぐに泥棒…いや、雪のパンツを求めまっしぐらだったのだが…ピ、と機械音が銀時の耳に届き、そして―――爆発した。
あまりのお約束に雪は突っ込めなかった。


「ハハハハ!!やっぱり最後に笑うのは俺!!悪いがお嬢さんのパンツは頂いていく!!安心するといい!お嬢さんのパンツはきっと変態、電波男、チェリーボーイ、スケベノビッチ、妄想スキー達のいずれかが愛してくれるさ!!」

「いやー!それだけはいやーーっ!!」


自爆した銀時と蹴り落した近藤を見下ろしながら泥棒は高笑いを上げた。
そして雪のパンツを見せつけるかのように両手で広げ、雪は変態達にオカズとして使われるかと思うと叫ばずにはいられなかった。
変態はイケメンストーカーで十分だというのに…
地雷があり、出るに出れない雪達を嘲笑いながら泥棒はさっさとその場から立ち去ろうとした。
しかし…


「ふざけんなァァァ!!汚らしい手で雪ちゃんのパンツ触んじゃねェェ!!!」

「あ、姉上…!」


泥棒の言葉、そして見せつけるように妹のパンツを広げる泥棒に妙は堪忍袋の緒がキレたのか地雷などに臆することなく茂みから駆けた。
どうやら銀時が走っても平気だった道を駆けているようで、地雷に引っかかることなく泥棒ももとへと向かう。
しかしその先は銀時が伸されたため地雷がないところが分からない。
雪は妙も爆発に巻き込まれるのかと心配したのだが…妙はなんと倒れている銀時の頭を踏み台に飛び上がった。


「とっとと雪ちゃんのパンツ返しやがれエエエエ!!!」


妙は飛び上がりそのまま泥棒へと薙刀を振り下ろした。
妙の薙刀は泥棒に当たり、泥棒は激痛に立っていられず膝をつく。
握っていたパンツも衝撃で放してしまい、ヒラヒラと落ちていく妹のパンツを妙はキャッチし躊躇いもなくギュッと力いっぱい握って泥棒を見下ろした。


「素顔も晒せない人に雪ちゃんのパンツはやれないわ。欲しけりゃ素っ裸で挑んできなさい。心までノーパンになってね。」


姉もカッコいい事を言っているが、冷静になって聞けば突っ込みどころ満載である。
姉にパンツを奪われた泥棒は観念したかと思ったが突然立上って見せ、妙は警戒し構える。
しかし、泥棒は『我が右手に一片のパンツなし』と訳の分からない言葉を残し…今度こそ倒れる。


「姐御〜〜!!やっぱり姐御が一番アル〜〜!!」


泥棒がうつ伏せに倒れたのを見て神楽は妙へと駆け寄ろうとした。
雪は妹のパンツを握りしめる姉についていけないようすで顔を引きつらせその場で立ち尽くしていたため、神楽を見送る形となったのだが…やはりお約束に神楽は地雷を踏み、雪の見ている前で姉を巻き込み爆発した。


「……………」


庭には泥棒や山崎や真選組入れて10人の屍が転がっている。
その光景はもはや道場の庭ではなかった。
泥棒もやっと倒れた疲れとパンツが他人に渡らなかった安堵の2つがどっと襲ってきたのか雪はその場に座り込んでしまう。


「おい、大丈夫か?」

「土方さん…」


スイッチが切れたかのように座り込み俯く雪に土方が歩み寄って声を掛けた。
雪の『なんか…疲れました』という言葉に土方は優しく雪の頭を撫でてやる。
雪は疲れがピークなのか、土方の優しさに甘え寄りかかろうとした。
しかしそれを察した沖田が『ああそういやァ』とわざと土方に声を掛けた。
沖田の声に雪と土方が同時に沖田に振り返る。


「土方さん、施しパンツ実は俺の仕業でさァ」

「なんだと!?」

「シャレでさァ、シャレ。」


土方は沖田の言葉に目を見張り雪から手を放す。
沖田はライバルに塩を送るつもりは毛頭ない。
だから土方に送られた施しパンツは泥棒ではなく自分だと明かせば土方は怒りで刀を抜き自分を追いかけるだろう事は分かっていた。
そもそも土方が施しパンツを与えられる側ならば、全人類のほとんどの男達はモテないと断定されてもおかしくないのだ。
悪戯という名の嫌がらせが成功したと笑う沖田を土方は追いかける。
雪は2人をただ見送るだけだった。

しかし…


土方と沖田の追いかけっこのお蔭で志村家に仕掛けている全ての地雷が爆発した。



「……なんだかなァ…」



爆発に巻き込まれ雪も黒焦げになりながら仰向けに倒れた雪は雲一つない夜空を見上げながらそうポツリと呟いた。


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