(14 / 14) 親子ってのは嫌なとこばかり似るもんだ (14)
翌日、高杉は道に貼られている手配書を見ていた。
そこには平賀の似顔絵が貼られてあり、高杉は表情の読めない目でじっと見つめる。
その手にはいつも持っていた煙管の代わりに赤く美しい簪が握られていた。


「どうやら失敗したようだな」


赤い簪を遊ぶように触れながらただ平賀の手配書を見つめていた高杉の隣に、僧に変装している桂が並ぶ。
桂の言葉に高杉は小さく肩をすくめて見せた。


「思わぬ邪魔が入ってな…牙なんぞとうに失くしたと思っていたが…とんだ誤算だったぜ」

「何かを守るためなら人は誰でも牙を剥こうというもの…守るものも何もないお前はただの獣だ…高杉」

「獣で結構…俺はただ壊すだけだ…獣の呻きが止むまでな…」

「なんだ、花殿の迎えにも失敗したのか?」

「なんだその花殿って…」


高杉がこの江戸で何をしようとしたかは当然桂は知っていた。
高杉に聞かずとも再会した時の会話で十分だったのだろう。
桂は高杉の言葉にふと再会した時に聞いた話を思い出した。
詳しくは聞いていないが、将軍の首の他にあった用件は高杉の口ぶりからして失敗に終わったと察し慰めるようにポン、と高杉の肩に手を置く。
どうやら桂は高杉の『花』と指していた人物を花という名前だと丸々思っていたようで、高杉は相変わらずな桂に呆れたような目を向けた。


「その簪はあれか?花殿から貰ったのか?お前も女々しいところがあるのだな。」

「いや、これは千早の……ってお前に言う必要ねえだろうが」

「しかし…お前ほどの男前を振る女性がいるとはな…私も花殿に一度会ってみたいものだ」

「お前相変わらず人の話し聞かねえのな。」


桂は何を納得しているのか『ふむふむ』と頷き、勝手に勘違いして自己完結している旧友に高杉は溜息をついた。
高杉の手にある簪を目ざとく見つけた桂はそれを高杉が相手を諦めきれず貰ったのだとまた勘違いし、高杉は訂正しそうになったが電波な旧友に何を言っても無駄だと知っているため諦めた。
もう高杉が振られた前提で進む桂の話しに嫌気が差したのか、『構ってられねえ』と愚痴る高杉に桂はとてつもなくいい笑顔で…


「今度花殿を忘れるような女性を紹介してやろう」


と言ってのけた。
高杉は光っても見える桂の笑顔に顔を引きつらせる。
『多分こいつの中での俺は振られて傷ついた男になってんだろうな』と思いながら言い返す気も間違いを正す気もない。
だから高杉は、


「清花よりいい女なんていねえよ」


と桂に背を向け桂の世話を切って捨てた。
『じゃあな』と桂の前から去る高杉の姿を見送った桂は『清花…?あいつ花殿に振られたばかりだというのに早くも次の相手に目星をつけていたのか』とずれた事を呟いた。


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