雪は今日、花見に出かけていた。
桜舞う風景に雪は思わず溜め息をついてしまう。
「あら雪ちゃん、いい場所が空いてるわ」
雪の隣にいるのは姉の妙。
今日は花見をするからと休みを取り姉妹水入らずで花見を楽しもうとしていた。
今日という日を妙も雪も楽しみにしていた。
雪が万事屋で働いてから2人っきりになることも減り、妙は雪と花見をするのを楽しみだった。
そう、楽しみにしていた。
なのに……
楽しみにしていた姉妹水入らずのはずの花見なのに……
「神楽!遊んでないでシート敷くの手伝えコラ!」
「雑用なんてこの歌舞伎町の女王である神楽様がするわけがないネ!!雑用なんてメガネと天パで十分ネ!」
「んだとゴラ!誰が天パだゴラ!天パなめんなよゴラ!いてまうぞゴラ!」
何故か銀時と神楽も参加する事になってしまった。
神楽は手伝いもせず愛犬の定春と戯れており、シートを雪と銀時で敷いていた。
「いやー、悪いねぇ、姉妹水入らずのとこ邪魔しちまって」
「あらいいのよ、2人で花見なんてしても寂しいもの」
シートを敷き終わり持ってきた荷物を置く。
その間も桜の花びらが赤いシートに散りばめられていく。
銀時は座りながら姉妹水入らずの場所に入り込むことを謝るが、その顔はニヤついており、その笑みに妙はピクリと片眉を上げた。
実は雪と妙で2人で花見をしようという事になっていたのだが、その情報を雪から聞き銀時と神楽も邪魔…ごほんげふん、偶然その場に居合わせたのだ。
ただ花見をしにきたと告げた銀時に雪が『じゃあ一緒に花見でもしませんか?』と提案したのが2人の静かな戦いの始まりだった。
『姉上、いいですか?』と笑顔で聞く可愛い妹に誰が首を振れようか…
妙はわざとらしい銀時の言葉に笑みを浮かべているも内心苛立ちの炎に包まれていた。
「お父上が健在の頃はよく三人、桜の下で弾けたものだわ」
「そうですね…あの頃が懐かしいです」
昔を思い出し雪はくすりと笑った。
悲しげではなく、暖かな笑みに銀時も目を細める。
「あっ!そうだ!お弁当!早速食べましょう!」
雪は胸元に手を合わせ思い出したように持ってきた弁当を広げた。
しかしその量は半端なく、2人で食べる量を当に超えていた。
「おいおい、お前ら二人でこんな量のメシ食う気だったのか?」
「いえ…その…いつもの癖でつい…」
ブラックホールな胃を持つ神楽がいなければ銀時がいても余りに余る量の料理が目の前に並び、銀時は思わずそう零してしまう。
銀時の零しに雪は照れたように笑った。
雪は姉と二人で花見をするというのは頭に入っていたのだが、いつも万事屋のご飯も作っていた癖があってか、気が付いたら神楽の胃に合わせた量の弁当が出来上がっていたのだ。
はっきり言わなくても銀時は察し、雪が万事屋の一員として溶け込んでいることにニヤついてしまう。
「あ、そうだ…私も作ってきたんですよ……はい、銀さん」
「……え゙」
雪が休みの日でも自分達の事を考えているのが当たり前だと思うとニヤニヤが止まらない。
『よしこのままいつの間にか俺たち付き合ってます的に持ち込めば…』と下心満載な銀時だったが、妙の言葉に固まった。
妙の地獄逝き発言に、固まった。
妙の方を見れば相変わらずにっこりと美しくも愛らしい笑みを浮かべたまま自分が作ったという重箱の一段を銀時に差し出した。
スッと自分の前に差し出されたそれを見下ろすとそこには…ダークマターがズウウンと威圧感を発しながらお出になられていた。
「何ですか、これは…アート?」
「あらいやだ銀さんったら…私が卵焼きしか作れないの知っているでしょう?」
「いや、うん…これ卵焼きじゃねえよ。焼けた卵だよ?」
「卵が焼けていればそれがどんな状態だろうと卵焼きよ?」
「違うね。これは卵焼きじゃなくて可哀想な卵だ―――」
「いいから男は黙ってくえやァァァ!!」
自分にだけ差し出されたダークマターに銀時はブワッと汗が流れた。
志村姉妹と知り合ってから今日まで…妙の料理の酷さは知っている。
こんな姉の料理を食べ続けてきたのだから雪の料理の腕前が否応なしに上がるのも理解できる。
料理下手な女性は銀時も可愛いとは思う。
失敗しちゃった、と持ってきた料理がどんなに黒焦げの毒物でしかなくてもしょんぼりする彼女が笑顔を取り戻してくれるのなら彼氏である自分は広い心で受け止め不味くても完食する自信はある。
だが、妙の料理とあっては話は別である。
妙はただ焦がしただけではなく、なぜそんな味になるのだろうと研究してもおかしくないレベルの下手さだった。
チラリと妙を見る。
妙は笑顔だった。
笑顔が『邪魔した罰受けやがれや』と語っていた。
これは嫌がらせだった。
雪と水入らずを邪魔された、嫌がらせだった。
中々手を出そうとしない銀時に妙は痺れを切らしたのか素手で自作のダークマターを掴みそのまま銀時の口に突っ込んだ。
倒れた銀時を笑顔で見送り、今度は神楽に『神楽ちゃんの分もあるから安心してね』とダークマターを差し出す。
目の前の毒物に何を安心したらいいのだろうか、と神楽は思ったが、ピクピクと痙攣しながら倒れている銀時を見て神楽は震える手でダークマターを食べるしかなかった。
「これを食べないと私は死ぬんだ…これを食べないと私は死ぬんだ…」
「暗示かけてまで食べなくてもいいよ!!やめときなって!!私のように目が悪くなるよ!」
雪も倒れる銀時に顔を引きつらせていたが、暗示をかけて姉作のダークマターを食べる神楽に気づき慌てて止める。
しかし銀時の犠牲を見ていた神楽は止める雪を振り払いバリバリと卵焼きでは決して奏でることのない音を奏でながら食べていく。
桜舞う風景に雪は思わず溜め息をついてしまう。
「あら雪ちゃん、いい場所が空いてるわ」
雪の隣にいるのは姉の妙。
今日は花見をするからと休みを取り姉妹水入らずで花見を楽しもうとしていた。
今日という日を妙も雪も楽しみにしていた。
雪が万事屋で働いてから2人っきりになることも減り、妙は雪と花見をするのを楽しみだった。
そう、楽しみにしていた。
なのに……
楽しみにしていた姉妹水入らずのはずの花見なのに……
「神楽!遊んでないでシート敷くの手伝えコラ!」
「雑用なんてこの歌舞伎町の女王である神楽様がするわけがないネ!!雑用なんてメガネと天パで十分ネ!」
「んだとゴラ!誰が天パだゴラ!天パなめんなよゴラ!いてまうぞゴラ!」
何故か銀時と神楽も参加する事になってしまった。
神楽は手伝いもせず愛犬の定春と戯れており、シートを雪と銀時で敷いていた。
「いやー、悪いねぇ、姉妹水入らずのとこ邪魔しちまって」
「あらいいのよ、2人で花見なんてしても寂しいもの」
シートを敷き終わり持ってきた荷物を置く。
その間も桜の花びらが赤いシートに散りばめられていく。
銀時は座りながら姉妹水入らずの場所に入り込むことを謝るが、その顔はニヤついており、その笑みに妙はピクリと片眉を上げた。
実は雪と妙で2人で花見をしようという事になっていたのだが、その情報を雪から聞き銀時と神楽も邪魔…ごほんげふん、偶然その場に居合わせたのだ。
ただ花見をしにきたと告げた銀時に雪が『じゃあ一緒に花見でもしませんか?』と提案したのが2人の静かな戦いの始まりだった。
『姉上、いいですか?』と笑顔で聞く可愛い妹に誰が首を振れようか…
妙はわざとらしい銀時の言葉に笑みを浮かべているも内心苛立ちの炎に包まれていた。
「お父上が健在の頃はよく三人、桜の下で弾けたものだわ」
「そうですね…あの頃が懐かしいです」
昔を思い出し雪はくすりと笑った。
悲しげではなく、暖かな笑みに銀時も目を細める。
「あっ!そうだ!お弁当!早速食べましょう!」
雪は胸元に手を合わせ思い出したように持ってきた弁当を広げた。
しかしその量は半端なく、2人で食べる量を当に超えていた。
「おいおい、お前ら二人でこんな量のメシ食う気だったのか?」
「いえ…その…いつもの癖でつい…」
ブラックホールな胃を持つ神楽がいなければ銀時がいても余りに余る量の料理が目の前に並び、銀時は思わずそう零してしまう。
銀時の零しに雪は照れたように笑った。
雪は姉と二人で花見をするというのは頭に入っていたのだが、いつも万事屋のご飯も作っていた癖があってか、気が付いたら神楽の胃に合わせた量の弁当が出来上がっていたのだ。
はっきり言わなくても銀時は察し、雪が万事屋の一員として溶け込んでいることにニヤついてしまう。
「あ、そうだ…私も作ってきたんですよ……はい、銀さん」
「……え゙」
雪が休みの日でも自分達の事を考えているのが当たり前だと思うとニヤニヤが止まらない。
『よしこのままいつの間にか俺たち付き合ってます的に持ち込めば…』と下心満載な銀時だったが、妙の言葉に固まった。
妙の地獄逝き発言に、固まった。
妙の方を見れば相変わらずにっこりと美しくも愛らしい笑みを浮かべたまま自分が作ったという重箱の一段を銀時に差し出した。
スッと自分の前に差し出されたそれを見下ろすとそこには…ダークマターがズウウンと威圧感を発しながらお出になられていた。
「何ですか、これは…アート?」
「あらいやだ銀さんったら…私が卵焼きしか作れないの知っているでしょう?」
「いや、うん…これ卵焼きじゃねえよ。焼けた卵だよ?」
「卵が焼けていればそれがどんな状態だろうと卵焼きよ?」
「違うね。これは卵焼きじゃなくて可哀想な卵だ―――」
「いいから男は黙ってくえやァァァ!!」
自分にだけ差し出されたダークマターに銀時はブワッと汗が流れた。
志村姉妹と知り合ってから今日まで…妙の料理の酷さは知っている。
こんな姉の料理を食べ続けてきたのだから雪の料理の腕前が否応なしに上がるのも理解できる。
料理下手な女性は銀時も可愛いとは思う。
失敗しちゃった、と持ってきた料理がどんなに黒焦げの毒物でしかなくてもしょんぼりする彼女が笑顔を取り戻してくれるのなら彼氏である自分は広い心で受け止め不味くても完食する自信はある。
だが、妙の料理とあっては話は別である。
妙はただ焦がしただけではなく、なぜそんな味になるのだろうと研究してもおかしくないレベルの下手さだった。
チラリと妙を見る。
妙は笑顔だった。
笑顔が『邪魔した罰受けやがれや』と語っていた。
これは嫌がらせだった。
雪と水入らずを邪魔された、嫌がらせだった。
中々手を出そうとしない銀時に妙は痺れを切らしたのか素手で自作のダークマターを掴みそのまま銀時の口に突っ込んだ。
倒れた銀時を笑顔で見送り、今度は神楽に『神楽ちゃんの分もあるから安心してね』とダークマターを差し出す。
目の前の毒物に何を安心したらいいのだろうか、と神楽は思ったが、ピクピクと痙攣しながら倒れている銀時を見て神楽は震える手でダークマターを食べるしかなかった。
「これを食べないと私は死ぬんだ…これを食べないと私は死ぬんだ…」
「暗示かけてまで食べなくてもいいよ!!やめときなって!!私のように目が悪くなるよ!」
雪も倒れる銀時に顔を引きつらせていたが、暗示をかけて姉作のダークマターを食べる神楽に気づき慌てて止める。
しかし銀時の犠牲を見ていた神楽は止める雪を振り払いバリバリと卵焼きでは決して奏でることのない音を奏でながら食べていく。
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