雪は朝早く起き、自分と姉の朝食を作っていた。
おかずも出来、仕事で朝日と共に寝る姉の分を机においてフードカバーを被せた後自分も食事をしようと箸を手に取った。
「いただき――、」
手を合わせ、さあ食べよう、としたその時、雪はくしゃみを1つ零した。
一度くしゃみすれば連鎖のように何度もくしゃみを零し、しばらくして漸く止まる。
雪は鼻をかみ何事もなかったように朝食を食べ、そして仕事へと向かう。
いつものように雪は万事屋に出勤していた。
いつもなら依頼が来るのを待っていたり、依頼人を待っていたり、家事をしたりと、予定がないかぎりはそれぞれ好きなように過ごしていたのだが、今日はいつもと違っていた。
「ぶぇくしょん!」
「はくしょん!」
「まいけるじゃくそん!!」
「オーイ、まいけるじゃくそんはないだろ…それは、お前くしゃみ――じゃねっとじゃくそん!!」
「うるせーよ!普通にしろ!!」
いつもと違う風景…そう、今日はくしゃみの音しか万事屋に響いていなかった。
しかも銀時と神楽のくしゃみは何故か某有名人の名前に似ている(というかそのまま)くしゃみなため、最初こそ無視していた雪だったが思わず突っ込んでしまう。
「あーもう…ムズムズする…今年の花粉は例年にも増して酷いですよね…もう街中みんな花粉症でグジュグジュのデロンデロンになってるんですよ?どうなってるんでしょうかね…」
「スギ花粉じゃねえらしいや、今年は…なんかどこだかの星の植物らしくてタチ悪いら――しぇけらべいべ!!」
話ている時に空気を読まずくしゃみを出すのは仕方のない事だとはいえ…このままではくしゃみだけで疲れてしまいそうになる。
また訳の分からないくしゃみをした銀時が鼻をかむのを横目で見ながら雪も鼻をかむためティッシュへ手を伸ばした。
だがしかし…
「あ、ティッシュ切れた…」
「じゃあ銀ちゃん買って来いヨ」
「よっしゃ!任せとけ!―――って、オイイイイ!!何で俺ー!?なんで俺限定!?いや、使ったの俺もだけど!俺も鼻かんだけど!!息をつく暇もなく俺を指名ってどういうことだオイ!?」
「女子供に花粉が蔓延してる外に出ろって言うアルか?普段仕事能力もなくぐうたらとしてて雪の旦那気取りしか能がないくせしてこういう時は公平にっていうつもりアルか?そんなの公平という名の不公平アル。」
「何花粉が危険物みたいなニュアンスで言ってるわけお前?っていうかさ、ねえ知ってる?父ちゃんだってね、傷つくときは傷つくんだからな?父ちゃんだってな、ちゃんと心を持った生き物なんだからな?父ちゃんは家族の中で一番繊細に出来てるんだからな!」
手を伸ばしたティッシュ箱には一枚もティッシュが入っていなかった。
買い置きを出そうにも、あまりにも鼻を噛み過ぎて置いてあった買い置きのティッシュ全てが空となったのだ。
外からも大勢のくしゃみが聞こえ、雪はついには手足も出始めた親子喧嘩を尻目にどうしようかと部屋を見渡した。
が、やはりどこをどう見てもティッシュは見当たらなかった。
「あ、そうだ…トイレットペーパーがあったんだった。」
ティッシュはないが、同じ紙の類にはいるであろうトイレットペーパーを頭に過らせた。
この際トイレットペーパーだろうがキッチンペーパーだろうが鼻をかめればなんだって良かった。
そう思い腰を上げようとしたのだが、その瞬間、くしゃみばっかりで苛立っていた神楽に吹き飛ばされた銀時が社長机の後ろにある窓へと突っ込んでしまう。
幸いにもガラスではなかったため大きな怪我はないが、雪は銀時に駆け寄る。
「ちょっと大丈夫ですか、銀さん」
「あー…だめっぽい…多分肋骨折れてるわ…それか背骨折れてるわ……でも雪ちゃんが看病してくれたら治る気がする…添い寝とか、添い寝とか、添い寝とか。」
「あ、大丈夫みたいですね、良かった良かった」
仰向けで上半身外に投げ出されている状態の銀時に声を掛ければ意外と平気そうな声が帰ってきた。
銀時の身体の丈夫さも、強さも知っているためそれほど心配はないから、いつものようにセクハラをかます銀時の発言をニッコリとスルーする。
しかしふと視界の端に何かが映り雪は銀時からその何かに顔を上げた。
「………何あれ…」
壊れた窓からは外の風景が見えた。
いや、見えるのは当たり前である。
だが、いつもの場所に最近まではなかったモノが見えるのだ。
あまりにも大きすぎるソレは―――木だった。
このーきなんのききになるきー、と歌いたくなるほど大きく、そして立派だった。
何故今まで気づかなかったのか…それともこの木は幻なのか……雪は幻なんだと望みながら目を覚ますため目をこすったが、雪の黒々とした大きな目にはやっぱり大きな木が映っていた。
気のせいか若干黄色い粉のようなものが浮いているように見える。
「銀さん…神楽ちゃん…」
この木は自分だけ見えているのか…そう思うほど周りにいる人たちは見向きもしていない。
くしゃみのし過ぎで…または鼻をかみ過ぎで自分だけしか見えない木が見えているのかと雪はまた不安になり、銀時と神楽を呼んだ。
名前を呼ばれた二人は顔を上げたその時、チャイムが鳴る。
「いませんよー居留守ですよー」
「正々堂々と居留守って…」
神楽は出るのが面倒なのか、チャイムが鳴っていようが鼻をほじりながら居留守だとはっきり言った。
声も大きく訪問者にはバッチリ聞こえていただろうが、神楽には関係なかった。
神楽は出る気ゼロ、銀時は血だらけ。
結局、雪が出る羽目となりいつものように雪は玄関へ向かう。
「はいはい、今でますよ」
くしゃみも止まらない苛々は雪にもあるのか、突然の訪問者に少し投げやりに対応し、雪はガラガラと玄関を開けた。
玄関の扉を開け、訪問者がいるであろう前を見ても目の前は青色一色。
天気はいいのに少し薄暗く、威圧感も感じ、雪は首を傾げながら何となく上を見上げた。
上を見上げればそこにはちょこんと可愛いピンク色の花が一輪咲いていた。
そして同時に映る"ソレ"に雪はそのままの体勢で固まった。
「どうも初めまして、今度裏隣りに越してきました…ヘドロです。」
ソレ、とは…一輪の花を頭のてっぺんに咲かせている…鬼のように恐ろしい形相の、天人だった。
その天人を見た瞬間雪は氷のように微動だにせず、雪の様子に気づいたらしい後ろにいた銀時も雪と同様固まっていた。
因みに神楽は相変わらずである。
ヘドロと名乗った天人は一歩二歩と玄関に入り、雪はそれに合わせて一歩二歩と後ろに下がる。
「今日はご挨拶にあがりました…僕、花屋をやっていまして……お近づきの印にコレ、どうぞ」
勝手に入ってきたヘドロに誰も何も言えず、ヘドロは挨拶に来たと自分で言った通り、頭を下げ引っ越しの挨拶を口にする。
お近づきの印、と言って雪に渡したのは一輪の花が植えてある植木鉢だった。
何も言わない雪達をよそにヘドロは最後に『色々とご迷惑をおかけするかもしれませんが、なにとぞよろしくお願いします』と頭を下げ、そして、ようやく坂田家から出ていった。
雪はカンカンとヘドロが階段を下りていき足音と気配が消えたのを確認するとピシャリと玄関の扉を閉めた。
そして雪は銀時と神楽へと振り返り……
「「恐ェェェェェ!!!」」
銀時と雪が同時に叫んだ。
おかずも出来、仕事で朝日と共に寝る姉の分を机においてフードカバーを被せた後自分も食事をしようと箸を手に取った。
「いただき――、」
手を合わせ、さあ食べよう、としたその時、雪はくしゃみを1つ零した。
一度くしゃみすれば連鎖のように何度もくしゃみを零し、しばらくして漸く止まる。
雪は鼻をかみ何事もなかったように朝食を食べ、そして仕事へと向かう。
いつものように雪は万事屋に出勤していた。
いつもなら依頼が来るのを待っていたり、依頼人を待っていたり、家事をしたりと、予定がないかぎりはそれぞれ好きなように過ごしていたのだが、今日はいつもと違っていた。
「ぶぇくしょん!」
「はくしょん!」
「まいけるじゃくそん!!」
「オーイ、まいけるじゃくそんはないだろ…それは、お前くしゃみ――じゃねっとじゃくそん!!」
「うるせーよ!普通にしろ!!」
いつもと違う風景…そう、今日はくしゃみの音しか万事屋に響いていなかった。
しかも銀時と神楽のくしゃみは何故か某有名人の名前に似ている(というかそのまま)くしゃみなため、最初こそ無視していた雪だったが思わず突っ込んでしまう。
「あーもう…ムズムズする…今年の花粉は例年にも増して酷いですよね…もう街中みんな花粉症でグジュグジュのデロンデロンになってるんですよ?どうなってるんでしょうかね…」
「スギ花粉じゃねえらしいや、今年は…なんかどこだかの星の植物らしくてタチ悪いら――しぇけらべいべ!!」
話ている時に空気を読まずくしゃみを出すのは仕方のない事だとはいえ…このままではくしゃみだけで疲れてしまいそうになる。
また訳の分からないくしゃみをした銀時が鼻をかむのを横目で見ながら雪も鼻をかむためティッシュへ手を伸ばした。
だがしかし…
「あ、ティッシュ切れた…」
「じゃあ銀ちゃん買って来いヨ」
「よっしゃ!任せとけ!―――って、オイイイイ!!何で俺ー!?なんで俺限定!?いや、使ったの俺もだけど!俺も鼻かんだけど!!息をつく暇もなく俺を指名ってどういうことだオイ!?」
「女子供に花粉が蔓延してる外に出ろって言うアルか?普段仕事能力もなくぐうたらとしてて雪の旦那気取りしか能がないくせしてこういう時は公平にっていうつもりアルか?そんなの公平という名の不公平アル。」
「何花粉が危険物みたいなニュアンスで言ってるわけお前?っていうかさ、ねえ知ってる?父ちゃんだってね、傷つくときは傷つくんだからな?父ちゃんだってな、ちゃんと心を持った生き物なんだからな?父ちゃんは家族の中で一番繊細に出来てるんだからな!」
手を伸ばしたティッシュ箱には一枚もティッシュが入っていなかった。
買い置きを出そうにも、あまりにも鼻を噛み過ぎて置いてあった買い置きのティッシュ全てが空となったのだ。
外からも大勢のくしゃみが聞こえ、雪はついには手足も出始めた親子喧嘩を尻目にどうしようかと部屋を見渡した。
が、やはりどこをどう見てもティッシュは見当たらなかった。
「あ、そうだ…トイレットペーパーがあったんだった。」
ティッシュはないが、同じ紙の類にはいるであろうトイレットペーパーを頭に過らせた。
この際トイレットペーパーだろうがキッチンペーパーだろうが鼻をかめればなんだって良かった。
そう思い腰を上げようとしたのだが、その瞬間、くしゃみばっかりで苛立っていた神楽に吹き飛ばされた銀時が社長机の後ろにある窓へと突っ込んでしまう。
幸いにもガラスではなかったため大きな怪我はないが、雪は銀時に駆け寄る。
「ちょっと大丈夫ですか、銀さん」
「あー…だめっぽい…多分肋骨折れてるわ…それか背骨折れてるわ……でも雪ちゃんが看病してくれたら治る気がする…添い寝とか、添い寝とか、添い寝とか。」
「あ、大丈夫みたいですね、良かった良かった」
仰向けで上半身外に投げ出されている状態の銀時に声を掛ければ意外と平気そうな声が帰ってきた。
銀時の身体の丈夫さも、強さも知っているためそれほど心配はないから、いつものようにセクハラをかます銀時の発言をニッコリとスルーする。
しかしふと視界の端に何かが映り雪は銀時からその何かに顔を上げた。
「………何あれ…」
壊れた窓からは外の風景が見えた。
いや、見えるのは当たり前である。
だが、いつもの場所に最近まではなかったモノが見えるのだ。
あまりにも大きすぎるソレは―――木だった。
このーきなんのききになるきー、と歌いたくなるほど大きく、そして立派だった。
何故今まで気づかなかったのか…それともこの木は幻なのか……雪は幻なんだと望みながら目を覚ますため目をこすったが、雪の黒々とした大きな目にはやっぱり大きな木が映っていた。
気のせいか若干黄色い粉のようなものが浮いているように見える。
「銀さん…神楽ちゃん…」
この木は自分だけ見えているのか…そう思うほど周りにいる人たちは見向きもしていない。
くしゃみのし過ぎで…または鼻をかみ過ぎで自分だけしか見えない木が見えているのかと雪はまた不安になり、銀時と神楽を呼んだ。
名前を呼ばれた二人は顔を上げたその時、チャイムが鳴る。
「いませんよー居留守ですよー」
「正々堂々と居留守って…」
神楽は出るのが面倒なのか、チャイムが鳴っていようが鼻をほじりながら居留守だとはっきり言った。
声も大きく訪問者にはバッチリ聞こえていただろうが、神楽には関係なかった。
神楽は出る気ゼロ、銀時は血だらけ。
結局、雪が出る羽目となりいつものように雪は玄関へ向かう。
「はいはい、今でますよ」
くしゃみも止まらない苛々は雪にもあるのか、突然の訪問者に少し投げやりに対応し、雪はガラガラと玄関を開けた。
玄関の扉を開け、訪問者がいるであろう前を見ても目の前は青色一色。
天気はいいのに少し薄暗く、威圧感も感じ、雪は首を傾げながら何となく上を見上げた。
上を見上げればそこにはちょこんと可愛いピンク色の花が一輪咲いていた。
そして同時に映る"ソレ"に雪はそのままの体勢で固まった。
「どうも初めまして、今度裏隣りに越してきました…ヘドロです。」
ソレ、とは…一輪の花を頭のてっぺんに咲かせている…鬼のように恐ろしい形相の、天人だった。
その天人を見た瞬間雪は氷のように微動だにせず、雪の様子に気づいたらしい後ろにいた銀時も雪と同様固まっていた。
因みに神楽は相変わらずである。
ヘドロと名乗った天人は一歩二歩と玄関に入り、雪はそれに合わせて一歩二歩と後ろに下がる。
「今日はご挨拶にあがりました…僕、花屋をやっていまして……お近づきの印にコレ、どうぞ」
勝手に入ってきたヘドロに誰も何も言えず、ヘドロは挨拶に来たと自分で言った通り、頭を下げ引っ越しの挨拶を口にする。
お近づきの印、と言って雪に渡したのは一輪の花が植えてある植木鉢だった。
何も言わない雪達をよそにヘドロは最後に『色々とご迷惑をおかけするかもしれませんが、なにとぞよろしくお願いします』と頭を下げ、そして、ようやく坂田家から出ていった。
雪はカンカンとヘドロが階段を下りていき足音と気配が消えたのを確認するとピシャリと玄関の扉を閉めた。
そして雪は銀時と神楽へと振り返り……
「「恐ェェェェェ!!!」」
銀時と雪が同時に叫んだ。
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