(2 / 5) さくらんぼってアレ桜の木になるの? (2)
くしゃみと鼻をかむ音しかしなかった万事屋の家に恐怖の叫び声が追加される。


「恐ぇぇよ!なんだよアレよオオ!!隣のヘドロめちゃ恐エエエ!!」


恐怖を感じたのは何も雪だけではない。
銀時も同じくヘドロに一瞬にして恐怖を抱いた。
叫んだ後雪はハッとさせ先ほどまで銀時が突っ込んでいた窓へと駆け寄り、雪が部屋へと入っていくのを不思議に思いながらも追いかければそこには大きな木とその頂上辺りに建てられている家らしきものが見えた。


「こ、これってひょっとしてあれですか!?あれヘドロの森ですか!?」

「何なんだよあれ!!めっちゃ花粉飛ばしてねえか!?あれ!!」


突っ込んでいた時は痛みと衝撃で見えていなかったらしく、改めてヘドロの家らしき木を見た銀時は雪以上に驚いていた。
しかも雪は何となく見えるかもしれないけど気のせいかもしれないぐらいにしか認識していなかった黄色いソレが今でははっきりと花粉にしか見えず、最近の花粉症騒ぎの原因が分かり納得する。


「どうりでみんなほったらかしにしているはずですよ…クレームつけたら殺されそうだもん」

「オイオイ…とんでもねえのが引っ越してきちまったな…」

「でもお花屋さんって言ってたヨ」

「馬鹿言ってんじゃねえよ!どう見てもあの面、地球を征服しにきた面だろうが!昼間は花屋で夜は本業の地球征服してんだよ。昼は淑女で夜は悪女どころじゃねえぞ、こりゃあ…」


ヘドロは周りの住人にも雪達のように挨拶に回っていたのだろう。
だからみんなヘドロの家らしき木を見ても何も言わず…いや、何も言えず見て見ぬふりしているだけだったのだろう。
それを知り雪は疑問が一つ解決した。
が、あまり嬉しくはなかった。
雪が一人納得していると神楽は銀時の『花粉で人々を弱らせてから地球征服する心算なんだよ』という説明に『マジでか』と本気にとらえていた。
その説明を雪も聞きながら雪は何かを思い出したように『あっ』と声を零す。


「え、じゃあ…さっき貰った花…あれ……もしかして…」


銀時の説明を聞きながら雪は先ほどヘドロから貰った花を思い出す。
そして花を置いた机へと振り返り、雪に釣られて銀時と神楽も同じく花へと振り返った。
雪の呟きが切れ静まり返ったのだが…銀時達は叫び声をあげヘドロから貰った花から逃げるように玄関に繋がる廊下へと走って逃げる。
だが神楽は定春が来ていない事に気づいた。


「定春早く来るアル!爆発するヨ!!」

「え!?爆発するの!?」

「定春の事は諦めろ!!早くしないと毒ガスが…!」

「え!?毒ガス出るの!?」


神楽は定春を迎えに行こうとするもそれを銀時と雪が止める。
定春に必死に手を伸ばすが2人が引き止めているためその手は定春には届かない。
しかし定春はそんな神楽の気持ちも、銀時と雪の焦りや恐怖もよそに呑気にクウクウと鼻提灯を出し眠りこけていた。


「定春ーーっ!!こんなとこでお別れなんてひどいヨ!!」


万事屋の中で一番定春を可愛がっているのは神楽である。
餌等は雪、散歩は銀時と何故か定着してしまったが、一番可愛がり、一番定春と遊んでいるのは神楽だった。
と、いうか夜兎族である神楽以外に三人の中で定春に力で勝てるのはいないためでもあった。
そんな可愛い定春を見殺しには出来ないのは当たり前で、神楽は涙を流しながら手を定春に伸ばすが銀時達に邪魔されてしまう。
必死に2人が説得しようとするも神楽の耳には届かず、無我夢中なのか偶然神楽の手が雪に辺り、振り払われた雪はその力に叶わず玄関前で吹っ飛んでしまう。


「回覧板デース」


地面とお友達になっている雪をよそにガラリと玄関の扉が開かれ、花粉対策なのかマスクをしているキャサリンが回覧板を回しに来た。
叩き付けるように回覧板を雪の傍に置いたキャサリンに気を失いかけていた雪はハッと我に返り目を開く。


「キャサリン!てめっ!回覧板なんて回してる場合じゃねえだろうが!!!地球が征服されっかもしれねえんだぞ!!」

「ハァ?鼻水ガ脳ミソニマデ回ッタノカ?アホ。」


呑気に回覧板を渡しに来たキャサリンに銀時は叫ぶ。
しかしキャサリンにはヘドロの恐ろしさが伝わらず、更にはアホとまで言われ、言い返すよりも早くキャサリンは玄関を乱暴に閉め姿を消した。
そんなキャサリンに突っ込む気力がない雪は目の前に落ちる回覧板の表紙をめくり、ヘドロを見たときと同じように凍り付いた。


「ぎ、銀さん!大変です…!!回覧板…次…っ!隣のヘドロさんちです!!」


一瞬凍り付いた雪は一人夜兎を抑え込む銀時に慌てて声を掛けた。
回覧板の回す順番が書かれている場所を見れば、お登勢と書かれた判子の次に空欄があり、そこは当然順番からして坂田家である。
だがその次の欄には……ヘドロと書かれていた。
銀時は雪の言葉に


「うそ…」


そう呟くしかなかった。


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