(1 / 16) 子作りは計画的に (1)
夕方。
珍しく来た仕事も終え、雪は買い物に出かけていた。
神楽は仕事を終えた後遊びに出かけ、銀時は甘い物が食べたいと雪の買い物について来ていた。


「雪−、今日の夕飯、何?」

「そうですね…今日のチラシ見たらお肉が安かったので唐揚げにしようかなって思ってます」


丁度今日の仕事の報酬がすごく良く、溜まっていた支払や必要な支払いをしてもまだ多少余っており、お肉を買えるのだ。
大食いの神楽がいるため唐揚げなどお肉の量がいる料理はそうそうできず、雪の言葉に『からあげかー…久しぶりだな』と銀時はそう呟いた。
そんな銀時の呟きに『そうですね』と返しているとふと雪は視界の端に写った物に足を止める。


「どーした?」


足を止める雪に気づき、一歩二歩と進んだ後銀時も立ち止まり、雪に振り返る。
雪は銀時の声にハッとさせある物を指差す。


「これ、可愛くないですか?」


これ、と言われ雪が指差したのを見るとそこは服屋だった。
普通のオシャレな服屋ではなく、ごちゃごちゃしており手作りの値段表示の紙があちこちに張られ、その文字は派手派手に描かれていた。
そんな店の中で雪が指差したのは、パジャマだった。
それも動物の着ぐるみパジャマ。
男の銀時からしたら見向きもしないであろうパジャマに銀時は適当に『可愛い可愛い』と返すも、適当な口調の銀時に『思ってないでしょ…』と雪が不貞腐れた。


「神楽ちゃん、パジャマ1つしか持ってないから買って帰ろうかなぁ…」

「いや、あいつこういうの嫌がんだろ」


神楽は地球の人間ではなく、夜兎と言う種族である。
事情があり地球にやってきて成り行きで銀時の所で暮らしていた。
その時神楽が持ってきた荷物は少なく、今でこそ雪がお金があった時に買ってあげたりしながら服は増えているが、当時はあってニ三着だった。
普段着は破けたり汚れたりで消耗品だが、パジャマは人様の目にそれほど触れないというのもありどうしても後回しにしてしまう。
神楽はパジャマを一枚しか持っていない事を思い出し、お金も手に入った事もあり雪は前々から神楽にパジャマを買ってあげたいというのもあってか丁度のタイミングで見つけた着ぐるみパジャマの購入を考えていた。
だが銀時はそれを否定する。
良い意味で活発、悪い意味で暴れ馬、な神楽に上下が繋がっておりトイレがしずらそうなパジャマを買え与えても『こんなんいらないネ』と切って捨てられタンスの奥に仕舞われるだけである。
いつも自分に『無駄な出費はやめてくださいよ!』、と叱っているのに自分は無駄な出費するのかよ、と言いたいが、口の中で呟くだけに留めた。
そんな事を呟こうものなら即『誰かさんの出費は大きいですからね…パチンコとかパチンコとかパチンコとか』と返されるのは必須なのだ。
だから心の中で『これは無駄な出費じゃないんですか』と呟くだけで終わる。


「ついでだし私と銀さんのも買いましょう!」

「いや、俺はいいわ。」

「銀さんは何がいいですかね…これなんかどうですか?可愛いですよ!」

「いや、だから俺はいいって言ってんじゃん…っていうか願い下げだよコノヤロー」


このお店でもセールをしており、ついでだからと着ぐるみパジャマを自分や銀時の分も買おうとした。
雪が選んだのは淡いピンクのプードルの着ぐるみパジャマだった。
この時点で何かおかしいところ満載である。
『男にピンクのプードルっておま…』…と思いながら銀時は遠慮したかった。
まあ、雪が喜ぶなら…という考えもなくはないが、正直繋がっているパジャマはトイレが面倒というのあり、そして自分がそんな可愛いパジャマを着るという想像が全くつかず断ったのだ。
いい歳してそんなん着れねえし、と零す銀時に雪は『そうですか?』と小首を傾げながら残念そうにパジャマを戻した。


「ほら、買いもんいくぞ」

「はい…」


銀時は雪が今持っている銀時用のピンク色のプードルの着ぐるみパジャマを再び手にレジに向かう前に、と雪の腕を掴み店から離れた。


「あ、じゃあ姉上も入れたら…」

「いや、人数の問題じゃないから。」


どうしても諦めきれない雪の言葉に銀時は弱弱しく突っ込む。





その夜、妙が今日いないため泊まることにした。
夕飯を食べた後それぞれのタイミングでお風呂に入る。
今日の一番風呂は神楽だった。
家長である銀時は特に一番風呂が好きなわけではないのか気にもしておらず、今日も最初にお風呂場へ向かった神楽を尻目にテレビに夢中だった。


「銀さん、お茶どうぞ」

「おー、あんがと。」


食事も終えたという事で雪は食器などの片付けが終わると冷蔵庫からお茶の入っている容器を取り出しお盆に乗せた後三つのコップも伏せたまま乗せる。
食後は動くのが億劫なのか銀時は雪が持ってきたお茶を手に『丁度飲みたかったんだ』と喉を潤す。
お風呂から出る神楽の分である空のコップをお盆に残し雪も自分のコップにお茶を注いで飲む。


「出たヨー」


他愛ない話を銀時とテレビを見ながらしている内に神楽が出てきた。
ほかほかと湯気を上げ髪を拭いながら出てきた神楽は用意してあった自分のコップに手を伸ばしお茶を注いで一気に飲み干した。
よっぽど喉が渇いていたのかもう一杯、とまたコップにお茶を注いで飲む。


「雪、今日泊まるアルか?」

「うん、そのつもりだよ」


喉を潤した神楽はまたコップにお茶を注ぎながら雪に問う。
妙から電話が来たことは知っていたが、すぐに意識を別の所へと移してしまったためその内容までは分からなかった。
別のところへ意識をやってしまいながらも雪が電話を切った後内心すぐに『帰る』と言って志村家へ戻ってしまうかもしれない、という不安が積もっていた。
しかしだからと言って本人に直接言うのもまだ照れがあり言えず今の今まで不安のまま過ごしてきた。
お風呂の間だって出たら雪はいなくて銀時と定春しかいないんじゃないかと思うとゆっくり浸かってられなかった。
母を幼くしてなくしてしまったからか、神楽は無条件に甘やかしてくれる雪が好きだった。
取ってつけたようだが銀時も勿論大好きである。
短くも長い時間を過ごしてきたこの2人が神楽は好きだった。
だから神楽は雪に触れるのが恐ろしいのだ。
不安に思いながら風呂から上がれば雪は銀時と向い合せに座り冷えたお茶を飲みながらテレビを見ていた。
その姿を見て神楽は2人に気づかれないよう小さく安堵の息をつき、何気なさを装って喉が渇いたとお茶を注いで飲んでいた。
そして腰を上げる気配がない雪に神楽は少しだけ勇気を出して聞き、頷いた雪に神楽はホッとさせる。
表情に出す照れもあって神楽本人は隠しているつもりだが、銀時と雪にはバッチリ嬉しそうな表情を見られ、2人はお互い顔を見合い笑みを浮かべた。
雪が今日、泊まると知り嬉しさから2人のやり取りに気づかない神楽はコップを持ちながら『じゃあ、雪、髪拭いてほしいアル』とコップを持っていない手でタオルを渡し雪の前の床に座った。
それはいつもの事で、自分の足の間に座る神楽に笑みを浮かべ『いいよ』と濡れている髪をタオルで拭ってやる。
自分の髪ではないため優しく拭い、神楽はそれが嬉しくて、そして雪の手が気持ちいいのか、膝を立てながらギュッとお茶の入ったコップを握り、目を瞑りジッとされるがままだった。
その姿は仲のいい親子、又は姉妹で、銀時は2人のやり取りやその姿を目を細め見つめていた。


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