あの後、爆弾で茨を取り除きすぐに電波が届く場所まで移動し警察に連絡した。
高遠とジゼルだけではなく、二年前の火災の事で冬野も警察に引き渡すことになり、あの連続殺人犯がいるということで警察も緊張した面持ちでやってきていた。
すでに事件は解決したものの、仕事のため現場写真や金田一達も話を聞かれたりなど帰れたのは日が大分落ちた時だった。
彩羽は明智との二日ぶりの再会に力いっぱい抱きしめられた。
圏外だったとはいえ二日も連絡が付かず心配させてしまったらしい。
『苦しい』と言っても『心配させた罰だ』と言って力は抜いてもらえなかったが、彩羽は嫌ではなかった。
苦しいといっても息が出来ないほどではなかったし、それほど自分を心配してくれたのだと分かるため、嫌というよりは少し嬉しかった。
―――その次の日。
学校だった彩羽達は勿論怪我もないため登校し、その放課後に白樹と話していた。
すると白樹から驚く話を聞かされた。
「ええ!?」
「佐久羅さんが先生の離れ離れになっていたお兄さんだったんですか!?」
それは白樹の生き別れの兄が佐久羅だったというものだった。
驚きが隠せない金田一と美雪だが、彩羽は驚く様子は見せなかった。
「初めは高遠さんかと思っていたのよ…」
「じゃあ十字の痕は?」
「火事の時にね…一緒に住んでいた時の兄ぐらいの男の子を助けようとして…あの時握りしめていた手すりのせいでこんな火傷の痕になってしまったの」
ジゼルと同じく白樹にも手の平に十字架の火傷の痕が残されていた。
それを聞けば記憶にある兄と同じ年頃の男の子を助ける際についてしまったようで、佐久羅も白樹同様自分の記憶にある妹と同じくらいの女の子を助けようとしたのだが…男の子も女の子も助ける事ができず亡くなってしまったらしい。
「二人ともずっと罪の意識があってあの招待を受けてしまったの」
「でもよかったです…高遠とジゼルの兄妹対決は最悪だったけど…」
「先生とお兄さんは巡り合えたんですものね!」
白樹と佐久羅が見覚えのない人物からの招待にあの館にやってきたのは、それぞれ罪の意識があったからだった。
高遠とジゼルの兄妹対決に巻き込まれるという最悪な二日間ではあったが、白樹と佐久羅にとっては生き別れの兄妹との再会としてジゼルの招待を受けてよかったと思えた。
しかし、いい事はそれだけではない。
「あと…私達の再会の他にもね、いい事があったのよ」
そう言って白樹は彩羽へ目をやる。
金田一達ももう一つのいい事と言われ首を傾げながらも白樹につられて彩羽を見れば…
「千里さんと佐久羅さん、付き合うことになりました」
彩羽は笑顔でピースを作ってみせた。
金田一と美雪はその言葉に目が点となり…
「付き合うって…」
「千里さんと佐久羅さんが!?」
驚いた声を上げた。
驚く二人を見て白樹と彩羽はお互い顔を見合わせ、まるで悪戯が成功したように笑った。
「千里さんが探してた初恋の人が佐久羅さんだったらしいの」
千里もあのホテルに止まっていたため火災に巻き込まれてしまった。
炎に巻き込まれ危ない所を佐久羅に助けてもらったらしく、ピンチを救ってくれた男性に26年も恋愛すら知らなかった女性は恋に落ちたのだ。
初恋は実らない、つり橋効果だと言われてきたが、それでも千里は恋を忘れられにいたのだ。
ただ佐久羅に恋をしてはいたが、炎の中命辛々生き延びたせいもあってはっきりとした顔は覚えてなかった。
だからジゼルの招待を受け薔薇十字館にやってきたのだ。
出会った場所は薔薇に関する事だったから、もしかしたらその人も来るかもしれないという僅かな希望をもって。
その人の事が分かるのか不安だった千里だったが、曖昧でもやはり脳に焼き付いた記憶は覚えているもので…すぐに佐久羅が初恋の人だと気付いたらしい。
そうして事件を経て現在、佐久羅と千里は順調なお付き合いをしているという。
佐久羅の妹でもあった白樹と仲良くなったのも偶然だが、その偶然が3つも重なっていた。
…否、ジゼルの妹である彩羽も偶然にも薔薇十字館にいた事を入れると4つも重なったということになり、金田一は『世の中こんな事ってあるんだなぁ』と思わず呟き、その呟きに三人が頷いた。
「ん?」
「どうしたの、はじめちゃん」
「いや…メールが着たみたいだ」
はぁ〜、と偶然とはいえ奇跡的な事が3つも4つも起きていたこの事件に思わず声を零していると、ポケットの中にあった携帯がバイブで震えているのに気付く。
ポケットから携帯を取り出しロックを外してメールを見たその時――金田一の表情が強張った。
「高遠が…脱獄した…!」
その言葉に美雪と白樹は驚いた表情を浮かべ…彩羽はぎゅっと拳を握りしめた。
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