桜樹と尾ノ上が亡くなった殺人事件が解決して数か月。
最初こそ騒いでいた生徒達もすでに冷めたように殺人事件の話題すらしなくなった。
巻き込まれた人間として初めの頃は事件を聞こうと話しかけてきた人達も次第に減った。
賑やかなのは嫌いではないが、野次馬根性で騒がしいのはあまり好きではない彩羽からしたらホッとするものがある。
「誰かナプキン持ってない?」
昼休みの食後の穏やかな時間。
美雪の友達と話しているとトイレに行っていた友人1人が戻ってきて小声でそう聞いて来た。
彩羽は一瞬何を言われたか分からなかったが、呆けている間に友人の一人がポーチを出して渡す。
「ナプキンとタンポンどっちも入ってるから好きな方使っていいよ」
「ありがとう!油断してて持ってくるの忘れてたんだよねぇ」
『あるある』と笑う美雪達に彩羽も笑ったが、その笑みは少し引きつっていた。
そんな彩羽に気付かず、友人の1人はポーチを渡した友人に話しかける。
「両方持ってるんだ」
「うん、主に使ってるのタンポンだけど、上手く入らない時とかあるからナプキンも持ってるんだ」
「へえ…私ナプキンしか使わないからなぁ」
「私も両方かな…でもタンポン使うようになってからはナプキンを使う数は減ってる」
「彩羽さんはどっち派なの?」
「えっ!?……ナ、ナプキン、派…かな…?」
黙って聞いているだけだった彩羽にも同じ質問が回され、一瞬頭が真っ白になったが咄嗟に適当に言って難を逃れる。
彩羽の答えにナプキンを使ってる友人たちは『仲間だ〜』と喜ばれたが、タンポン派からしたら『タンポンの方が楽だよ〜』と勧められ彩羽は曖昧に笑った。
美雪も話題に入っており彩羽の様子は誰も気づいていなかった。
(何をしゃべっているのか分からない…)
笑みを浮かべながらも自分から気を逸らされホッとしたが、内心顔が引き攣りポツリと呟く。
その間も美雪達は生理の話で盛り上がり、トイレに行っていた友人も加わり、次第に生理から別の話題になっていった。
それでも彩羽は笑顔を張り付けるだけで、気分は沈んでいた。
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