今日は早めに上がる事ができ、明智は二人で作った料理を食べながらふと彩羽の様子が可笑しい事に気付く。
「彩羽?どうした?」
「え…な、なにが?」
「ぼうっとしていたからどうしたのかと思ってね…学校で何かあったのか?」
明智は先ほどから手が止まっている従妹に気付き声をかける。
帰って来てからも思ったが、彩羽は呆けて食事もあまり進んでいる様子はなかった。
幸いな事に料理中に怪我がなかったが、それは明智が心配して見ていてくれたから怪我がなかっただけである。
彩羽としては無意識だったのか明智に言われて初めて自分がぼうっと呆けていた事に気付き目を瞬かせた。
従兄が『学校でいじめられてるのか?』と内心思いながら心配そうに問えば彩羽からは首をふられ一先ずほっとする。
彩羽が隠している可能性もあるが、表情や反応からして可笑しなところはなかったので今は信じる事にする。
「私ぼうっとしてた?」
「ああ…何か悩みがあるのか?私でいいなら相談に乗るが…」
「悩み…」
無自覚だった彩羽を明智は何か悩みでもあるのかと心配そうに見つめた。
彩羽はやっと家の束縛から解放され自由の身になった。
だからその分悩みも増えたのかと心配になり、言いにくくなければ何でも相談に乗るつもりだった。
彩羽は思春期だし自分とは違う性別を持っているから乗れない相談もあるが、彩羽の力になりたかった。
彩羽は従兄の言葉に思案するように黙り込む。
「………悩みは…ない、かな…」
「……そうか…」
彩羽は悩んだ。
従兄に話そうかとも本気で思ったが、男性に話ていい話題なのか迷っていた。
きっと話せば従兄も真面目に一緒に悩んでくれるかもしれないが、話にくい話題というのもあって結局彩羽は首を振る。
「ないならいいが…もし何か悩んでいたのなら遠慮なく言いなさい…相談に乗ることくらいは出来るから」
明智はそれが嘘だという事は見抜いていたが、彩羽が言わないのならその気持ちを尊重することにして気になるが何も聞かない事にした。
しかし、気軽に相談してほしいという想いだけは伝え、その言葉に彩羽は頷いてくれた。
それだけで今は十分だという事にしようと見守る事にした。
『ありがとう』とお礼を言って笑う彩羽に明智も笑みを返した。
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