私は昔から見ている夢がある。
その夢の中の私は3・4歳で美しい黒髪の女性に連れられエジプトの王家の格好をする男性の前に連れられていた。
その女性はエジプトの女性ではなく東洋人…顔を見る限り日本人だった。
後ろには誰もいなくて母だと思われる人と私だけが長い階段を登って男のもとへと向かう。
「王…」
「---…よく参られた…待ちわびたぞ?」
母の名を呼んだのだろうが私には聞こえなかった。
男は女を愛しそうに見つめ、私にも目をやるがその目もとても愛しそうで私に近づいてくる。
私は戸惑い母だと思われる女性の服をぎゅっと握るが男はそれでも愛しそうに目を細めゆっくりと抱き上げる。
突然の浮遊感に私は男の服を握り落ちないように引っ付く。
「ハヅキ…わたしの可愛い子…よく来てくれた」
私はその男の言葉に子供特有の喋り方で
「あなたがハヅキのとと様ですか?」
と聞くと男は何度も頷き『そうだ』と言った。
そして場面は急に変わり私は少年の手に引かれ、宮殿を歩いていた。
「お兄様」
私は目の前の少年を兄だと言っていた。
口が勝手に言っていた。
兄は私の手を黙って手を引いていた。
「どうなさったのですか…はは様はどこですか」
「ハヅキ、---様は………」
そこで私の夢は途絶える。
チュンチュン、と小鳥の声に耳を傾けながら私はキャロルの部屋に入る。
広い部屋にカーテンから朝日の光がもれて部屋は薄暗く、ベットには蓑虫のように布団に包まって眠るキャロルがいた。
「キャロル、起きて…キャロル…」
「うーーん…あと5分〜…」
「もう…遅刻するわよキャロル!」
「わっ!!」
中々起きないキャロルの布団をガバッと剥ぎ取って無理矢理キャロルを起こす。
ゴロゴロと転がっていくキャロルは金色の髪をボサボサにしながら起き上がった。
「ひどーい!ハヅキったら!」
「あと10分で学校始まっちゃうよ?」
「え!?嘘!!!」
私の言葉に一気に目が覚めたキャロルはヤバイと言って着替えるがその早業にはいつも感心させられる。
キャロルは髪の毛を梳かしながら朝食を取りにリビングへ向かうとライアン兄さんに呆れたような目で見られてしまう。
「やっと起きたかキャロル」
「えっと…エヘ☆」
「笑って誤魔化すな。」
「キャロルもいい加減一人で起きれるようにならなきゃハヅキに愛想を尽かされるよ?」
ロディ兄さんの笑いながら言ったその言葉にキャロルは一気に顔が青ざめ食べていたトーストが皿に落ちる。
そして慌しいキャロルのカバン等を用意していた私に抱きつくのだが…もはや抱きつくのではなく、縋り付くに近かった。
「えー!?それ困るよ!!ハヅキ!私明日から一人で起きるからね!!!だから見捨てないで!」
「キャロルったら…私はまだ愛想を尽かしてないから大丈夫だよ」
「え、ちょ…まだってどういうこと!?」
「というかキャロルのそのセリフ何回目だい?」
「さあな…とりあえずお前は嫁に捨てられそうになる夫か?」
呆れて物も言えないとライアン兄さんは溜息をつき、ロディ兄さんは相変わらず笑っていた。
時間も時間なのでキャロルに朝食を食べさせ学校に向かうため、家を出る。
「行ってきまーす!!」
「行ってきます」
「車には気をつけろよ?」
「送ってってやろうか?」
「いいわよ!ハヅキと一緒だから!」
お父さんは今日朝早く出勤してしまった為いないがライアン兄さんは私とキャロルが心配でいつも送っていこうとする。
でも私達はそれを断って二人で歩いて登校するのだ。
その理由は…
「もう…ライアン兄さんったら相変わらずね!」
「私達が心配なんだよ」
「それは分かってるけどさー…」
「おーい!キャロル!ハヅキ!!」
「ジミー!!」
後ろからやって来たジミーがその理由である。
キャロルとジミーは所謂恋人同士で惹かれあって一秒でも一緒にいたいのだ。
まあそのため私が犠牲になっているんだけど…
どうせ私は一人寂しい独身少女ですよ…(誰もそんな事言ってない。)
ジミーは真っ先にキャロルの傍に駆け寄り、朝の挨拶をする。
一応呼ぶときに私の名前が出たが多分それはいつも一緒に居るから癖なのだろう。
案の定ジミーは私に気付いたのかやっと目を合わせて挨拶をしてくれる。
「ハヅキ!おはよう!」
「おはよう、ジミー。キャロルに夢中で見えなかった?」
「ア、アハハ…えーっと……ハハ…」
乾いた笑いしか出ないジミーに私は愉快そうに笑う。
そして登校するのだが、キャロルを真ん中に私とジミーが挟む形で登校する。
「キャー!ジミー!!こっちむいてー!」
「ジミー!」
「キャロルーー!!!」
学校へ着くとキャアキャアと黄色い声だらけ…
ジミーは学校で結構人気があり、優しいからジミーが好きな女の子達が沢山いる。
キャロルだってそう。
誰にも分け隔てなく接してくれて明るくて、可愛くて性格もいい子だからこの2人は人気がある。
そのお陰で私は引きたて役なんだけど…まあイジメもないし悪口だって聞いた事ないからいいか、とも思ってる。
「相変わらずの人気ぶりね、2人とも…」
「何言ってんだ。ハヅキも結構人気なんだぞ?」
「私が?まさか!冗談やめてよジミー」
「嘘じゃないって。大和撫子だって男子から密かに思われてんだぞお前。」
「…それ日本人だからでしょ?」
いや、別に期待しているわけじゃないから!
だから落ち込んでなんかいないもん!
…まあ、ジミーが言うように私は日本人です。
私はリード家の娘でもあるけど実は養子なのだ。
子供の頃、私の両親は交通事故で亡くなり、行く当てもない私をお父さんに拾われた。
話しに聞くと両親とお父さん達は友人同士らしく、私の家は普通の家庭だったからリード家に慣れるのは結構時間がかかった。
それでもお父さん達は私を本当の娘や妹として可愛がってくれて、得にキャロルは姉妹のように仲がいい。
「実習楽しみだな〜!」
「本当にキャロルは考古学が好きね」
物思いに耽っていたらキャロルのご機嫌な声に我に返り、キャロルに微笑を向ける。
ジミーを想いつつ常にキャロルの頭の中にあるのは古代エジプトの発掘や文化などだ。
たまにジミーが可哀想だと思うときがあるほどキャロルは夢中なのだ。
それはもう、ジミーのおじいさんであるブラウン教授に1番弟子だと公言されるほどに。
バスに乗り込んで実習へ向かって相変わらずな教授の語りが始まってそれを聞いていると下からロディ兄さんの声が聞こえ、覗き込む。
「キャロル!ハヅキ!!」
「あらロディ兄さん、どうしたの?血相変えて…」
「2人とも大事件だ!迎えにきたんだよ!早くテーベの丘の王家の谷に行くんだ!」
「え…なんで?」
「王の墓を見つけたんだ!!」
下にはロディ兄さんが慌てた様子で私とキャロルを呼び、私達はロディ兄さんの言葉に目を丸くしてお互いを見合って声を上げ、急いでロディ兄さんの居る下へと向かった。
「王の墓って…ロディ兄さんまさか…まさか…古代エジプトの…」
「そうだよ!王家の墓だ!ブラウン教授!父が出資して発掘している王家の谷の現場から新しい王の墓が発見されました!来てください!」
ロディの言葉に教授は大喜びしキャロルはロディに抱きつき、私とキャロル、ジミーがロディ兄さんの車に乗りみんなもバスに乗ってその場所へと向かう。
その場所はもう既に人だかりが出来ており先ほど開けたばかりだという入り口へ入っていく。
そこは薄暗く、明かりがなければ真っ暗だっただろう。
作りも他の墓とは違っていて、珍しさにみんな目を奪われてしまう。
しかしそこは行き止まりになり急に床が崩れてしまい全員が転げ落ちてしまう。
「いやー!真っ暗!怖い!!いやー!!」
「キャロル!離してくれっ!」
「なんて声を出すんだいキャロル」
落ちたせいで火が消えてしまってキャロルが悲鳴を上げてジミーにしがみ付く。
その声は洞窟の中だから余計に響き、ロディ兄さんは耳を塞いだ。
しかし私はそんな事は構ってられなかった。
「ハヅキ?ハヅキいるかい!?」
「に、兄さん…っ」
段々目も慣れて来たのかロディ兄さんは座り込んでいる私に気付き駆けつけてくれる。
「大丈夫か!?」
「足くじいたみたい…」
そう、私は落ちるとき足をくじいてしまって立てなかった。
このまま気付かれなかったらどうしようと思っていたがどうやらロディ兄さんが気付いてくれたのでホッと胸を撫で下ろす。
私は歩けないのでロディ兄さんに背負われ先に進むと金色に光る大きな部屋を見つける。
「おおー!!発掘したぞ!これぞ王の玄室だ!!」
「王のミイラを納めた黄金の人型棺が安置されてるわ!」
教授とキャロルが周りの人以上に大はしゃぎして大喜びして…とにかくテンションが高かった。
私はロディ兄さんに背負われて王の玄室を見渡す。
「凄い…」
「ああ…黄金だらけだ」
(なんか…懐かしい気がする…)
その王の玄室を見渡していたが何故か懐かしいと感じ、その中に悲しみも感じて私はロディ兄さんの背中で首を傾げる。
おお…わが妹よ……ハヅキよ…
考える事で頭が一杯で私はその声に気付かなかった。
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