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短い文章を思い出したものはまとめています。増えたり減ったりきまぐれです。主にSS名刺メーカーを打ち直しています。
【「余命365日の恋」by 創作のお題を決めましょう】
 近年のインディーズ小説の流行りらしい。巻き戻し、転生、やり直し、タイムリープ、タイムトラベル。それらはどれも幻想的で、ドラマチックな恋を演出する。「未来を識っているからこそ自分が本当に欲しい未来を探していく」という様は誰しも平等に与えられた“人生”という展開が読めない物語において、憧れや焦燥を抱かせるものなのだろう。故に不朽のテーマとしてそのような物語はあるのだと思う。
 だから“当事者”として意地悪を言いたくなるのだ。
「実際に未来を識っていれば、そうは思わないんじゃないかな」
 なんて。
 元々私は彼女がそばにいない日々が終わることを指折り数える卑しい男だった。彼女がどこかで元気で笑顔でいてくれればそれでいいと願いながらも、その実「彼女が私のそばにいてくれますように」と願い続けた。
 私が指折り数えたのだから“未来”という制限の方が私から彼女を引き離すよう、時が進んでいくこともまた自然なことである。

「私今年でもう二十歳なんですね〜何気に早いな〜、人生……」
 そう他愛ないことを呟く君に「そうだね、なんだか長かったようで本当にあっという間だ」と何度も頭の中で練習した言葉を伝える。
 君は知らないだろう、目の前にいる男が何を考えているかなんて、どれだけ自分勝手かだなんて。
 もう、長く見積もってもあと一年しかないのだと俯いているのかなんて。

2022/06/28

【お腹が空いて寄り道をする by 創作のお題を決めましょう】
「うちの子は世界一可愛い、でもよその子も可愛い」キンセツジムでお手伝いした帰り道、私はやせいのポケモンウォッチングをする。JKがタピオカ飲むのと同じだ。いわばこれは自分への福祉サービスで、ちょっとしたおやつみたいなものだ。
 だから私は「まだ帰ってこないの?」「いつ頃になりそう?」「もうお手伝いは終わったと聞いたけど…? バトルでもしているのかな?」とミクリから着信がきても「寄り道したいので遅くなります」としか返信をしないのだ。

2022/06/28

【宛名のないラブレター by 創作のお題を決めましょう】
 私を突き動かしてきた情動は恒星のようにあまりにも強く輝いて、私の行くべき道を照らし続けるものだった。
 貴方が好きです、貴方の全てが大好きです。貴方の考えが、夢が、志が、苦手なものがあるところも、優しいところも、厳しいところも何もかもが大好きです。
 私には昔からそれしかない。それだけが取り柄なのだ。

2022/06/28

【不安になる】
「だめだよ」
 後ろから、優美な言葉と共に目を塞がれて抱き寄せられた。背中にたくましい筋肉を感じて、ああこの人も男性なのだと意識させられる。
「君は私以外の男を見てはだめだ」
 普段、彼はこんなあからさまなことを言う人ではない。何か彼の中で不安になるようなことがあったのだろうか、とおそるおそる振り返れば、少し悲しそうな表情をしていた。
 憂鬱そうに、でもそんな自分が耐え難いと言わんばかりの複雑そうな顔。白い肌に映える碧い海色の髪、通った鼻筋、薄い唇、そして長い睫毛が伏せられることによっていっそ作り物のように感じられる。
 触れれば壊れるような、雪像のような完成された存在がそこにいる。
「他の男に目移りしてはいけないよ?だって、君は私を選んだのだから」
 彼はそう言いながら私に腕を回して強く抱きしめる。……でもそれは、ぬいぐるみを抱きしめる幼児の体勢に似ているじゃないか、と私は気が付いた。
「君は早い段階で私に見つかっていたもんね、それが君の運命だったんだ」
 軽快に、歌うように話していた言葉は一度だけ伏せられて「だからもう、二度と君を離しはしない。君と離れたりしない」と告げられる。
 ああ、そうか。この人はいつでもその恐怖と戦っていたのか、と気がつかされた。

「ミクリさん」
 その合図を聞くと、彼はほんの少し目を見開いてから、私の言葉を閉じる。

「いきなりお強請りだなんて、可愛いことをするね」
幾分か機嫌が良くなったらしい彼は、私の顎をくいと持ち上げて自分の目線の高さに誘導した。
「私は早い段階で、ミクリに見つけて貰ったことは、とてもありがたいと思ってるんです。だって貴方より好きになる人はいませんから」
 そう答えるだけで、さっきよりも翠玉に魅入られた。
 少し間を置いてから、ふっ、はっ、ははははっと笑われる。
「君には敵わないな」
「そうですか?」
 私も貴方には敵わない。私の目はいつだって、美しい貴方から離れることは出来ないのだから。

2021/03/12

【バレンタインデー ネームレスSS】
「はい、ミクリ」
「これは?」
「サンクスデイのお菓子だよ」
 そう言って渡すと、彼はありがとうと目を細めて笑った後に、開けて良いかと尋ねてきたため、私は小さく頷いた。
 最近はサンクスデイの手作りチョコキットもどんどん進んで、転写モールドというものも売りに出されている。モールド、つまり型にチョコを流し込んで取り出しただけで可愛いポケモンのかおや、ストライプ柄のチョコレートが出来ているのだ。
 そういった技術的革新もあり、メーカーの企業努力には頭が下がる一方だ。存分にお借りしました!
 今年は去年よりも見た目はお洒落だし、味も彼好みのはずだけど……それでもミクリはとってももてる人だ。比喩ではなく、抱えきれない箱一杯のチョコをたくさんの女の子から贈られる。
 そんな中で彼女とはいえ、私は自分なんてちっぽけだな、と思ってしまう。

「とっても美味しいよ」
 それでも、ミクリが私を見て微笑んで
「君からの贈り物さえあれば幸せだな」
「ふっふふふ、ありがとう!」
 そんなことを言うから、私もこらえきれなくなる。
「……こういうときほど、ありきたりな言葉しか出てこない」
 真剣に悩み始めた彼の横顔を見ながら、彼の隣に腰掛けた。
 そうだ、今私はここにいるじゃないか。そう自分の胸に手を当てた。

 いつもありがとう、ミクリ。どうかこれからも、美しくて優しい、大好きな貴方のそばにいられますように。

2021/02/14

「アザレア」
 声をかけて振り向いた彼女に、覆い被さるようにキスをする。後頭部と腰に手を回して、逃げられないようにしてから、薄く彼女の唇を舐めると、少しだけ口を開けてくれたので舌を入れた。彼女も私の背中に腕を回したので、今日は彼女の機嫌がいいな、と思いながらキスを続けた。
 息継ぎが必要だろうと一度離すと、かなり溶けた顔をしていたので、思わず笑みがこぼれた。彼女も、私と同じように夢中になってくれているのだ、と心が通じてまた唇で塞いだ。
 

2020/10/15

【寝言を言うときはだいたい悪夢】
 彼女はよほど疲れていたのか、今日は先に眠ってしまったようだ。聞こえてくる穏やかな寝息が可愛らしくて、自然と頬が緩んだ。
 こんなことを知ったら、彼女はひどく腹を立てるだろうな、と思いながら、彼女が健やかに眠る様子を見ていた。彼女の長い黒髪を手ぐしで撫でながら、向き合うように隣に滑り込んだ。
「ミクリ……ミクリ……」
 小さな声だった。寝言らしい。彼女は私の夢でも見ているのだろうか、と少し嬉しくなった。
 悪夢でないといいのだけれど。
「好き……だから……」
「うわ」
 これは、ずるい。さすがにずるい。
 大きく喉を上下させてから、ため息をついた。彼女の頬に触れると、口の中に空気を含んでいるのか、ふわふわとしていてさわり心地が良い。
「なんでこういうときに限って、君は先に寝ちゃうかなあ」
 そう独りごちながら、私は彼女を抱きしめて目を閉じることにした。かなり寝付けないだろうが、仕方ない。全部、あの子の寝言が悪い。

2020/10/12

【140字でお題ったー「言えない一言」】
「あの時君は、ずっと一緒にいると約束してくれたじゃないか」
 幾度その言葉が飛び出しそうとしたか分からない。それをなんとか飲み込むたびに、自分勝手だと落ち込んだ。あの時「何も知らなかった」と君が言った、それに全てが含まれていたのだと思う。今約束は果たされたが君には敵わないなと笑う。

2020/10/12

【140字でお題ったー「カーテンコール」】
 カーテンコールを望まれるミクリさんの背中はどこまでも遠く、私も彼のイリュージョンにとらわれたままなのだと気がついた。彼を望む声、彼を呼び声……一体感を増す歓声に私も胸を高鳴らせた。どこまでも続く夢のような時間。
「どうだった?」そう私だけに向けられた笑顔に見惚れて言葉が出なかった。

2020/10/12

【心音と重力】
この心音が、どこまで彼に伝わってしまっているのだろう。いや、全て伝わっているのだろうが、試合前の緊張だと許して欲しい。
 彼に抱き寄せられ、向かい合わせになるよう、膝の上に乗せられて、私も彼に腕を回して抱きついた。バクバクという耳に伝わる音を無視したくて
「私、重くないですか?」と聞いた。
「まさか、羽根のように軽いよ」
「本音で良いですよ」
 重いと言われてしまうかと身構えたが、彼は微笑んで話した。
「抱き心地がちょうど良いんだ。今の君が好きだよ」
 聞かなければ良かったかな、と曖昧に流した。

2020/10/12


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