『ああそうか、そうか……』
男性は“私”を見た後にひとしきり大笑いした。ああ、こんなに面白いことは人生で他にない、という具合で。
彼の少し潤んだ瞳は青い空とそしてまだ赤子だった私をしっかりと捉えていた。
男性の大きな手が私の頭をくしゃくしゃと撫でた。大きな手はゴツゴツとしているだけでなく、豆だこもできていて彼が剣を握ってきた歴戦の騎士であることを物語っていた。未熟な私はその時、彼がどの程度の地位にいる人間なのか想像が及ばず、「騎士団の人なのかな」としか思わなかったけれど、私の親が何も話さなくなったため、自分が思っているよりずっとえらい人だったのかもしれない。
男性は何かに納得するように、でも何かを懐かしむように笑い終えて、
『レナ、それがお前の名前だな』
そう言ってどこかに行ってしまった。
そして、彼が去って残された私の手にはしっかりとあのルーンが握られていた。ルーンにはわずかに彼のソウルが宿っていたのだろう。パレードの喧騒の中で確かに輝きを持っていた。
彼は必要なことしか言わなかった。
彼が誰なのか知りたかった私にとって、与えられた情報は満足のいく結果ではない。砂漠にコップ一杯の水を垂らして、これで満足しろと言いきられたような物足りさを感じた。
もっと喋ってみて欲しかった、もっとどんな声をしているのか聞きたかった。何を考えて、何を抱えて、どんな決意で人生を歩んでいたのか彼は何も話さなかった。
けれど――は満足げな顔をしていた。
その表情は今にも「バカだなぁ」と言いたそうな、悪戯ばかりの子どもを嗜めきれない親のような……そんな見ていたこちらがむず痒
「これが君の過去……だね」
「……みたい、ですね」
そう云った彼の横顔はやはりどこか“彼”に似ていて。
そのことは、このルーンを授けた――はやはり――――なのだという事実を私に突きつけた。
「だからやっぱりそのルーンは君に持っていて欲しいんだ」
――はそう仰って、どこか遠くを見る瞳は私が見たことがないような懐かしさを……そして言い表しいきれないような愛おしさや、悲しみ、あらゆる感情を内包し、強い光を孕