石マニアに何度もプロポーズしては振られているルネシティの女の子の話

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「ダイゴさん好きです!! 結婚して下さい!!」
 もはや日課になりつつあるその言葉をダイゴさんの背中にかければ、彼は困った顔で振り向いてくれた。
「うん、君の気持ちは嬉しいけど、それは難しいかな。ありがとう、ごめんね」
「はあ!! ちゃんと一度気持ちを受け止めてくれるところも好きです!! やっぱり結婚して下さい!!」
「うん、気持ちだけ受け取っておくよ。悪いけど、今日はこの後急ぎの用事でね。またね」
「はい!! また!!!!」
 私は元気よく手を振るとダイゴさんがエアームドの背中に乗ってルネの丸い空から出て行く様子を見ていた。


「君もこりないねえ」
「あっ、ミクリさん。うるさくしてごめんなさい」
 そうだ、一応ここミクリさんの家の前だった。家主に騒がしくしたと頭を下げると
「申し訳ないと思っているなら、二度と人の家の前で告白するのはやめてくれないか」
 と言われた。
 でもそれはうーん、と思ったけれど無理です、と断った。
「だって私、ダイゴさんが大好きなんです!! 何回振られたって、いいんです。諦めたくないんです」
「……それはそれは」
 そう、ジムリーダーであるミクリさんは美しい動作と共に微笑んだ。どちらかというと、もう勘弁してくれ、という顔をしていた。

 私は生まれも育ちもこのルネシティだ。
 ミクリさんのことは近所の年上のお兄さん、という感じで小さい頃たまに遊んで貰っていた。
 そんな私はミクリさんの友人、ダイゴさんに一目惚れしてしまう。もう、立ち姿、優しい言葉遣い、子どものような無邪気な笑顔――その全てに魅了されてしまったのだ。即落ち二コマ。
 ミクリさんにすぐ紹介して欲しいと頼めば
「やめておきなさい、あの男はね、本当はものすごく強いのに、あまりポケモン勝負をしないで、珍しい石ばかり集めている変わり者なんだよ。あいつは石の話しかしないような男だからね」
 と言われたが「えーー!! 好きなものに真っ直ぐな男性って格好いい!!」としか思わなかった。それを言えばミクリさんはがっくりしていた。
 なんでも、ダイゴさんはホウエンを代表する大企業、デボンコーポレーションの御曹司で、今はホウエン地方のチャンピオンも務めているというスゴい人物なのだそうだ、流石私の目に曇りはなかった。
 それこそ最初は一目惚れだったのだが、ミクリさんを訪ねてくるダイゴさんを無理矢理捕まえては話しかけ――という猛烈なアタックと共にダイゴさんを知れば知るほどその優しい人柄や、ポケモンや石への知識の深さ、そして彼の孤高のチャンピオンとして戦う強さに惹かれていった。
 こうして、気持ちは伝えないと伝わらないよね!! ということでめげずに告白しているわけだ。

「君はずっとルネにいるよね。旅に出るつもりはないのかい?」
 出て行けということだろうか、と思いつつも私は負けない。
「もちろんです! ルネに、いや、ミクリさんの近くにいたら確実にダイゴさんに会えますから!! 私諦めません!!」
 石の知識が無いなら勉強すればいい、気持ちを信じて貰えないなら信じて貰えるまで伝えれば良い、私は前向きさと粘り強さが取り柄なのだと母に言われたから、それをもって成し遂げればいいのだ。
「はあ、そうか。……君は変わらないな」
「はい!!」
 ミクリさんが呆れてそう言っているのは分かるけれど、私は私だ。簡単には諦められません、と言えば「そうか」と軽く流された。



◇◇◇

夢主ちゃん
ダイゴさんに一目惚れしたので出会ってはプロポーズしている。もう何年も続けているのでルネでは有名な話。

ダイゴさん
別に迷惑ではないけど、この子諦めないなーと思ってる。ミクリとは昔から友人

ミクリさん
人の家の前でいつも告白するのはやめてほしいし、早くダイゴのことは諦めないかなーと思っている。


続きはコメットパンチでぶっ飛ばしました。




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