レモンシャーベットは輝いて

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tydrお題の「レモンシャーベット」をお借りして書きました。


「実はシャーベット、好きなんだよね」
「えっ、そうなんですか」
 ミナモシティに最近出来たというシャーベット店はSNSで見た目が可愛くて美味しいと話題になったからかやっぱり混んでいて。そんな人とポケモンでごった返す店に恋人のダイゴとプライベートでやってきた私は後悔した。溢れんばかりの熱気が一斉にダイゴに向けられて……とてもくつろげるような雰囲気ではなかった。彼は店内で並んでいたのにも関わらずファンとの写真撮影やサインに快く応じると、出来上がったシャーベットを笑顔で受け取って店員も悩殺。このシャーベット店は違う意味でもまた話題になるだろう。私は商売繁盛と店員さんの健康を願って合掌。
「ダイゴさんって石にしか興味がないんだと思っていました」
「そんなことないよ、流石にそれは言い過ぎじゃない!?」
 恋人である私ですらそう思うのだから、きっとあながち間違いではないのではなかろうか。ダイゴさんはホウエン地方のチャンピオンなのにフラフラとリーグを不在にしてはミクリさんにその重責を押し付けている。そしてそのように放浪する理由は「石がボクを呼んでいたから」という彼の周りの人間が思わず項垂れたくなるようなものだった。
「だってほら、見てみて」
 彼はそう言って、シャーベットを光に晒してみせた。夏らしいさっぱりとしたレモン味のシャーベットは日差しを乱反射して輝いていた。
「こうやって見ると、クンツァイトみたいで綺麗でしょう?」
 少年のように笑う彼の瞳は限りなく美しくて。
「そうですね、綺麗ですね」
 何とも彼は期待を裏切らない人だなあ、でも、そんなところが好きだなあと思って……私は徐々に笑いを抑えられなくなり、最後には店外にも聞こえるほど大声で笑っていた。





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