「I have a bad feeling about this.」
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return of happiness

いつもは気にせず入れる二宮隊の作戦室も今日は入るには少し勇気が必要だった。
二宮さんに事前に彼がこの後予定がないことは確認済み。
ひゃみちゃんに伝言をお願いして、作戦室で一人待ってもらっていた。
直接待ち合わせの事を本人に言うのもいいかと思ったけど、勘が鋭い彼に顔を見られたらいろいろとばれてしまいそうで、ここ数日会っていなかった。
辻君に昨日「まさかとは思いますけど、喧嘩でもしましたか?」と聞かれたけど、あわてて否定した。
「明日の誕生日の事ばれたら嫌だから会わないようにしている」と辻君に言ったら、「わかりました、それとなく伝えておきます」と言われた。
何を伝えるつもりなのか。
作戦室のベルを鳴らすと、すぐに開く扉。
「待ってたよ〜遅かったね」
出てきたのは彼で、すでに換装を解いて私服だった。
「遅くなってごめん」
待たせたことを謝る。
時間には余裕を持って来たとは思ったが扉の前でかなりの時間瞑想していた気がする。
「とりあえず中入りなよ」
彼に促されて作戦室へと入ると、テーブルにはすでにもらったのであろうプレゼント達が並んでいた。
チラッと見えた中身はプラモデルやらお菓子やら。ぶどうも見えた。
「いっぱいお祝いしてもらったんだね」
「ん……?ああ、これね。うん」
彼もプレゼントの山をチラッと見てからこちらへ視線を戻した。
「それも嬉しいけど、尚美チャンからのプレゼントは何かなーって気になってる。しばらく会わなかったのもそれが理由なんでしょ?」
彼に自分が後ろ手に隠しているものを指さされた。私は右手に持っているものを彼に見えるように目の前に出した。
「出来たらでいいんだけど……無理だったら断ってくれて良いよ」
前置きしてから封筒を渡す。
「なに?開けてもいいの?」
彼に聞かれて、当たり前だと頷いた。
静かに封筒の封を開け中身を見始める。
「……飛行機のチケットだ」
そう言いながらチケットを持った手を高くあげた。
「うん、一緒に旅行したくって。海、見に行かない?」
飛行機が好きな彼と一緒に飛行機に乗って海を見に行きたい。それと水族館。景色の綺麗なところに行きたくて思い切って彼を誘ってみた。
少し先になるけど、大学の夏休みを利用して2泊3日の旅行。
断られたらどうしようかと思って俯いて返事を待つ。
「ここなら車の免許取ったほうがいいね。おれ、それまでに免許とるよ」
「……私も取る」
一緒に行ってもいいという彼なりの返答だと気づいて私もそう答えた。
2人で知らない土地をドライブするのも楽しいかもしれない。
「海行くならおれ身体鍛え直さなきゃね」
そう言う彼はいつもスマートな体型で、腹筋だってうっすら割れているのを知っている。自分こそダイエットしたり、今から肌のケアをしないといけない。
それに柚宇ちゃんや今ちゃんに水着の相談をしなければ。彼をアッと言わせるようなセクシーなやつ。
「私も頑張る」
「うん、楽しみにしてる。今度こそ防衛任務入れないように二宮さんにお願いしなきゃね」
「私も隊長に今から言っとく」
楽しい予定が未来にあると、今日も明日もなんだか楽しい。
彼が喜んでくれたのを見て安心する。
そして、プレゼントはもう一つあった。
「犬飼君これ…」
さっきからずっと後ろ手に隠していたもう一つの物をそっと出す。
男の人に花束って変かなとも思ったけど、どうしても今日これをあげたかった。
「これ……おれに?」
犬飼君は手渡された花をみて少し驚いたようだ。
まさか自分が花をもらうとは考えていなかったに違いない。
少しサプライズが成功したかなとうれしくなる。
「5月1日は鈴蘭を贈られた人も贈った人も幸せになれるんだって」
花屋のお姉さんから教えてもらったことをゆっくり説明する。
「この1年いろいろあったと思うけど、その分幸せがたくさん来るようにって思って」
仲間の失踪、隊の降格、大規模侵攻。そして遠征選抜。
「いつもそばにいてくれてありがとう。つらい時も悲しい時もそばにいてくれてありがとう」
「……こちらこそ」
笑顔が似合う人だからいつも笑って過ごしてほしい。
「澄晴君お誕生日おめでとう。今年の1年素敵なことがたくさん起こりますように」
「ありがとう」
鈴蘭を両手に持ちながらそういった彼の笑顔が忘れられなくなりそうだった。


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