外務・営業部長補佐!
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「響子〜!またダメだった!もう一生独身だわ!!」


婚活パーティに参加すること4回目。マッチング叶わず。今回も収穫なし。職場が同じ友人の沢村響子につい泣き言を漏らしてしまった。

私はボーダー本部の外務・営業部に所属する一般職員である。響子や東隊の東春秋と同期入隊で、現役の頃は射手として活動していたが、年齢も20歳を過ぎてトリオン器官の成長も見込めないことから、少し前に戦闘職を辞めた。そのままボーダーも辞めようかと思っていたが、同期の響子が戦闘職を辞めて忍田本部長補佐になると聞いて自分もそのまま残る事にした。そして配属された部署が唐沢さん率いる外務・営業部だった。

私の主な業務は唐沢さんの補佐だ。
一人でバリバリと仕事をこなす唐沢さんの書類業務のフォローをしたり、営業に同行したり、遠方の場合は宿泊先などを確保したりする。秘書のような、雑用係のような、何でも屋のような存在である。
唐沢さんは上司としても素晴らしく、パワハラとは無縁だし、いつも遠方へ営業に行くとお土産を買ってきてくれる。一緒に外回りに行く時にはお昼を奢ってくれることもあり、円滑に仕事ができていると思っている。この間買ってきてくれたロールケーキはすごく美味しかった。
職場環境は非常に良い。このまま定年まで勤めても良いと思っているくらいだ。


しかし問題が一つあった。私に彼氏がここ数年おらず、独り身と言うことだ。
25歳の今、中学や高校の友人からの結婚報告は増えるばかりで、それに危機感を覚え、婚活サイトに登録してみたものの、結果は芳しくない。
両親から「良い人いないの?」とついに聞かれてしまった。大学生の頃からボーダーに所属して働く一人娘を心配したのだろう。「そのうち紹介するよ」と濁して答えたが、紹介する人などいない。今から作らねばならぬのだ。

同い年の響子は、上司である忍田本部長に片思い中だ。かなり長い期間拗らせているが、私よりはよっぽどマシである。私が前に人を好きになったのいつだっただろうか。

「だってアンタ本気で結婚相手探して無いでしょ?」
響子に言われてしまった。

「いまさら一から相手を知って、付き合っていくのがもうハードル高い。どうやって人好きになるんだっけな〜前に付き合ったのって高校の時だからもうすぐ10年……ひぃ、怖!」

漠然と結婚したいとは思うけど、どんな人が良いかと言われたら答えに困る。

「唐沢さんは?」
「いや〜あの人は上司としては完璧だけど、恋愛対象ではないね」

響子には悪いが、8歳も年上は自分には対象外だ。イケメンで仕事もできて、優良物件であることは間違いないが、職場ではそういうのは考えたくない。本当に今の職場環境はいいのだ、壊したくもない。

「じゃあ東君は?」
「東ねぇ……」


思い浮かぶのは最近の東だ。狙撃手として衰えを知らぬ彼は次々に弟子をとっては立派に成長させている。
今は小荒井君と奥寺君。この間ランク戦を見た時に2人はしっかり成長していた。
同期としてすごいと思うし、尊敬もしている。東塾はすごい。

「う〜〜ん」
ただ同期ということもあって一緒にいる時間が長すぎた。
「そんな目で見れない…!」
というか、ボーダー内で結婚相手を見つける気はないのだ。恋人は外で見つけたい。外で仕事の疲れを癒してくれるような人。
「やっぱり、ボーダーとは関係ない人がいいかな」
「そう?ボーダーに理解ある人ってなかなかいないわよ?」

響子の言うとおりだ。ボーダーという特殊な職場で働いていることを言うと、婚活パーティでも露骨に避けられた。
自分の婚活が失敗に終わっているのはやはりボーダーに勤めていることが大きい気がする。

「やっぱり、ボーダー辞めるしかないのかなぁ」 
自分の仕事には誇りを持っている。人を守れる唯一無二の仕事だ。できることなら続けていきたい。戦闘職を離れてだいぶ経つが、可愛い後輩もたくさんいる。響子との飲み会は結論が出ないままいつもお酒だけが進むのだ。




「お疲れ様です」
「あ、二宮君お疲れ様」
翌日本部基地で急ぎの書類を作り、経理に持っていった帰りに二宮隊の二宮君に話しかけられた。
「相変わらず忙しそうですね」
「そんなことないよ、二宮君こそボーダーと大学の両立で大変でしょう」
二宮君は自分が射手時代の頃に可愛がっていた後輩の一人だ。二宮君は元東隊と言うこともあり、昔から食事に行ったり個人ランク戦をしたりしていた。
気難しい子だけど、それなりに慕ってくれていると思う。こうやって見かけると必ず挨拶してくれる礼儀正しい後輩だ。

「あ、お疲れ様で〜す」
「おっ……おつか……さ…です」
二宮君の後ろから犬飼君と辻君も声をかけてくれた。
「犬飼君も辻君もお疲れ様」
オペの氷見ちゃんがいないところをみると防衛任務の帰りなんだろう。今から作戦室に戻るところなのか。
スーツ姿の男性3人が揃うと少し圧迫感がある。二宮君から自分の隊を作ると聞いたときはまさか隊服がスーツだとは思わなかった。今より少し幼い顔でスーツに身を包んだ3人を思い出し、入隊の時からみんな知っているけど、大きくなったなと思う。

「そうだ、母田さん、彼氏募集中ってほんとですか?」
犬飼君に言われた言葉に驚く。
「え、なんで知ってんの?」
「噂で聞きました」
にっこり笑って言うが、きっと噂の出所は言わないだろう。犬飼君はそういうところが抜け目ない。この子は相変わらず何を考えているんだか。
「まぁ、恋人って言うか結婚相手を探してるかな」
隠しても仕方ないので正直に話す。
「え!そうなんですか!結婚相手か〜」
「なんでそう驚くの?私もう25だよ。結婚も考えるよ」
戦闘職の子たちは若い子ばかりだ。高校生や中学生がほとんどである。そんな子たちと話していると自分もまだ若いはずなのに、歳をとってしまったような感覚になる。話についていくのもしんどい時がある。
「年下、対象外ですか?」
「まぁ、そうだね」
犬飼君に聞かれて答える。できれば上下3歳差くらいまでにしておきたい。そうなると隊員はほぼ対象外だ。
「え〜残念。ね、二宮さん」
「なんで俺に振るんだ」
二宮君が不機嫌そうに答える。
こうやって気安い会話ができているのは隊員同士仲がいい証拠ではあるのだろう。
「いい人いたら紹介してね」
冗談交じりにそう話してそろそろ自分のデスクに戻ろうとこの場を去ろうとする。
あまり勤務中に雑談をしているのもよくない。雑談程度で唐沢さんは何か言うわけではないが、社会人としてオンオフははっきりしないといけない。
それに辻君がさっきから顔が真っ赤で挙動不審だ。見ていて可哀想になったので、早く何とかしてあげたかった。

「またごはん連れて行ってくださいね」
犬飼君にそう言われる。これは奢らされるやつだ。
「はいはい、また今度ね」
ひらひらと手を振って足を進める。
たしかに最近二宮隊のみんなとはご飯も行っていなかった。良い機会かもしれない。


「結婚相手…見つかるといいですね」

二宮君に後ろからそう声を掛けられた。思わず足を止めて二宮君の顔を見るといつもの自信家な表情だった。
ランク戦で1対1勝負になった時に力でゴリ押しするときのような、余裕そうな表情。
俺に勝てるものなら勝ってみろと言わんばかりの表情。
まるで私に結婚相手なんて見つかるわけがないとでも言うような。

「そうだね…」
気難しい子だから私の言葉の何がその表情にさせたのかはわからないけど、売られた喧嘩は買う。
私だって元戦闘職なのだ。負けるのは大嫌いだ。

「結婚相手、出来たら紹介するから」

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