外務・営業部長補佐!C
年度末はどの部署も忙しい。外務・営業部も例外ではなく全員が忙しく動き回っていた。部長補佐の私も唐沢さんについてスポンサーや取引先に挨拶周りをしたり、報告書をあげたりして土日関係なく仕事をしていた。休日出勤のオンパレード。前に休みを取ったのはいつだったか。当然婚活をする余裕もなく一か月ほど働きづめだった。もちろん忙しい中でも服装には気を使っていたし、お化粧も前よりずっと上手にできるようになった気がする。唐沢さんに「最近なんだか雰囲気変わったかい?」と言われてしまった。外でお昼ご飯を食べている最中だったので、会話が弾んだ。唐沢さんは私が婚活をしていることは知っているのでいろいろと相談に乗ってもらった。唐沢さんも独身だが、私と違ってモテるが結婚に興味がない独身なので、いろいろと参考にさせてもらう。
「沢村と相談して男性受けを狙った服装にしてみたんですが、どうですか?」
「前と雰囲気は変わったけど、私はどちらも似合っていていいと思うよ」
「唐沢さんから見てそう思うのならうれしいです!婚活はさっぱりですけど!」
唐沢さんは褒めるのも下心もなくさっぱりとした言い方なので安心できる。
「最近忙しくて十分な休みもあげれなくて申し訳ないね。落ち着いたら代休と有給消化に長期休暇でも取るといい」
「ありがとうございます!」
先に嬉しいことがあると頑張れる。長期休暇で旅行でも行こうか。きっと友達はみんな休みはそんなに取れないから、一人でどこか温泉旅館でのんびりするのもいいかもしれない。
「やはり親御さんが結婚について心配されているのかい?」
「まぁそんな感じです。昔は戦闘職だったのでなおさら心配だったみたいです。今は一般事務職なんであまり言われないですけど、結婚して仕事辞めて家庭に入れって。いまどき流行んないですよね。いつの時代だって感じ」
大学生の時に急にボーダーに入隊したので、一人暮らしをしている部屋に両親が乗り込んで来た事があった。あの時は東に色々お世話になった。
「親御さんの気持ちもわからなくもないが、もし結婚して仕事を辞めてしまったら私は残念だな。優秀な部下が抜けるのはキツい」
「……ありがとうございます!私辞める気ありませんから!」
この間出水君にあれこれ言われた時は寿退社してやる!と思ったが、やはり結婚してもボーダーには居たい。お世辞でも唐沢さんにそう言われて嬉しかった。
「やっぱりボーダーに所属しているってわかると相手が引いちゃうんですよ。どうしたらいいと思います?ウソつくのもだめだし」
思い切って婚活の失敗を相談してみる。唐沢さんなら良い案を出してくれるかもしれない。
「……外の人間より内の人間の方がいいんじゃないか?その方が仕事の理解もあるだろう」
「唐沢さんもそう言いますか……」
他の人と同じ意見を言われてがっくりくる。内の人間というと他部署と合コンでもやったらいいのか。技術職の寺島君か、冬島さん辺りにお願いしてみたら良いかもしれない。戦闘職は若い子が多いけど、一般職なら同い年くらいの人は案外多い。
「唐沢さん、誰かいい人いませんか?紹介してください〜」
最近こればっかり言ってる気がする。ただ、唐沢さんは人を見る目があると思う。唐沢さんがお勧めする人なら間違いないはずだ。
「私がそんなことすれば怒る者もいるだろう」
「そうですか?そんな人います?」
思い当たる人は全く居ない。
「気づいていないだけで、ボーダー内で結構慕われているんだよ」
「うーん、ご飯は沢山奢ってるんで、財布と思ってるやつですかね」
笑いながら、唐沢さんに奢ってもらったサバ味噌定食を口に運んだ。
連日の疲れが顔に出ているのを化粧でしっかり隠した翌朝。本部基地に出勤したところですぐに声をかけられた。
「あ、はよっす」
「水上君おはよう今から防衛任務?」
「そうすね。月曜朝イチは勘弁してほしいわ」
基地に入ったところで生駒隊の水上君に会った。日中の防衛任務だと学校を休まなくてはならないので、学生は大変だ
「あと少しで高校も卒業だね。水上君は進学するんだよね」
「そーすね。三門市立大です」
「大学でも両立大変だと思うけど、頑張ってね。相談は乗るから」
大学だと単位の問題も出てくる。今の学生たちは太刀川の大変さを見ているのでわかっているだろうし、あそこまでポンコツではないから大丈夫だろうが。
「じゃあ、今度飯おごってくださいよ」
「え?」
まさかの言葉に驚く。おごってくれと直接言えることが関西人らしいというか、彼らしいというかなんというか。ここにもいたか、私を財布だと思っているやつ。
「水上君、相変わらずだね」
「何がですか?今度暇なときいつですか?」
まさかの社交辞令ではなく、本当に行く気らしい。そして私におごらせる気満々らしい。
「え、えっと待って予定確認するから」
営業用の手帳を出してスケジュールを確認する。プライベートの予定も書いてあるのでざっと見る。
「今いろいろ予定詰まってて、平日がいいよね…?うーん」
「予定って、婚活ですか?」
「……」
水上君も知っていることに少し戸惑う。本当に噂って恐ろしい。
「婚活今はしてないよ」
忙しくて行けていないのだ。一時休戦中。その間にダイエットもして自分磨きをすることにしている。ダイエットというか、ごはんを食べる暇がないだけだけど。
「は?やっぱり最近変わったのって彼氏できたんすか」
「え?」
「みんな言うてますよ、最近ますます美人なったって」
「……!!水上君がお世辞を……?ご飯寿寿苑にする……?みんないいかな?」
たとえご飯に連れて行ってもらうためのお世辞だとしても、うれしくて課金待ったなしだ。成長期の若者にお肉をお腹いっぱい食べさせてあげよう。そうしよう。ますます美人になっただなんて水上君に言われるとは。最近頑張ってよかった。
「お世辞やなくて…ちょ、は?みんなって?」
「え、生駒隊のみんなだよ」
それ以外に誰がいる?まさか同級生みんなを連れて行くつもり?それは財布が厳しい。
「……なるほどなるほど」
「え?違うの?あと彼氏いないよ。今、彼氏を作る暇もなく仕事忙しいし、婚活再開したら欲しいんだけど」
誤解は早めに解いておこう。どこに将来の結婚相手が転がっているかわからない。彼氏がいると誤解されてチャンスをふいにするつもりはない。
「……紛らわし!もうええわ!」
水上君はそう言うと怒って歩いて行ってしまった。何が紛らわしいんだ。
「え、ちょっと待って!ご飯は?いいの?」
「彼氏がおらんくてさみしいやろうから、しゃーなし行ってやりますわ!」
水上君の捨て台詞が最悪だった。さっきまでの機嫌の良さが一気に悪くなった。
「酒飲んで絡んでやるからな……!大人なめんなよ!!」
奢ってやるんだからそれくらい許されるだろう。
novel top/
top