外務・営業部長補佐!B
「わ!これ可愛い」
今日は久々に響子とお休みが重なって街へ買い物に出掛けていた。5度目の婚活パーティ失敗に伴い、響子に再び泣きついたところ、見た目から変えようということになった。響子に「その色気のない恰好をどうにかすれば?」と言われたのだ。確かにいつも基地内で仕事をするときはトリオン体なのでみんなと同じ制服で、外に営業に回るときは私服のパンツスーツだ。化粧も薄めだし、アクセサリーも何もつけていない。
まずは婚活成功のために仕事の時から意識を変えることにした。最初に仕事で使えるような綺麗目な服を数点購入した。足は出せるときに出していきなさいと言われて思い切ってスカートも買った。フレアスカートは自信がないので、制服と同じタイトスカートにした。合わせて婚活パーティに着ていくちょっと華やかな服も購入した。女性らしさが引き立つワンピースやブラウス、スカートも購入した。買い物をしてだんだんと楽しくなってくるのがわかった。お金の事は気にせずに買い漁った。多分私も響子もちょっと気がおかしくなっていたかもしれない。響子はずっと「忍田本部長が好きそうなもの……」とぶつぶつ言いながら選んでいた。ちょっと怖かった。次に百貨店に行き、化粧品をラインでそろえた。店員さんにメイクをしてもらって、良いと思った物を大人買いだ。何年ボーダーに勤めていると思っている。金ならあるんだ。金なら。店員さんがしてくれたようなメイクを普段でもできるように家に帰ったら練習しなければ。響子に頼んで化粧をしてもらっている間、動画も撮ってもらったのでそれをみて練習することにする。
最後に自分へのご褒美として、滅多に買うことはないハイブランドのジュエリーショップに来ていた。「良い女は良い物を身につけるべき」と響子に言われて、たしかにアクセサリーの一つでも身につけた方が華やかで婚活パーティーもいいんじゃないかと思った。それに職場にもつけて行きたい。日常使いしやすいのはネックレスかなと思い、ネックレスを数点試してみる。ここのブランドの一番有名なデザインのものがやはり可愛くて気に入ってしまった。「四葉のクローバーを連想させる幸運のモチーフですよ」と店員さんに言われてしまえば、ますます婚活成功を願って身につけたいと思ってしまった。色は黒か、白か、赤か。迷ってアクセントにもなる赤を選んだ。
「うん、アンタに良く似合ってるんじゃない?買っちゃえば?」
「買いたい〜けど値段が可愛くない〜」
チラッと置かれている値札を見たら即決できる値段ではなかった。
「どうせ仕事ばっかりで使う時ないんだから身につけるものくらい良いものにしなさいよ」
「うっ、確かに……」
響子の言うとおり、自分はほとんど趣味もないのでお金は溜まっていく一方だ。それにジュエリーなんて滅多に買わないし、つけないので、一ついいものを持っておきたい。最近頑張っているご褒美に、なんて自分に甘いかな。
「それに最近残業代がっつりもらってんでしょ?」
「買います……」
響子にバッサリ言われて、ニコニコ笑う店員さんにそう声をかけた。
給料一か月分。効果を期待する!ちなみに先月の残業代だけで買えた!どんだけ残業しているんだ私。
翌日早速買ったネックレスをつけて出勤した。なんか気持ちも晴れやかで仕事を頑張れそうな気がした。
いい調子で仕事が片付き、久しぶりにゆっくりお昼御飯が食べられそうだった。
いつもならデスクでパンとかをかじりながら仕事をするのだが、今日は食堂に行く余裕があった。
お昼間の食堂ならだれか知り合いがいるだろうと思い、一人で行く。
とりあえずメニューを注文して、受け取り、席を探していると声を掛けられた。
「お久しぶりです」
「あ、蔵内君久しぶり」
王子隊の蔵内君。進学校である六頴館の生徒会長をやっていた優秀な子だ。そして蔵内君は後輩の中でも特にきれいで完璧な敬語を使う子だった。いつも私の事を先輩として扱ってくれる数少ない後輩。貴重である。
「おひとりですか?」
「うん、仕事が一息ついたからたまには食堂でと思って」
食堂のチャーハンが時々無性に恋しくなる。そういえば、最近望ちゃんのチャーハン食べてないな。時間に余裕が出来たら作戦室に遊びに行こう。
「良ければ一緒に食べませんか?」
蔵内君にうれしいお誘いをしてもらった。
「すごくうれしいけど、いいの?」
「はい、王子も一緒ですけど」
「王子君ね……」
その名前を聞いて少し戸惑う。彼は今は落ち着いたとはいえ、私を先輩と思っていないタイプだ。しかし誘ってもらっといて断るのもあれなので、そのまま蔵内君についていく。王子君が席を確保していたんだろう。丸テーブルに王子君が座っていた。
「王子お待たせ」
「遅かったね……お久しぶりです」
王子君は最初に蔵内君を見て、隣にいた私に気づいたようだった。にこやかに挨拶をされる。昔はいろいろ荒れていたが、王子君も落ち着いたなぁとしみじみ思う。イケメンだし、性格も穏やかな今はきっと高校でもモテるのだろう。ボーダーの後輩はイケメンが多い気がする。歳が離れすぎててみんな弟のようなものだけど。
「王子君久しぶり。蔵内君に誘われてね。ご一緒してもいい?」
「もちろんです」
王子君は隣の席の椅子をさっと引いてくれた。紳士的だ。
「ありがとう」
促されるままに座る。
「一人だっていうから、誘ったんだ」
「それはナイスだね」
蔵内君の言葉に王子君が返す。二人は旧弓場隊の頃からずっと一緒で、王子君が自分の隊を作ると言った時も蔵内君は一緒に王子君といることを選んだ。それほど二人は仲がいい。仲がいいというか、気心が知れている感じだ。
「最近ランク戦観戦されていませんよね、仕事忙しかったんですか?」
「うん。どうしても年度末になると忙しくなってくるんだよ。まだまだこれからだけど」
「大変ですね。体には十分気を付けてくださいよ」
蔵内君のやさしさが身に沁みた。こんな心配をしてくれる子他にはいない。
「王子隊ランク戦上位キープしているみたいだね、見れないのが残念だよ」
ランク戦の結果だけは速報をチェックして確認している。1位2位は不動だが、それ以下は結構動きがある。王子隊は前シーズンも上位で、今回も上位入りしそうだ。
「ありがとうございます。今日はこの後次のランク戦の作戦会議をする予定なんです」
「王子君はいつもしっかり作戦立てるタイプだもんね。……次あれか、玉狛か!」
今シーズンから新しく玉狛支部所属の部隊がB級ランク戦に参加していると聞いた。上位に食い込む勢いで活躍していて興味があった。一度はランク戦室で観戦したいところだ。
「玉狛第二のメンバーあったことあります?」
「ないない、機会がないもん」
玉狛支部に行く機会もないし。うちの部長は玉狛第二の隊長を買っているようだが。以前記者会見の場に連れて行ったと聞いた。
「次の僕達の試合見に来てくださいよ」
「う〜ん仕事落ち着いてたら見に行きたい!ほんと気になるよ」
王子君に誘われて社交辞令ではなく、うなずく。元射手としては、やはり射手の事が気になる。蔵内君は性格通り、きれいで正確な弾道を引くし、合成弾だって器用に作る。王子隊の機動力のある攻撃手二人を上手くサポートできるのは蔵内君くらいだろう。王子君の考えをさっと理解できて、動ける人はなかなかいない。玉狛第二の隊長も射手だと聞いた。どんな戦い方をするのか見てみたい。
「彼氏が出来て僕たちの事はどうでもいいのかと思ってましたよ」
「こら王子」
「え?」
王子君の言葉に驚く。彼氏って言った?
「彼氏……?どこでその話を?」
また婚活がどうたらとかいう噂なんだろうか。
「内緒」
王子君にはぐらかされる。
「そのネックレスだって、彼氏にもらったんじゃないですか?」
王子君に言われて、自分がつけているネックレスに手をやる。どんな誤解だ。
「んな訳ないでしょ、ちゃんと自分の労働による対価で購入したものです。それに彼氏はいません!」
変に見栄を張らずに話す。社会人たるもの。これくらい買う財力はあるのだ。
「……なんだ」
「こら王子」
蔵内君がまた王子君をたしなめる。王子君よ、なんだとはなんだ。こっちだって傷つくぞ。結婚に焦ってる女性に対してそんな態度でいいと思っているのか。まぁ、言うほど焦ってはないけど。
「いいよいいよ、どうせ王子君も彼氏できるわけないって思ってるタイプでしょ?」
実を言うと自分でも彼氏がいる姿が想像できない。
「そんなことないですよ、きっとすぐにいい人が現れますよ、結婚相手探してるんですよね?」
蔵内君にまで婚活がばれてた。どれだけ私の噂がボーダー内で広がっているんだ。恐ろしい。
「まあね。結果はさっぱりだけど」
「ふっ…」
王子君についに笑われた。笑うことないじゃないか、失礼な。やっぱり性格が落ち着いたと思ったけど、根本は変わってなかった。
「貴女みたいな人、普通の男じゃ無理ですよ周り良く見ないと」
普通の男じゃ無理ってどういうことだ。私がゴリラ女とでも思っているのか。王子君無礼すぎる。もういい。やけくそだ。最近恒例になっているセリフを話す。
「周りねぇ……王子君、蔵内君いい人いない?23〜28まで」
「……」
王子君が黙ってしまった。ひょっとして周りに対象者いないか考えてくれてるのか。んな訳ないな、不機嫌そうだし。
「選り好みしている場合ですか?そんなんだから彼氏もできないんですよ」
「こら、王子お前さっきから失礼だぞ」
蔵内君が王子君を止めようとするが、王子君にさらにあおられて、私は流石に喧嘩を買うことにした。私だって元戦闘職。負けるのは大嫌いなのだ。
「じゃあ、18歳以上なら誰でもいいわよ!いい人いたら紹介して!」
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