「……最悪なんだけど」
「ごっごめんなさいいいいいい」
たまたま根付メディア対策室長に見つかり、嵐山隊のグッズの整理を頼まれてしまった。
段ボールいっぱいのグッズを両手に抱えて基地内の廊下を歩いているときだった。
曲がり角で誰かにぶつかってしまい、その拍子に足を滑らせて転ぶ。
持っていた段ボールはひっくり返り、物が散乱する中、自分は誰かを押し倒していた。
何か口に柔らかいものが当たった気がするが、目をつぶっていたからわからない。
「トリオン体だったからよかったものの、気を付けてよね」
そういわれて目をやると、風間隊の菊地原君が眼前にいた。超至近距離である。
「菊地原くんんんんんん!?!?!?」
「菊地原だけど、重たいからどいてくれる?」
「ごっごめんなさいいいいいい」
菊地原君は露骨に嫌な顔をしてきたので、あわてて起き上がる。
「ごめん、怪我してない?」
「だからトリオン体だから大丈夫だってば……そっちは?」
「うん、私は大丈夫、ってえええええええええ」
菊地原君のおかげで痛いところはどこもなかったからありがとうとお礼を言おうとして気づく。
転んで菊地原君の上に乗った拍子についてしまったんだろう、菊地原君のほっぺにうっすら自分の口紅がついていた。
ということはさっき感じた柔らかいものは、菊池君のほっぺたということで。
「さっきからうるさい、どうしたの?」
菊地原君は気づいていないようで、言うべきか迷うがそのままの方がまずい。
「あの…それがですね…菊地原君のほっぺに私の口紅の痕が…」
「……最悪なんだけど」
「ごっごめんなさいいいいいい」
泣きそうになりながらポケットからハンカチを出してこすって取ろうとするが、なかなか取れない。
「ごめんね、ハンカチ濡らしてくる。待ってて!」
それだけ言って、走り出すのである。
「菊地原どうした?」
「もう最悪…荷物も散らばったままだし」
「今の子、例の子か。お前避けれただろ。誰か来ることなんて音聞いたら一発だし。まさかわざと……」
「歌川うるさい!」