真夜中の告白


いつもなら布団に入って5分もしないうちに夢の中の私が今日はなかなか寝付けなかった。


特に風も強くなく、雨も降っておらず、なんなら穏やかな天候だ。
きっと本部基地の屋上から綺麗な星空が見えるはず。
そんな夜に何故か心がざわついていた。
理由は自分でもわかっているような、わかっていないような。
最近ある人の事を考えてばかりなのだ。

布団の中で何度も寝返りをうつけど、眠れそうになくて、目がどんどん冴えてくる。
こう言う日は何をしたってダメだ。
諦めて携帯を手に取った。
好きな人に告白をしよう。
唐突だが、今決めた。


私はいつも直感で行動する。
好きな人には「ありえん」って笑われてばかりだけど、頭で考えるのが苦手なのだ。
勝算がなくても、やると決めたらやるのだ。
素早く指を動かして、メールを打つ。
相手は普段ならもう寝ている時間のはずだ。
起きていたとしても防衛任務のはず。
明日の朝までに返信が来なかったら告白は諦めよう。
自分が強気なのか弱気なのかよくわからないけど、勢いのまま相手にメールを送って、携帯を机に置いて、私は着替え始めた。


この告白の行方を天に任せることにした。
どんどん大きくなっている気持ちをどうにかしたかったのだ。







誰もいない本部基地の屋上で、手すりにもたれてぼーっと風にあたる。
風が少し生ぬるい。
何も持たずに来たので、相手にメールを送ってからどれだけ時間が経ったのかもわからない。 
もう日付は変わってしまっただろうか。


「こんな時間にこんな場所に呼び出してお前は正気か?」

不意に後ろから声をかけられてドキリとする。
どうせ相手は来る訳がないと決めつけていた。
けど、相手は来てしまった。
これは何%の確率だったんだろうか。
多分低いはずだ。
それを私は当ててしまった。
だから、私は覚悟を決めて言うしかない。


「水上…私…」

「普段は早よ寝るし、携帯も見ーひんし。けど、今日はたまたま見てたんや。お前の勝ちちゃう?」

「え?」

私の告白を遮って水上が話し始めた。
肩透かしを食らった気分だ。
頭のいい男の話している内容はいつだって分かり辛い。
ペースが乱される。
私はさっさと告白したいのに。



「好きなんやろ?俺のこと。両思いやで、おめでとさん」
そういう水上は相変わらず気だるそうな表情だったけど、私には誰よりもかっこよく見えた。



「しかし、こんな真夜中に一人で出歩くとかお前はアホなんちゃう?」


好きな相手に言う言葉では到底無い気がするけど。