烏野高校排球部

季節は巡り、春。
私たちは一つ学年が上がり、兄は最後の高校生活が始まる。私はバレーを辞めて2年目の春を迎えた。授業が終わる頃、一年生の階は部活への勧誘をする為上級生が集まっているようで去年の自分を思い出す。


「わっ、」
「あ、ゴメンなさい!!」


ジャージ姿のオレンジ色の頭が走り去る。あの子は確か雪ヶ丘の主将だ。そう云えば、龍が言っていた気がする。『今年は全国に行く』と。今年の烏野はちょっと楽しみかも。


体育館の方へ向かう背後を眺めていると、シックな色のパスケースが落ちているのを見つけた。"影山飛雄"という見知った名前で、笑いが込み上げる。兄妹で、ふざけて話していた事が現実になったようだ。


「飛雄ちゃんも烏野にね」


本当に今年の男子バレー部は楽しみだ。ああ、早くお兄と徹に報告したい。どんな反応するんだろうか。そんな事を考えながら、男子バレー部が練習している第二体育館の扉を開ける。すると、何故か飛雄とあの子がコートの中にいて、上げ損ねたボールが教頭の頭に直撃しカツラが飛んだ。


「!!!?!」
「…アレ、ヅラだったのか!」
「気付くの遅えよ!みんな入学式で気付いてたぞ」
「ブォッフ!お前らっ!」
「田中も黙れ!」


教頭と恐らく主将である先輩が体育館から出てくるから、少し離れると、説教では無いが延々とバレー部に対して文句を言っている。…どうしよう。完全に入るタイミング逃してしまった。


「あれ?春川?」
「あ、縁下」
「何やってんの、そんな所で」
「んー?新入生のコレ拾って届けに来たんだけど、中に入る空気じゃ無くてさ」
「中?」


同じクラスの縁下と一緒に体育館を覗くと今度は先輩の雷が2人に落ちていて、思わず苦笑する。ああいう温厚な人ほど怒ると怖いんだよね。可哀想に。


「俺が渡しとこうか?」
「んーん、大丈夫。知り合いだし、久しぶりに話したいし」
「……締め出されたな、あの2人。どっちも知り合い?」
「大きい方がね、中学の後輩」
「へえ、影山がね…って、え!?春川、北川第一だったの?!」
「ん?あー、うん。そう」


あまり表情を変えない縁下の目が見開く。そんなに驚くことなのだろうか。影山の所に行ってくる、と告げもう一つの入り口に向かうと2人の言い合いが聞こえてきた。


「お前はできる限り、全力で俺の足を引っ張らない努力をしろ」
「ハァァァ!?そんなこと言われて、ハイ努力します!なんて言うやつ居ねえんだよ!!」
「じゃあ、どうすんだ。ずっとそっから眺めてるつもりか」
「飛雄、アンタがそのままなら何も変わらないんじゃない?」
「春川さ、ん!?」
「はい、コレ。落ちてた」
「…アザッス」
「あ!さっきの!」
「どーも」
「さっきの、どういう意味ですか」
「先輩も言ってたでしょ?今はネットのこっち側同士だって。アンタが去年のままなら、上には行けない」
「!」
「本当は自分でも気付いてるんじゃないの?今のままじゃダメだって」


あの試合のあの出来事で気付いた筈だ。今のままでは、自分自身が変わらなくちゃ、コートに立つ事すら出来ないということを。