預かり知らぬところで噂されてた話
未登録の特級呪霊と五条悟の戦闘。結果は五条悟の勝利ではあったが呪霊には逃げられた。先輩と戦っていた火山頭の呪霊。そいつの頭部を掻っ攫って離脱をした植物系の呪霊。1日で特級呪霊に会いすぎ案件。
「すいません五条先輩。逃走スピード速すぎて結界間に合わなかった」
「良いよ、ドンマイ」
上から五条先輩の隣に降り立つ。五条先輩が戦闘中俺がいたのは湖の上空だ。はたから見れば空に人が浮かんでいるように見えただろうが、種明かしをすれば空中に結界を作って足場にしていただけだ。
先ほど言った「間に合わなかった」というのは、植物の呪霊が逃げ切る前に広めの結界を張る事で逃走ルートを塞ぐ事だ。逃走する呪霊のみを結界で閉じ込める事もよくあるが、足が速いと判断して大掛かりな結界張ったがあと一歩の所ですり抜けられてしまった。
ちなみに先輩が戦闘中は通常の帳のように戦闘区画の周囲を結界で囲っていた。勿論自分は結界の外にいた。理由は言わずもがな両面宿儺とその生得領域のせい。
囲った結界の機能としては、帳のように周囲への影響を抑えるためではなく、俺の結界術向上のための領域展開の解析が主だ。
結界術の頂点に君臨する領域展開。そもそもできる人が少ないため解析機会も少ない。身近にいる領域展開使用可能者である五条先輩のも過去見せてもらった事があるが、特別すぎてもはや俺には理解が及ばない。
と言うかそもそも領域展開内の出来事は、周りを俺の結界で囲ったところでただでは感知できない。内部を確認したければ自分も領域内に入るのが手っ取り早いが、そこまで俺は生き急いでいないので、機会があれば外から地道に無理矢理解析するのが常である。
とはいえ領域展開が行使される場面というのはいつだって短期戦になる。個人差は大きいが、領域展開をした時点でほぼ勝ち確の場合や、使用する呪力量が多いため最後の賭けで展開する場合が多いからだ。限られた時間内で解析を完了できた事は今まで一度もない。
「そういえば雨流さあ、最後結界作るの一瞬躊躇しなかった?」
今後の悠仁育成計画と交流会についてを本人に説明したあと、五条先輩がこちらを振り返って聞いてきた。
「……しました」
「全く、雨流もまだまだだなぁ」
だって仕方ないじゃん!? さっきまで何が逆鱗に触れるか分からない両面宿儺とお話ししてたんですよ!? 疲れててもしょうがなくない!?
と叫べるわけもなく「すみません」としか言えない。NOと言える人間になりたい。
◆ ◆ ◆
「成長したんだねぇ、宮古場雨流」
帰路の中そう呟くのは袈裟姿の男。誰に言うでもなく、思わず口に出した様子である。
「しかし、場合によっては五条悟の次に厄介か……」
今後の計画で用いる多くの特別な帳。それらにいち早く対応できる人員として最有力候補だったのは宮古場雨流だ。今日の様子を見て、思っていた以上に対策が必要かもしれないと考え改める。
さてどうしたものかと悩む素振りを見せるが、時折溢れる笑みが楽しんでいる事を証明していた。