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「これ」
と、たった二文字の言葉と共に差し出されたのは、シンプルな手のひらサイズの箱だった。千空からの誕生日プレゼントは、毎年度肝を抜かすようなぶっ飛んだもので(良い意味でも悪い意味でも)、16になる今年はどんな科学グッズが貰えるのかなとむしろ楽しみにしていたところだった。
最初、中に入っているのは本気で珍しい石か何かだと思った。だって鉱石を入れるのになかなか丁度いい大きさだし、千空は近くの河原で綺麗な石を見つけるのが得意だったから。
今年はなんだか洒落てるじゃーん、外箱までこだわって。一体どこでどんなお宝を見つけてきたのかな?そう思いながらその場であっさり箱を開けると、私は中身を見た途端すぐに思考を停止させた。
ゆびわ。
その箱に収められていたのは、銀色の煌びやかな指輪だった。
「なにこれ」
「チタン」
「なにそれ」
「金属な。原子番号22の。ロケット作りの材料で集めてたやつだ。そいつが都合よ〜く余ったんで、暇を持て余してその形に加工した」
てづくり。
「これ、手持ちで作ったにしてはまともじゃねえか?そりゃあブランドもんにはさすがに適わねえが、百均とかで普通に売ってそうだろ」
「た、たしかに。うん、たしかに」
「まあ実際の価値はそんなもんじゃねえけどな。サイズはどうだ?ちょっと付けてみろよ。チタンは金属アレルギーが起こりにくいから安心していい」
「へえ、そうなんだ」
「結婚指輪の素材としても王道だし」
え?
「問題は・・・そもそもテメーの趣味に合うかどうかだな」
「えっと」
「派手なのが好みなんて話は今まで一度も聞いたことねえから、シンプルなやつを目指したつもりなんだが」
「あの」
「あ"〜、もしいらなかったら今スグ返してくれていいぞ。一応希少金属なもんで、手に入れるのにも苦労すんだよ」
「ねえ、千空」
「溶かして次のロケットの素材に_」
千空が当たり前のように説明を続けるので、私は彼の白衣の裾を思いっきり引っ張った。
「千空、一旦ストップ」
「どうした」
「今、なんて言ったの?」
「今?」
「言ったじゃん、たった今。それもう一回言ってみて」
「・・・まず、今って言葉の定義を教えてくれよ。どの『今』の発言だ?候補があり過ぎて、どれを答えたらいいか分からねえ」
「あーはい。そういうのいらないです」
千空は、面白がるように口角を上げていた。この人、絶対に私が何を聞きたいのか分かっているやつだ。私はそれに対抗して、あたかもそこまで興味がないような素振りで返事をした。内心では動揺しまくっているのを隠すように。
「質問を変えます。千空、この指輪はなんですか?具体的にどうぞ」
「たしかにそうだな。渡す・・・だけじゃ足りねえよな、普通に」
千空は納得したように頷いて、言った。
「ナマエ、俺と結婚してくれ」
予想していたよりも100億倍くらい直球だった。