THE STONE WORLD


約束は守ります





結論から言うと、私たちは結婚を決めた。・・・いや、正しくは何千年経った今でもまだ婚約の段階である。


高校生になり一度目の誕生日、とりとめのない朝の通学路。私はたった今渡されたばかりの指輪の箱を丁重に扱いながら、彼の隣を歩いていた。

「千空・・・いきなり何言ってんの?」
「俺と結婚してくれ」
「ちがっ・・・繰り返さないで!それは分かったから!!繰り返さないで恥ずかしい!」

いつもと全く変わらない態度で、とんでもないことを抜かす千空。朝から物凄いことが起こっている。あのう、これ絶対にさ、登校中にする話じゃないよね。たしかに彼は、毎年このタイミングで誕生日プレゼントを渡してくれていたが。

「じゃあ一体何が聞きたいんだよ」
「何がって、だから・・・その、突然過ぎると思うの。朝から突然こんなこと・・・夢にも思わなかったもん」
「悪かったな。配慮が足りなくて」

別に、そういうことを言わせたい訳じゃないんだけど。でも千空も一応は気にしてくれているようで、ほんの少し申し訳なさそうに弁解を始めた。弁解というか言い訳に近いかもしれない。

「本当はもっと早く渡すつもりだった。それ、とっくの昔に用意できてたからな」
「へえ、とっくの昔に・・・」
「だがさすがに結婚出来る年齢にならねえと話しても意味ねえし。まあでも、高校入ればもう良いだろと思って今日にした。それにテメー、特別な日に特別なことされると喜ぶタチだろ」
「もちろん嬉しいけど・・・。千空、いつからそんなこと企んでたの?」
「小1くらい」
「それは嘘」
「嘘じゃねえよ」

小1?って、まだ6歳だよね?そんなの、いくらなんでも早すぎやしないだろうか。でも、千空はわざわざこういう時に嘘はつかないから・・・。
へえ、本当にそんな前から。まったくもって信じられない。本当に信じられない。いや、ほんっとうに信じられない。
私がいつまで経っても腑に落ちない顔で首を傾げ続けるので、千空は何を思ったのか眉間にシワを寄せてツンとし始めた。

「いらねえなら返せ」

せっかく渡したばかりの箱を、取り返すべくこちらに手を伸ばしてくる。それを見て、私はとっさに箱を死守した。あ、つい体が動いた。

「なんだよ、隠すなよ」
「私、まだいらないなんて言ってない」
「それは、なんだ。・・・イエスってことでいいのか?」

私の反応が意外だったのか、そんなことを尋ねてくる。しかし私は返事をせずに、こんなことを提案した。

「・・・千空、今日私の家に来れる?時間があったらでいいんだけど」
「家?」
「ちがう!やましいことは何も考えてないから!」
「なんも言ってねえ」

私の天然ボケを軽くあしらう千空。それを気にすることなく、じっと彼の瞳を見つめる私。千空は私の表情から何かを汲み取ってくれたようで、すぐに頷いてくれた。

「分かった。放課後すぐ、テメーの教室に迎えに行くから準備しとけ」
「え?科学部は?」
「今そんなこと言ってる場合か。色々と込み入った話するんだろ」
「まあ、うん。込み入った話する」
「ぶっちゃけ俺は、今すぐにでも答えを聞きたいところだが・・・言うタイミングを決めるのはそっちだからな」

千空は少し前を向きながら、顔だけこちらを振り返る。

「別に今日じゃなくてもいい。受けるか受けないか、せいぜい死ぬ時までには教えてくれ。俺はそれまで気長に待ってるわ」
「ええ?千空そんなこと言って。絶対死ぬまで待てないやつじゃん」
「否定はしないが論点そこじゃねえ。ただ、これだけは頭に入れとけよ?俺は本気でナマエと結婚してえと思っ」
「あぁあぁあぁ恥ずかしいってば!」

千空の発言に私が大袈裟に声を出すと、なんなんだよさっきから・・・と言うような目で見られた。



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