THE STONE WORLD


05

※ボクっこちゃんの愛称や性癖など勝手に妄想。センシティブ注意。隊長とバカみたいな下の話をします。

+++




報告。ナマエの熱はすぐに下がった。感染症も何一つ発病することはなかったし、数週間もすれば左腕の傷はほとんど目立たなくなった。
人様にたくさん心配かけたくせに、何もなかったみたいに元気になったあいつを見ていると、あの夜、隊長とあれだけ派手にやり合ったのは何だったんだと思う。
酷く混乱していたとはいえ、全てはあいつを思っての発言で・・・隊長にはボロくそ丸め込まれた上に、後日全快したナマエと一緒にこってり絞られたけど。あそこまで上官に口答えしたのは初めてだったかもしれない。ある意味快挙だ。

あいつと出会って2年と経っていないが、それでも元来の友人みたいに仲良くさせてもらっている。だから熱にもすぐに気がついた。隊長とケンカした、と涙ながらに相談され爆笑した翌日だったから、まさかナイフで脅されるほど重大な事件になるとは予想してなかった。可愛い彼女の頼みだから話の流れで了承したが・・・その後オオカミに咬まれたと聞いた時には、そりゃあもう死ぬほど後悔した。
やっちまったと思った。あの可愛いバカ野郎は「熱なんてすぐに治る」と豪語しておきながら、簡単なミスに気づかないほど追い込まれていたのだ。幸いナマエ周辺の捜索を命じられたから、状況の把握は早かった。銃の細工は独断だ。とにかく庇いたい一心だった。
・・・ま、当然のように隊長にはバレバレ。

「あぁ、さっみ・・・」

事件のあと、彼女が最初に目覚めるまでの二日間はまさに地獄のようだった。スタンリー隊長の機嫌が最っ高に悪かったからだ。史上最恐だった・・・。
彼女の面倒を見ていた人間以外は、隊長を含めほとんどいつも通りの仕事をこなしていたが・・・後から聞いた話じゃ、隊長はマジで全く寝ていなかったらしい。
いや不安な時こそ寝ろよ。ボクも寝れなかったけどそりゃ。でもマジで勘弁してくれと思った。彼女のことを思ってそんな無茶をするんだから、まあ可愛いんだけどさ。隊長、可愛いよホント。


12月30日
ナマエの事件から一週間後。

「鍵、開いてんよ。入りな」

しっかり病原菌対策をしてから医務室を訪れたら、そこには当然のように我らがスタンリー隊長が居座っていた。
ノックの返事が彼の声だったから別に驚きはしなかったが・・・いざこうして中に入ってみると、うん、やっぱりビックリ。だって隊長、ベッドの中ですやすや眠っている彼女の寝顔を、これでもかってほど穏やかな表情で見つめちゃってるんだから。
以前は部下の前じゃこの顔を見せることは決してなかった。でも一週間前にあんなことがあったから、そういうのはもう気にならないらしい。この人ホントにボクらの隊長かよ。うわあ、写真撮りてぇ。

「・・・・・・」
「突っ立ってないで好きなとこ座りな」
「ぃ Yes,sir
「よせ。いいぜ別に、んな時までかしこまんねぇでも」

石化がなかったら一生知らない顔だった。ていうか、石化がなかったらナマエとも仲良くなれなかったし。この世界は不便だが、そういう意味では感謝してる。
それに、鬼上司にも弱点があるってことが分かってから、普段の威圧感溢れる表情も言葉も全て可愛く思えて仕方がない。部下には厳しく当たる彼も、ナマエには甘い言葉を投げかけてんだ。あぁクソ可愛い。こんなこと言ったら即効でシバかれるから、ナマエにしか言ってやらない。

「何しに来たんよ、シャーロット」
「何しにって・・・ナマエに会いにだよ」
「ふぅん」

それしかないだろ。心の中でツッコミながら、隊長に促された通り壁際の空いたイスに腰掛ける。ベッドの傍には彼が座っているから、自分はまあここでいい。・・・と、思っていたら。

「なんで隅に座ってんだ。お前、顔見に来たんじゃん?近いとこ座りな」
「いや、でも隊長いるし」
「俺がいてなんか問題あっかよ」
「・・・」

渋々イスごとベッドの近くに移動した。彼は窓側にいるので、扉側に。いや、よく考えたら気まずいな、これは。こんなことになんなら時間ズラせばよかった。・・・後悔してももう遅い。こうなったら彼の視線を気にした方が負けだ。ベッドに片肘をついて思いっきり彼女の寝顔を覗き見た。

Dr.ゼノが調合した薬のおかげで、ナマエの熱はとっくに下がっている。今は様子見がてら安静にしているところだ。左腕の怪我はまだ治っていないことだし。
にしてもスヤスヤ寝てやがる。こいつマジで可愛いんだよな。隊長ばっかズルいよ、朝から晩までこの顔を独り占めとか。いいなぁボクも抱いてやりたい。

「シャーロット」
「なっ、なんだよ」
「・・・なに驚いてんよ?」

いやらしいことを考えた瞬間に声をかけられたので、心臓が飛び上がった。疑うようにボクの顔を見つめてくる隊長。
よく見たら、隊長は火のついていない煙草を咥えていた。

「何考えてた?」
「別に・・・。隊長、煙草いいのかよ」
「はぐらかすな。つーか医務室で吸うバカがどこにいんだよ。・・・何考えてた?」

何度も聞くなよ、そんなに気になんの?ああそういえば、隊長ってめちゃくちゃしつこいんだよな。尋問とか好きだし。一度でも気になったことは、答えを聞くまで永遠に問い詰めてくる。
ボクは早々に諦めた。ナマエが起きていないことを確認してから口を開く。

「・・・ナマエが可愛いと思っただけ」
「お前分かってんじゃん。・・・で?オイ、それだけ?」
「・・・手ぇ縛って指入れて、ナカからボクのものにしたいって思っただけ」
「へぇ」

ボクの正直過ぎる返答に、隊長は心底愉しそうに舌を出した。

「度胸あんじゃん、やってみろよ」

死にたくないから絶対やんない。そもそもナマエって女もいけんの?そう思ったのが顔に出ていたのか、隊長は鼻で笑って別の方向を向いた。

「あー、なんでもいけんじゃねぇの。お前にもちったあ可能性あっかもね」
「隊長、いいのかよそんなこと言って。ボク本気出しちまうかもよ」
「だからやってみろっつってんだろ。ま、やるだけ無駄だ。安心しな。こいつ俺以外眼中にねぇから」

この人ホントにボクらの隊長なのか。一週間前までは、部下に対してこんなにバリバリ惚気けてくるような人じゃなかった。嘘じゃないよ、本当だよ信じてくれよ。

「でお前、なんでナマエ好きなんよ」
「か、可愛いからだよ」
「面食いか?」
「そうだよ悪いかよ。てか、ナマエは性格も可愛いよ。隊長よく分かってんだろ。でもやっぱり顔が好きだボクは」
「なァ、シャーロット。こいつが一番可愛い顔するタイミング、知ってっか?」

隊長は煙草でナマエの寝顔を示した。
なにこれ、惚気大会じゃん。そんな質問だいたい予想はつくけど。どうせ隊長に好き勝手ヤられてる時とかだろ。どうせそんなこと言うんだろうよ、なにしろボクがあんな話題出したばっかりなんだから。
じぃっと目を細めて答えを待っていると、隊長は自信満々に答えた。

「寝起きだ。寝起きの顔」
「・・・」
「んだその顔は。なに?もっと別んこと言うと思った?甘いねそりゃ」
「もしかして隊長・・・。暇見つけてはずっとここに居座ってるけど・・・ナマエが起きるの待ってんの?」
「それ以外何があんだよ」

看病とかだろ。・・・まあ、今はもうほとんど治ってるから、寝させるくらいしかやることはないけど。ボクら、何の話をしてるんだ。

それから暫くの間部屋は静寂に包まれる。くっそ、おいナマエさっさと起きてくれ!気まずいんだよ助けてよ!そうやって心の中で叫んでいたら、突然隊長が別の話題をぶっ込んで来やがった。

「お前、この前のアレ忘れてねぇよな」
「・・・」

隊長が何のことを言っているのかすぐに分かった。あの時のことだ。ナマエの事件の直後、ボクが隊長に刃向かった時のこと。やっぱりこうなるよな。あの時は煮え切らない感じで会話が終わっちまったから。
隊長は表情も口調も穏やかなままだ。でもどことなく問い詰められそうなオーラを感じた。慌てて弁解を始める。

「あ、あの時はナマエが重症って聞いてすぐだったからテンパって・・・」
「だろうな」
「・・・謝るよちゃんと。ナマエの熱を黙ってたことと、嘘をついたことと、銃をいじったことと、暴言を吐いたこと」
「ほとんどじゃん」
「けど、ボクはそれ以外の言葉を撤回する気はないよ。・・・正しいと思うから」

例えば、隊長がナマエのことを一番よく知ってるってこととか。
例えば、隊長と同じくらいボクがナマエを好きだってことも。
勢いで言ったことだがボクはちゃんと覚えていた。だっていつも思っていることだから。ボクはな、割とマジであいつのことが好きなんだ。隊長とかいう完璧人間が相手だとしても、ボクはナマエに対する愛を『なかったことに』なんてしない。

「そうかよ」

言いたいことが伝わったらしい。そしてそれを認めてもくれるらしい。隊長は背もたれに深く倒れ込んで、穏やかな表情で窓の外を眺めた。

「部下は反抗的なくらいが可愛いもんだ」

そうそう。そうだそうだ。
でも、上司は優しい人間に限るんだよな。



ナマエが起きた。

「・・・んぅ、・・・っううう・・・」

な、なんだその顔は、なんだその声は!?さっき隊長が言っていた通りだ。めちゃくちゃ可愛いじゃないか!
ナマエは寝たまま人目も気にせずあくびをして、右手で眠たそうに目をこする。隊長はすかさずその手首を掴んで、見せつけるように彼女の額にキスをした。そして、一度僕に目配せしてくる。こんにゃろ。

「ナマエ、シャーロットがお前んこと狙ってるらしいぜ」
「・・・え?・・・・・・ロッティ?」

弾かれたように立ち上がった。

「おいッ隊長!?そりゃないよ!何言ってんだいきなりさァ!」
「この前の報いだ。これでお前の愚行はなかったことにしてやる」
「あ、ああ?・・・・・・そういうことならいいけどさ」
「いいのかよ。ハッ、確かにお前、これまでも全然隠してなかったな」

寝起き直後のナマエは何がなんだか分かっていない様子で、ボクらのやり取りを聞き流しながらもう一度布団の中に潜り込んだ。二度寝するつもりらしい。
しかし、隊長は遠慮なく顔の部分だけ布団をめくった。・・・彼が何を考えているのか分かってしまう。嫌そうに眉をひそめる彼女の顔は最っ高に可愛かった。

「起きな、ナマエ。昨日からずっと飯食ってねぇだろ」

隊長が頬を摘んだり、頭を撫でたりして起こそうとするのを、ナマエは力のない動きで抵抗している。見せつけんなって!
すぐにナマエが負けた。彼女はめちゃくちゃ不機嫌そうに起き上がって隊長のことを睨みつけるが、その顔も例外なく可愛いので彼にはなんの効果もなかった。隊長はむしろもっとイジメてやろうかなという顔をしていた。クソ。

「スタンにロッティ、おはよう」
「ナマエ、さっきの話聞いてたか?」
「うーん、うん、あれね。うん」

聞いてないなこれ。まあバレてもバレなくてもどっちでもいいんだけど。しかし隊長は懲りずに再度同じことを言う。マジで何がしたいんだろう。

「シャーロットがお前んこと好きってさ」
「ほんと?私も好き」
「ナマエ、マジの方だからボクのは」
「え?そっか、そうなんだ」

もうこうなったらバラしちまえと思ったので、自分から打ち明けた。なんだよ、隊長の思うつぼじゃんこれ。

「ロッティが私のこと好きって思ってくれてたのは知ってる。でも、ちゃんと分かってなかったな・・・」
「んで、お前ってなんでもイケんの?ってことを聞きてぇようだぜ」

隊長はぶっ込み過ぎなんだよ。寝起きってこと分かってんのかな。が、そんな心配は要らなかったようで、ナマエは嬉しそうに微笑みながら答えてくれた。

「きちんと私を愛してくれるんだったら、誰だって受け入れるよ?わたし」
「おいナマエ!そこは俺以外ヤダって言うとこじゃん!」
「隊長ざまぁ」
「シャーロットお前さっきの撤回。なかったことになんてしてやんねぇ!フルマラ何周分か今から覚悟しとけよ」
「マジかよ!ナマエ!ふざけんな!」

抗議の声を上げながら、ボクはすぐにさっきのナマエの発言を思い出した。

「ってか、何。ナマエ、ボクが誘ったら寝てくれんの?愛なら負けないよ」
「言うじゃん」
「んー。どうだろ。どうかな?」
「悩んでんじゃねぇ、断れ!すぐに」
「ロッティ、スタンより気持ちよくしてくれるの?」

ナマエはそのぷるぷるな唇に人差し指を当てて、上目遣いでボクを見上げてくる。その口は弧を描いていた。
うわっクソ!こいつわざとやってやがる。あざてぇ・・・犯してぇ・・・。

「んん、なんとも言えないよ。ナマエが気持ちよさを求めんだったら・・・」
「求めちゃうかも」
「だったら、最後まではさすがに・・・自然体じゃあな。文明が滅びなきゃオモチャ使うのに」
「前戯で勝負しろよ、シャーロット」
「言われなくても!てか隊長!そんなこと言っときながら、隊長には元から立派なもんがついてんじゃん!」

思わず突っかかったら、隊長は超がつくほどの笑顔になってボクを見下してきた。そのまま可哀想なものを見るかのように目を細める。口角は上げたまま。やだよ、隊長って本当に煽るの得意だよ。

「ねえロッティ。ゼノに頼んでみたら?案外ノリ気になって作ってくれるかも」
「ハハッ!マジで言ってんの?そりゃ作ってくれんなら欲しいけど。ナマエが相手になってくれんなら」
「やめとけやめとけ。アイツのことだからどうせすぐ却下だ。目に見えてんよ」
「愉快な話をしているな。君たちは」

扉から声がした。びくったわ、さすがに。いつの間にかそこにいたゼノは、単に物を取りに来たらしく、それを回収するなり素早く出ていってしまった。最後にこんな言葉を残して。

「少なくとも以前と大差ない生活が送れるようになってからだ、玩具の類いは。そもそもゴムが無いうちは遠慮してくれ」

彼は正論過ぎた。・・・なんとも言えない空気になってしまったな。そんな中、ナマエが気にせず「へへへ」と微笑むのを見て和むばかりだった。

ナマエは思い出したように口を開いた。

「ロッティ、この間はごめんなさい。ちゃんと謝ってなかったね。脅したりなんかしてごめんなさい」

なんだ、突然何を言うのかと思ったらそのことか。別に気にしてないのに。しかし彼女があまりにしおらしい顔をするので、ボクはわざと真顔で返事をした。

「いや、いいんだよ。むしろゾクゾクしたからもっとやれって思ったね」

ナマエはそれにめちゃくちゃ驚いて、数秒間固まった。いや、そこは笑うところだろうよ。すると、前触れもなく突然ポロポロ涙を流し始める。

「ロッティは、優しいね」

今度はボクが固まる番だった。こっこいつマジで気にしてたんだ。ボクに刃物を向けたこと。
ナマエは泣き止むどころか声を上げて大泣きし始めた。焦ってチラリと隊長を見ると「お前がなんとかしろ」という目で睨まれる。やっべえ。

「ナマエ!茶化して悪かったよ、ボクは本当に気にしてなんかないから!な?ほら、泣くなよ」
「ご、めんね、ロッティ・・・っごめんね」
「いいからもう!早く泣き止んでよ!お前が泣き止んでくれないとボクが隊長にぶっ殺されんだよ!」

そして数日後、ボクは死ぬまでコーン畑を走らされた。ナマエも一緒だったから楽しかったけどね。
以上、これで報告終わり。



05
backnext
[ toplist ]