お題▷▶夢主ちゃんのを採取する話。
ある意味閲覧注意。小スカ→意味が分からない方は閲覧非推奨。性描写なし。
+++
「……」
「……」
膠着状態。
「絶対に必要なの?」
「ああ。断言する」
「……私じゃなきゃだめなの」
「テメーじゃなきゃだめだ」
「……どうにか避ける方法ないの」
「ねぇな」
「……」
まるで重大な作戦会議をする時のように、真剣な顔で腕を組んでいる千空。呼び出される時もこんな感じだったから、私はいったいどんな重大任務を課されることになるのかドキドキで仕方なかったんだけど。
「テメーにしか頼めないことだ、これは」
……あのね、千空。ドキドキのベクトルが違う。そっちの方面だとは思わなかった。考えたことある?いや、ない。この科学王国のリーダー石神千空(一応彼氏)が、いきなり、その、だから、私のそ、それを欲しい!っていきなり!龍水くんみたいなことを言い出すなんて。
いや龍水くんならこんなことは絶対に言わない。女の子の尊厳を守る男だ、彼は。そりゃもちろん千空が頼むくらいだから、私にできないことではない。でもこんなの……とても大樹くんやクロムくんみたいに元気いっぱいに「やってやるぜ!」と意気込めるような頼みごとではない。
アンモニア採取。……本当に言ってんの?
「なんでわたしなの」
「ナマエのが欲しいからだ」
「……」
「……」
「千空のヘキなんじゃん」
「ちげぇよ、れっきとした科学の話だ」
ウソじゃん絶対。アンモニア?アンモナイトにしといてよ。何言ってんの私。
軽い病気でも即ゲームオーバーなこの世界、千空はことあるごとに私たちの体調を気遣って声をかけてくれているけど、今日はやけに水を寄越してくるなあと思っていた。たしかに水って健康のために必須だし、ダイエットする時なんかも水をたくさん飲むといいみたいな話も聞いたことがある。
「ナマエ、そろそろ休憩だ。オラ、水分補給忘れんなよ」
今日の千空は優しいなあ、と思いながら渡された水を頂戴していたわたしだったが、まさかまさかこんな頼み事をするためだったなんて思いもしなかった。
……嘘、千空なら有り得る。千空は突飛な発言をするのが得意なのだ。そして実際に今突飛なことを頼まれている。
「どうしても嫌か?」
「……デス」
二人きりのラボ。本来は好きな人とお話ができてドキドキ!科学王国のリーダー直々の任務でドキドキ!ってなるハズなのに。
「分かった。確かにフェアじゃねぇな、一方的にお願いを聞いてもらうっつーのは」
「アンフェアだからどうとか、そういう問題でもないんですけど……」
腕をさすってみたり、背を丸めて地面を見たりしながら、なんとか反論の機会を伺ってみる。ダメ、千空を論破できる人なんてこの世に存在しない。可能性があるとしたら、かつての千空の師匠であるゼノ先生くらいだ。彼もいうて千空側の人間だけど。
「ナマエ、こうだ。俺の頼み聞いてもらう代わりになんか好きなこと言え。一個なんでも聞いてやる」
「……それってゲンさんをコーラで釣った時みたいな?」
「あぁ、これ作って欲しいでも、これやって欲しいでもなんでもいい。なんでも聞くから言ってみろ」
千空の真剣な顔はかっこよくて好き。だけど真剣な顔をする裏では、たいてい悪い顔の千空が隠れていると分かっているから微妙なのだ。色々説明を受けて、必要なことだというのは理解したけど。
千空は私じゃないとダメなんて言うけど!言うまでもなく私じゃなくてもいいハズだ、こんなの。それなのにわざわざ私に頼むということは……信頼されている、ということなのだろう。その点についてだけ言えば嬉しい。頼みごとの内容がこんなんじゃなきゃ、どんとこいなんだけどなぁ〜。
「その話する前にさ……」
「ん?」
「と、トイレ行きたいんですけど」
「それは都合がいいなァ!んじゃそのまま採取行くぞ!」
「絶対これ狙ってたでしょ!」
千空は準備万端とでも言うように、両手に必要な道具を持って立ち上がった。とても愉しそうな顔で。もう、科学に対する熱意が大き過ぎる。そこだけは本当に尊敬してる。だけどもっと龍水くんや右京さんみたいな誠実さを見習え!
+
「は、恥ずかしくて死にそう」
「俺にここ見せんのなんか初めてじゃねぇだろ。オラとっとと足開け」
「千空、デリカシーなさすぎ」
いつも私たちが砂鉄を集めている川の、いつもなら来ない下流の下流。おそらく千空なりに気を遣って人が来ないであろう場所を選択してくれたのだろう。それにしても……やることがやることだから、いくら場所を選んだとしても安心できるはずがない。
千空はラボから持ち寄った椅子に私を座らせると、自分はその正面にしゃがみ込んだ。蹲踞の姿勢。そして当たり前のようにビーカーを取り出すもんだから、ここに来てさらに戸惑いが増す。うわ、本当にやるんだ……。
「千空くん、もう一度言うね。デリカシーなさすぎ」
「んなもん初めっから持ち合わせる気はねぇなァ俺は」
「千空、その発言結構ヤバいよ?私が優しくて良かったね」
「おーおーおありがてぇ、ナマエと出会えてよかったよかった」
「別れようかな……」
「心の声漏れてんぞー」
これでも私は千空が私と付き合ってくれている事実に対して、とんでもない喜びを感じている。告白した時なんて玉砕覚悟だったし、頷いてくれたことが嬉し過ぎて二言目が「じゃあ実験手伝え」だったことなんてもうどうでもよかったもん。今でもそう。
あんまり自信ないけど、でも千空はちゃんと私のことを好きでいてくれていると思う。千空の家で調子に乗ってチューしてみたら、千空は拒絶するどころか同じように返してくれて、しかもその先まで進んじゃったし。
千空とそういうことになったのは、現役の高校生だった時に一回と……実はここ数ヶ月の間に三回。このペースは普通の恋人だったら少ないのかな……無知だからよく分からないけど、こんな世界だもん、頻繁にやるのは無理って話だ。むしろ科学脳の千空にしては多いと思う。
だから、そう、見せること自体は初めてじゃない。だけど、たいした回数を重ねているわけでもない。そもそも男の人にこんなところを見せるなんて、そんな恥ずかしいこといつまで経っても慣れる気がしない。せめて深夜だったら暗くて見えなかったのに。
「なんで明るい時にやるの……」
「夜じゃなんも見えねぇだろうが」
「見えなくていい!」
「よかねー」
ていうか私、まだちゃんと頷いてないのに。本当にやらなきゃダメなの?今回は見せるだけじゃなくて、つまりその、だ、出さなきゃいけないんでしょ……?
無理無理無理リームーリームー。そうやっていつまでも首を振り続けていると、千空の手が服の裾からするりと入り込んできた。思わず体を向きを変えて抗議する。
「うぇ、ま、待ってよ!」
「なんだよ、覚悟つかねぇか?」
「つくわけないじゃん……」
今からやろうとしている行為が女の子にとってどれだけのはずかしめだと思ってるの!このバカ千空!ノーデリカシーノーライフ!本人としては科学をやっているだけなんだから真剣なつもりなんだろうけど、もっと私の心を気遣って欲しい。
デリカシー、コンビニかどこかで売ってないだろうか。今度の誕プレそれにしようかな。なんてバカなことを考えていると、千空は太ももに片手を置いて下から私を見上げた。
「ナマエ、頼む」
誠実な顔をすればなんでも解決すると思っている。あざとい男だ……正直に言って、私はこの顔に弱い。だって、だって、カッコイイんだもん……面食いなのでこうなるのは仕方がない。
恥ずかしい話、もう限界だった。何がって?聞かないでそんなこと。察して。とにかく下腹部が限界だった私は、それ以上千空に反論している余裕がなかった。
「うう……」
決めた。千空にするお願い、百個に増やしてもらおう。それで無理難題をたくさん突きつけてやる。既に泣きそうになりながら意を決して下着に手をかけた。
片手で顔を隠しながらもう片方の手で少しずつズラしていくと、千空はすぐに気がついて「助かる」と呟いた。本当に助かると思ってそうな顔をしているから憎めない。でも口からはポンポン文句が飛び出てきた。
「もうやだ、千空のばか、ばか」
「ナマエ、もっと前座れ」
「うるさいばか」
うるさいと言いながらも素直に言うことを聞く私。椅子のギリギリに座り直して、色気のへったくれもない雰囲気の中で下着を下ろして完全に取り払ってしまった。そのまま地面に落としたら汚くなってしまうので、大切に腕に抱えて千空を見やる。
そろそろ本当にやばい。あそこにぎゅうと力を入れて太ももを擦り合わせたら、千空の手が膝に触れただけで体がブルブル震えて身をよじった。
「ぁ、う」
すぐ終わる、すぐ終わるから大丈夫。千空が遠慮がちにワンピースの裾をたくしあげるのを合図に、つま先を左右に広げる。膝はピッタリくっつけたまま。
「ね、ねぇ見ないでよ」
「見ねぇとキャッチ出来ねぇだろうが」
「きゃっちとか言わないで!!」
「あぁ?何言ってんだ」
「だ、だって……」
普段は隠れっぱなしの下腹部に直接空気が触れて、ますます緊張感が高まる中、ふくらはぎの間からビーカーが差し込まれた。急かすような行動にむかむかするが、それ以上にもう限界。
「ほら、すぐ済む」という千空の声に震えながら頷いて、おそるおそる足を開いたらそれだけで勝手に出てきてしまった。
「っ、……ぅ」
容れ物に液体がぶつかる音がする。やだ、もう死にたくなってきた。なんの罰ゲームなのこれ……。あれ?ていうか、私なんで千空本人に受け止めてもらってるんだろう……だってほら……こんなの、私が一人でやればよくない?検尿でやってたみたいにさ……さっそくそのことに気づいてしまい、死ぬほど羞恥の念が募る。
ビーカーに私のそれが溜まっていくはしたない音を聞いていられないし、飛び散るのが嫌だから意識的にあそこに力を入れて出てくる量を調整した。この行為が既にもう恥ずかしくて全身に熱がこもってしまう。
目を泳がせて服を握り締めながら、死ぬほど恥ずかしい空気に耐えた。臭いを嗅がないように口呼吸で。たぶん今の私、顔真っ赤だ。千空はどんな気持ちで私にこんなことをさせてるんだろう。や、やっぱり千空のヘキなの?そうじゃないと自分から進んでこんなことしないよね?つ、付き合ってるからこんなことしてるんだよね?いや付き合ってるからってこんなことするか?混乱しながらも、今まで我慢していた反動がきたのかだんだんスッキリしかけている自分に意味もなくむかむかする。
「ナマエ、一旦ストップ。ビーカー変える」
「えっ」
急にそんな声が聞こえてきて、強制的に止めさせられた。びっくりして出口を閉じたはいいが、準備をしていなかったから性急な動作に色々と追い付かず、強烈にもどかしい気分に襲われる。
その間に千空は別の空いた容器を取りに行ってしまった。何かの反動で転がってしまったらしい。なんでこんな時に……!ほんの少しの距離だったけど、彼が戻ってくるまでの時間は私が耐えきるには少し長かった。
早くして、と必死に急かす。それに応えて千空がさっきと同じように正面にしゃがんで容れ物を構える直前、何かが決壊するような感覚に襲われた。
「だっだめ!もうがまんできない……っ」
「オイ待て待て待て、……あ、あ〜」
気づいた時には遅かった。下腹部の開放感と一緒に湧き上がってくるとてつもない気分の悪さ。しばらく何も考えられなくなった。ただ一つ分かるのが、今の状況がとても最悪だということ。
おそらく反射的に手を差し出してしまったためか、ビーカーから外れて千空の手に、私のそれが、思いっきりかかってしまった。自分で信じられなくて下を見れないけど、たぶんそういうことなんだと思う。千空の反応からその事実に気づいてしまった途端、ぽろぽろと勝手に涙が零れてきた。
「ひっ、うう、ごめんなさっ」
「あ゛ーいい、気にすんな。あと泣くな泣くな。クソ、この手じゃさすがに顔は触れねぇな」
「も、やだ……っ、死にたい」
「死ぬな死ぬな」
信じらんない。もう死にたい。
千空は川で手を洗うとすぐに戻ってきた。濡れたままの手でぐいぐいと私の手を引いて、そのまま川の中に引きずり込んでいく。ちょうど太ももまで浸かれる岩場の上に乗ったところで、私は中腰になって一生懸命下半身を洗い流した。
服の裾が濡れてしまったが、そんなことは少しも気にならない。だって顔が涙でいっぱい濡れている。千空はそんな私の頬を両手で包んで親指で涙を拭った。冷たい水が顔にもこびり付く。手が濡れてるんじゃ意味の無い行動だ。
「悪かったな、付き合わせて」
「もうやだ、千空好きじゃないっ……」
「悪かったって」
そのまましばらく泣いた。一生泣き続けていれば千空の心の中を罪悪感でいっぱいにできると思って。さすがの千空でも女の子の涙には弱いでしょう?こうなるって分かっていたのに私に頼んだ千空、挑戦しすぎ。そしてこうなるって分かっていたのに引き受けた私、優しすぎ。
とりあえず背中をさすって落ち着かせようとする千空をポカポカ殴りながらバカバカバカと暴言を吐きまくっていたら、千空は冷静な声で言った。
「……俺が言い出したことだ、今日のことは忘れてくれていい。でもこれでまた作業が進められんだ。だから助かった」
本当に助かったと思ってそうな顔をしているからむかむかする。何も言わないでいると、同じ声色でその辺片してくる、と言い残して私を川に置き去りにしようとする千空。
たぶん彼なりの気遣い。たしかに落ち着く時間が必要だ。千空は少し乱れていた私の服を軽く正すと、川岸に向かって歩いて自身の片足を引き上げた。
「せ、千空」
その姿を見て、つい呼び止めた。
「なんだ?」
「つ、次は千空の恥ずかしいとこ見せて」
「ア゛!?」
千空は猛スピードで振り返った。ん?どうした私。千空に引けを取らないくらい恥ずかしいことを言ってしまった。でもさっきの出来事以上に恥ずかしく思うことなんてこの世に無いもん、思っていることを続けて言った。
「だ、だって私の恥ずかしいとこ見たんだから、千空のも見せてもらわないと……」
「……色々とツッコミてぇが……ツッコミようがねぇな」
いつものように耳をいじりながら、しばらく沈黙する千空。
「あ゛ー、じゃ今夜俺んとこ来い」
「えっ」
「なに驚いんでんだよ」
「な、何する気……?」
「それは後のお楽しみってやつだ」
え……何する気?
不安になりながら私も川を出て身体中の水気を払う。千空に向こう向いて!と指示を出して、椅子の上に置いていた下着に片方ずつずつ足を通した。
「……」
静かになった途端さっきの発言がかなり変態的だったということを自覚してしまって、言い訳じゃないけどこんなことを付け足してみる。
「ちなみに千空、今のは……お願いじゃないから。その、慰謝料だから。千空のお詫びの気持ちでやってもらうことだから」
「あ?……あ〜、まあそういうことにしといてやる。で、お願いっつーのは?」
「お願い百億個に増やして」
ゼロの数を八つくらい追加した。このくらいないと納得できない。これが嫌なら示談金を寄越せ。小さな声で私の都合がいいように話を進めると、千空はこちらに背を向けながらくつくつと喉を鳴らした。
「わかった百億個な」
「えっ」
「あ?テメーさっきからなに驚いてんだよ」
「ひゃく億個だよ?い、いいの?」
「なんでも聞くっつったろ。それはそうと、百億個となると全部叶えるには一生かけねーとな。末永くよろしく頼むわ」
「……」
なにそれ。……なにそれ。
その後、私は一日中何もできる気がしなくて木陰に座りながら皆の作業をぼんやり眺めていた。千空が適当に説明してくれたので、私はずっと体調不良のフリを続けた。真っ先に心配してやってきてくれたスイカちゃんが可愛くて、もういっそこの子に乗り換えようかと思った。
「はぁ、千空ってほんとさ……はぁ」
「千空と何かあったんだよ?」
「うん……スイカちゃんは千空みたいなやつと付き合っちゃだめだよ」
「え?どうしてなんだよ?スイカもみんなも千空のことだ〜いすきなんだよ!でも、ナマエは違うんだよ……?」
「……」
答えに迷っていたら、とっても悲しそうな声で尋ねられた。
「ナマエは千空のこと、キライなんだよ?」
「…………す……」
「?」
「……好きなんだよぉ〜……」
なんで?私ってなんでこんなにバカなの……額が地面にめり込むくらい項垂れたら、スイカにまたまた心配されてしまった。たぶん私が何を言っているのかピンと来てないだろうけど、小さな手でよしよしと頭を撫でてくれる。本当に乗り換えようかな。
こんなことをされても嫌いになれない自分が憎たらしい。たぶん千空もそれを分かっているんじゃなかろうか。自分がやったことに対して珍しく申し訳ない顔をしていたが、どうせ初めから私が許してしまうと分かっていたから、無茶なお願いを構わずぶつけてきたのだ。百億個のお願いもすんなり受け入れてしまったし。もうやだ。私はたぶんこれからも千空のいいようにされるんだ。それでも好きなの……ほんとどうかしてる私。