THE STONE WORLD


06

「起きな、朝だぜ。プリンセス」
朝、私は約束通りスタンのキスで目が覚めた。普段は厳しいけれど、彼はここぞという時に私に優しくしてくれるの。そんな彼のこと、世界で一番だーいすき。私だけの王子さま。絶対に誰にもあげないんだから。



「治ったー!」
あれから二週間ほどが経過し、リハビリの甲斐もあって私の足の骨は完全に元通りになった。身体の傷もほとんど見えなくなったし、なにより自分の足で動き回れるのが最高!部屋の中をくるくる回って、全身で喜びを表現する私。
スタンは『なんだこいつ』という顔をして紅茶を淹れている。いいでしょ喜んでも。だってすっごく嬉しいんだから!私はタタタと駆け寄って横から彼に抱きついた。
「ねえスタン、私お出かけしたいな」
「ダメに決まってんじゃん。病み上がりナメてんの?」
やっぱりそう言うと思った!もう、スタンは心配性なんだから。私が抗議の目を向けると、彼は笑って続ける。
「って、言いてぇとこだが。ナマエ、喜べ朗報だ」
え、もしかして。その言葉で続きを察して「わお」と口を開けたら、スタンはそこにクッキーを突っ込んだ。
「ゼノに誘われた。明日はホテルのレストランでディナーだ」
「ほんほ(と)!?」
「出発は今日の夜。それまでに荷物の用意忘れんな」
やったやった!やっぱりスタンは、こういう時に私に優しくしてくれる。優しくて甘い、私だけの王子さま。
私は嬉しさのあまり、クッキーを噛み締めながら再び部屋の中をくるくるとまわり始めた。
「転ぶなよ。んで、また足折ったら笑いごとじゃねえからな」
スタンは二人分の紅茶をテーブルに並べると、新しい煙草に火をつけながらソファーに腰をおろした。そして体の向きを変えて肘かけに背をつけ、反対側の肘かけの上で足を組む。
私の部屋なのにこのくつろぎよう。まあいつものことだけれど。しょうがないので私は向かいのソファーに座って、淹れたての紅茶をいただく。
「でも、どうしてゼノが私を?」
「知らね。人数が多い方がいいらしい。その分俺の負担も増えやがるけど」
「そうかもね。だって、たとえば私がスタンの目を盗んで抜け出しちゃったら、スタン大変!」
冗談混じりに挑発したら、彼は口角をあげて親指で首を切る動作をする。
「お前次またそれやったらマジでぶっ殺すかんな。この前勝手に屋敷出たのも、俺はまだ許してねぇ」
「えへへ、本当ごめんなさい。大丈夫!ぜえったいに抜け出さないから!」
これはフラグである。
それはともかく、久々の外出がとっても嬉しい。たくさんお買い物して、それでディナーは美味しいものを食べて・・・。そうだ、とりあえずまずは着ていくお洋服を考えなきゃ。
そうと決まれば私はすぐに席を立ち、るんるん口ずさみながらクローゼットへ向かった。

あっという間に準備を終えて、あっという間に夜を迎えた。頭からつま先までばっちりおめかしした私を、スタンはいつものラフな黒衣裳でエスコートしてくれる。
「ゼノ」
「おお来たか」
リムジン車に乗り込むと、中ではゼノがなにやら忙しそうにパソコンを叩いていた。横に長い座席の上を移動し、彼の隣に座る。
「おまたせ!ゼノ、私のこと誘ってくれてありがとうね」
「いや。そうした方が都合がいいというだけの話だよ」
「どういう都合?」
「君が近くにいた方がスタンの気が散らなくて済むだろう?」
その言葉に彼を振り向くと、スタンはじいっとゼノのことを見つめる。
「理由それかよ」
「いるかいないかで、君の気持ちの入りようは大分違うと思うが?」
「そりゃそうだが」
認めちゃうんだ。でも嬉しい。スタンにもありがとうを言うと、我が物顔で唇を奪われた。



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