「ナマエ、明日はどこにも出んな。ディナーまでずっとこの部屋だ」
「ええ!お買い物できないの!?」
ホテルに着くなりわくわくしながら明日の計画を考えていたら、スタンはさらっととんでもないことを口にした。そんなのショックでしかない。私は思わずスタンのお腹を殴った。
めちゃくちゃ固くて痛かった。
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「なんで!どうして?」
「許してナマエ。仕事があんだ。日中外に出なきゃいけねぇの」
スタンは優しく言うが、私は完全にふてくされてぷくうと頬を膨らませる。それが彼の手によって潰されると、また膨らませて抗議を続ける。そんな攻防が朝まで続いた。
「ナマエ、プレゼント」
夜が明けてもふとんにくるまったままでいたら、上から聞こえてきた彼の声。気になって起き上がると、その手には可愛い装飾が施されたチョーカーがぶら下がっている。
「・・・なーに?そんなので私の機嫌とるつもりなの」
「何言ってんよ、とっておきはまだあるから。今はこれだけ」
「とっておき?」
「それはあとのお楽しみ」
スタンは言いながら額にキスをして、慣れたような手つきでその可愛いプレゼントを私の首に装着した。見た目より重かった。
「いい子にしてなよ、プリンセス」
「・・・分かった。早く帰ってきてね」
仕事なら仕方ない。嫌だけど!我慢して素直に頷く私に、スタンは柔らかい表情をして微笑んだ。今度は深いキスを交わして、ぎゅうっと私の体を抱きしめて、彼は部屋のドアを開ける。
「あんた、部屋から出せば・・・いいな」
入れ替わりに入ってきた彼の部下に脅しをいれて、そのまま行ってしまった。
スタンの部下、そしてボディーガードさんはベッドがある部屋と入口のドアの、ちょうど真ん中に立っていた。つまり考え無しに外に出ようとすれば一発でバレてしまう。
このホテルは初めて泊まるが、まあ大抵どこのスイートルームもこんな感じだろう。部屋に入ってきた時にだいたいの間取りは把握している。まあ、コソコソと脱出する必要なんてないのだ。堂々と正面から突破すれば。
私はカバンの中からあるものを取り出して、彼に近づいた。
「ね、ボディーガードさん」
「いかがなさいましたか」
「私、外に行きたいの」
「いけません」
背中で手を握って顔を傾けると、思った通りの返事が返ってくる。そりゃあそうだ。さっきスタンが彼に脅しをかけたばかりなのだから。
「たとえ何があってもお嬢様を外に出さないようにと仰せつかっております。ですので・・・」
「ほんの少しの時間だけ。ちょっと外に行って帰ってくるだけ。そういうことだから!」
彼の横を通り過ぎて、当たり前のように扉の方へ向かおうとすると、当然のように止められてしまった。
「お待ちください、外に出ては・・・!」
そうやって腕を掴まれたところを、くるんと振り返って彼の顔面に思いっきりスプレーを噴射する。へへーん。これなんだと思う?そう、催眠ガス!
即効性のあるそれであっという間に意識を飛ばした彼は、都合よく真後ろのソファーに腰掛けた。
次に、私は廊下へ繋がるドアを開けた。思った通りそこにもスタンの部下が配置されている。彼は私の顔を見るなり目を見開いて、大声を出した。
「お嬢様!?外へ出ては・・・」
「彼、寝ちゃったよ」
彼は部屋の中をチラリと覗き見て、ソファーで男が寝ていることに気づく。まさか私に眠らされたとは思いもしなかったのだろう。
「お前!何寝て・・・!」
部屋の中に入って彼を起こそうとしたところを、また噴射。これで眠った彼を部屋に運ぶ手間が省けた。さすがに私には鍛え抜かれた成人男性を運ぶ力なんてないからな。そのとき。
「お嬢様」
「わっ!いつのまに!」
外にもう一人隠れていたことに気づいていなかった。背後から近づいてきた彼にスプレーを奪われ、その屈強な肩に軽く担ぎあげられてしまう。そのまま部屋の奥に連行される私。
「大人しくしてくださいよ」
捕まっちゃった。それならこうしてやるもんね。私は腹筋を使って思いっきり両足を真上に振り上げると、その反動を利用して肩の上で海老反りに。そのまま器用に床に着地した。
靴のままテーブルに乗ると、驚いているところに飛びかかってラリアットをお見舞いしてやる。彼が床で怯んでいる隙に、奪い返した催眠ガスをその顔面に吹っかけた。
骨折が治ったばかりだけど、あんまりなまってなくて良かった。ボディーガードを三人も倒しちゃった。いえい!
「これでよし!行ってきます!」
ほら、私って生まれた時からほぼ監禁されているような悲しい生活を送っていたから、その反動で抜け出したくなる性格に育ったの。スタンに拐われてからはいくらかマシになったけれど。
それにしても・・・スタンが帰ってきた時に私がいないと分かったら、彼らはもうこの世にはいられないだろうな。脳天に穴を開けてお終いだ。
ごめんね。でも私、ちょっと外でお買い物がしたいだけなの!
だから、許してね。